第59話 倒れる

「はあああああああああああああああああああああああああいいいいいいい???」

 突然のお知らせで大変恐縮ですが、マオウが切れました。


「まあまあまあまあまあまあ、落ち着け。落ち着け落ち着け。ほーんとにっ。どーどーどー、僕も気持ちはわかるよ。ロリがお姉ちゃんとか、バブみとか、そんなことでつっこみたいのはわかる――ではなくてっ! この状況でお姉ちゃんとか、おかしくね? っていうか、あんたは昔の何か神秘とか、厳かな存在だろ! それがお姉ちゃんって、変だろ」

「建前と本音が逆すぎるにゃん。あと、全編言葉が色々とメタメタっぽくて、微妙。アニメとか、ラノベの見過ぎ?」


 マオウよ。行ってはいけないことを大量に言いすぎだ。泣いてもいいかな。


「お姉ちゃんはみんなを愛しているから。大丈夫、問題無いわ」

 ロリロリなハービィさんに言われる言葉ではないし、話が微妙にずれている。

 目がキラキラしていたり、どこか恍惚していて、危ない何かに見えているのもあり、非常におかしさが強調されてしまうのもいただけない。


「いや、皆さんドン引きですよ」

 工事のおっさん(餓鬼)が後ろに下がっている。ただ、プライドかなんだかで踏みとどまっている感じだ。


「ど、どうする。あの色物。ああっでも、何かすげえ感じだけは何かするな。何か」


「また、頭悪そうな感じの会話が余計に混乱させているみたい」

 マオウ、気持ちはわからんでないが、頑なになるぞ。こういう手合いは。


「お姉ちゃんは頭がいいのっ! みんなを育てるからッ!」

 いつの間にか、天秤を持っていたアリエスさんこと、自称おねえちゃんが叫んだ瞬間――天秤から電撃が飛び出る。


 ――ドドドッドドドッドドオンッ!


 マオウの横に放たれた電撃は彼女の後ろの木を2本ほど消し炭にした。


「あっぶねえええええええええええええええ。何アレ? 何アレ? 反則でしょ絶対に反則。無詠唱でなんかやるとか、チートやチート!」

 息を一瞬飲んで言った言葉がそれかい。

 ズレてますねえマオウさんの発言。


「はああっ、ハービィの女神の化身の劣化コピーといったところか。インフレが過ぎる。これ、積んでなくね?」

 壊れていたローズさんだが、状況が状況で元に戻っていた。

「あ、ローズさん、戻ったんですね。頼りになるぅ――やっぱり、これそういう類ですか。確か、ロマーヌさん絡みの女神とかその辺ですかね」

「辛辣すぎるのは泣きそうになるけど、大体はハービィの伝承からかな。名前はああ、お姉ちゃんとか頭悪いなあと思っていたけど、本当なんだね」

 聞きたくなかった。聞いたら頭おかしくなるわ。どうしようもないわ。


「どうでもいいけど、妹系ロリがお姉ちゃんと言っても無理がありすぎて、たまらんのですが」


「違うのっ。お姉ちゃんはお姉ちゃんッ!」

 お姉ちゃんが神速の雷撃を天秤から放つ。

 それは狙いを完全にマオウに捉え、て?

 

 スローモーション撮影したような感覚。ただし、五感の視覚だけしか反応できない。

 雷撃はマオウの腹を貫いて、


「え――? あ?」

 マオウは茫然としていた。口から血を吐いていた。






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