第22話 サキュバス+男の娘+ASMR

 DTの滝というのは割と近くにあるらしい。歩いて行けるというわけではないが、今の僕には、何か飛べる力があるらしい。ASMR(夢の力)って素晴らしいね。

 でもさ、


「何というかさ、呪いってこんなに軽くていいのかって思うんだ。マオウ」

「サキュバス(男の娘)が何を言っているんだい」

 マオウ、まじであとでASMR(耳かきボイス)を撮って、MEETUBEに載せてやろうか。呪いはそれくらいご都合主義だから。


「何ぶつぶつ呟いているの。かわいいよ。きわどいレオタード。黒い翼を広げている姿は艶やか。なのに、ぺったんこになんか内股にしながら、見えそうで見えそうにないアレを隠そうと必死にして、羞恥にまみれた赤い顔。灰色の髪にボーイッシュなショートボブ。これはどSに目覚める何かだと思うのは、私だけかな」


 お前だけだよ。マオウ。

 赤井主任はものすごく気まずそうに僕から視線を逸らせるし、ほかのオーガさんも何かね、見ちゃいけないとばかりに僕に視線を向けないんだよ。なんでさ。


 あと、わしは用があるからって、ロマーヌさんはすたこらさっさとハービィの村に戻るといった時の顔だけど、笑いをこらえきれない顔。あれ、忘れるものかよ。


「私たちに任せるとかないよね。おかげで妖力とか私使いっぱなしでたまらんわ」

 ぴょんぴょん人間離れしたスピードで空想の忍者のごとく、飛び跳ねる猫耳少女。

 まさに猫又といったところだろうか。


 オーガの皆様も驚いていた。

 とはいえ、スピードだけで、攻撃力はないらしく、移動にしか使えないらしい。後は勢いに任せる上にそれなりに妖力を使うから、役立たずとは言えないが、汎用性はないとか。


「僕もこのサキュバス(男の娘)で空を飛ぶとか、まじで最悪なんだけど」

「おかげでポジションがずれたら、ボロンだから」

 何のポジションかはお察しです。禁則事項です。僕の尊厳がなくなる。


「いや、雅弥の尊厳って、割と低いよ。扱いは紙だったりするよ」

 なんて格差社会の悲しみ。嘆くことさえも許されないのか。


オーガの森を抜け、ハービィの崖を超える。そこをあっさりと抜けて、近くの街道を一気に横切り、次の山地へと差し掛かる。

 割とモンスターが強いらしいが、そんなのは関係ない。一気に抜けると、ワイバーンの群れ。


「よし、サキュバス(男の娘)よ。悩殺だッ」

「いやだあああああ」


 色々と違うよ。ワイバーンの性癖をゆがませるとか無理だよ。


「やれ。じゃないとどうせ森を進まなくちゃいけないんだから。連休終わっちゃうよ。来週もいかなくちゃいけないよ」

「ああくそっ、ヤケクソダッ。そおれっ♡」


 ASMR(かわいい男の娘へのボイチェン)でやっちゃえ。


「きゅるーん♡」


「ほんと、呪いってすごいわ」


 凄くない方がよかったよ。

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