第20話 なぜかいる上司の件について

「あがあっ」


 予想外の人物がいて、驚いていたものの、腰だめにしていた呪紋(風)をヤクザオーガのこめかみ近くにあてて、気絶させることに成功した。 

 ズンッと倒れたヤクザオーガは目を回して倒れた。

 こちらは落ち着くものの、違う異常事態が目の前で発生している。


 赤井主任がなぜここに? 見た目は老け顔の40歳半ばのアラフォー38歳。

 ステテコではなく、何というか、半ズボンにこれまた、サラシのなんだか野人スタイル。オーガというよりもオーク寄りの小太りだから、似合わない。

 

 僕が呆然としているとぞろぞろとオーガのような姿をしたヒトと人間の姿をしたヒトが出てくる。

 住居らしき建物が頑丈そうな石造りのせいか、僕の持っているオーガ像とは全然違う。全員ヤクザオーガみたいなやつが適当な木の屋根や洞窟にでも住んでいるイメージだったのに、文化的だ。

 木組みで粗雑な感じに組み上げられた見張り櫓だけが何となく、想像通りだったというところか。


「あんた誰よ」

「シッ。この人が個々の代表ですよ、村長ですよ。マオウさん」

「いや、だって、この人はどう見たって、オーク人間」

 マオウ、小声で言っているつもりだが、赤井主任の顔がひきつっているのがわからんのか。

 と言いたいが僕も独り言がでかいから、何も言えないが。


「おい、飛田君。これはどういうことだ」

「こっちのほうが聞きたいのですが」

 赤井主任は諦めたかのように空を仰ぐ。


 ついで、「ムンッ」とマッスルポーズをすると、主任の姿が肥大化し、腹が少し出ているが、黒髪の赤銅色、マッスル赤井オーガの完成である。

 ああ、服は破けていないから、その辺は超安心。男の裸なんぞ、目の毒だ。今の姿だけでもなんか涙出そうだし。


「まずはこれでいいか。状況については」

「人化ですか。納得」

「納得って、ここから殴られるよ。すごい丸太みたいだし」

 フーッと威嚇をかける猫又だが、それは無いとは思う。


「流石、巻き込まれた勇者といったところか」

「やめてください。それ、中2臭くて、聞きたくない。忘れたい過去。ただのSEですよ僕は」

「お互いの手の内は明かしたほうがいいだろう。ここまで来たらな」

 でかいオーガ(腹が少し出てる)と僕(中2の異名)の奇妙な会話。異世界だからできることだよネ! まじでやめてください。


「だったら、早くハービィの宝珠を返して! 何かムラムラしなくなっているから可哀そう!」

「身も蓋も無いことを……まあ、マオウさんのいう側面もありますが万年発情している猫にいわれると腹が立ちますね」

「私はいつでも雅弥ならщ(゚Д゚щ)カモーンよ」


 どうしようこの猫又。何とかしないと。


「とまあ、どうにかしたいものだが、無理なものは無理だ。俺だって、どうにかできるのであればどうにかしたい。そこの親父のせいでホント最悪だよ」


 と言って、赤井主任が尻ポケットから出したのは、茶色く(というか、ドドメ色?)なった珠。禍々しくて、触りたくない」


「そこの親父が寝ぼけて食って、腹を掻っ捌いて取り出したんだ。そしたら、これだ。ちなみにそれで大分力がついたらしくて、調子に乗っていたら、」


うわーお、ワイルドかつ、ワイルド。


「うーん、最悪」

 何回倒れる。クソ雑魚メンタルハービィ。

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