第57話 天秤の裁定
「まあまあ、落ち着きぃ。あんたら。天秤はよぉく見ておる。どちらが悪いかはわかるじゃろうて」
アリエスに見えるロマーヌさんは天秤をゆらゆらと掲げていた。
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
耳をつんさくような全員を囲む光の柱が覆われていく。僕の体がほとんど動けなくなっている。
他も同様で、顔全体だけは動かせそうだが、体が硬直したようだと思われる。なにせ、動きがほとんどない。
「天秤って、なくなったんじゃないの?」
マオウが驚きの表情を隠さず、つぶやく。
「ただの魔力が天秤を形作った。宝具でもなんでもない。アリエスという巫女の魔力でしかない」
「一応お土産の天秤じゃないだけ、安心かな。雅弥のアパートの天秤、割と雑な扱いだし」
そういや、うちのアパートにある天秤、何となくかっこいいオブジェにして、フィギュアのオプションになっているよね。うん、かっこいい。
「知っておるが、
ロマーヌさん、すごい暗そうな顔していますな。
精神力がクソザコメンタルすぎて、哀れだからね。アリエスさん。
あ、だからこの残念なハービィさんがこちらまでやってきているのね。魔力が高いから、こちらまでやってきて、色々とやっている。
「じゃないとアリエスなんて、口うるさいドジっ娘でしかないからな」
ローズさん、辛辣すぎなくね。アリエスが聞いたら、泣いちゃうよ。絶対。
「悪いが、その辺はノーコメント。じゃが、それなりにアリエスが悩んでこちらに来ていることだけは意識してほしい」
「わかってる。わかってる。だから、この状況に手助けをしてくれるんだろ」
ローズさんの言うことは確かなんだけど、全員がぴくりとも動けない時点でなんか違う感じがする。
「ただ、イラッとしただけじゃ。お前ら、みんな喧嘩っ早くてな。気絶したアリエスに代わって、やってきただけ――おまけで天秤を掲げて、公平かどうかを顕現させようとしているだけじゃが」
割と短気な理由ですね。
とはいえ、スマートではないのは確実。仕方ないかぁ。
年寄りの短気は嫌われると思うけど。
「何を思っているか大体わかる。お前の顔はすごくわかりやすい。天秤の結果が悪くなるぞ。年寄りの何とやらとか思っておらんか」
「何をおっしゃいますやら。そんなことは一切思っておりませぬぞ。いやほんとに。ハイ。滅相もない。とんでもないことですぞ」
冷や汗だらだら。顔がどうもひきつっている僕。やっちまったなあ。コレ。どうしようか。ついでに震え声。
「言葉がどう考えても逃げでしかないが、どうだ。天秤の傾きはどうなっておるか」
右が僕たち、左がマオウたち。ということで、傾きはあれ、左に少し傾いているとか、まじか。いややめてください。僕は悪いことを言っていませんよ。
「機構にも後ろ暗いところがあるといったところかのう?」
ロマーヌさんの言葉は重い。
ローズさんは言葉を紡ぐ・
「さて、どうでしょうね」
誤魔化す言葉。
「――私たちは
正義はどちらに。
――天秤が傾く。
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