第18話 あ、僕やっちゃいました?

 パッと行こうと思ったわけです。異世界に。

 かっこよくキメ顔でオーガさんに会おうと思ったわけですよ。けれども、ね。


「迷いました。いや、こんなことやりたいわけじゃないんですよ。わかりますよね」


 アリエスさん、どうして迷うんですか。

 方向音痴とか、鳥さんなのにどうしてですか。

 空を飛んでいるなら必須ですし、何なら空を今から飛んででも。


「多分、お二人をそのまま見失うかもしれません。結構森の危機が多くて見えなくなるかも」

 ポンコツすぎる。


 オーガの森。結構広いし、迷うかなと思っていたのですが、何とか地元の人がいるし。あ、でも、ポンコツ鳥のアリエスさんなら、何かをきっとすると思ったのですが、期待にこたえるんですかね。


「あのー。そこにいる大きな犬みたいな顔したクマにでも聞いてみよう」


 あのさ、マオウよ。それ、モンスターよ。ウルフベア。なんか、どっかで襲われて大変だった記憶が。


 ウオオオオオオオオオオ!


 という雄たけび。しかし、マオウはビビらない。妖術で何とかできるとか。


「うん。何言ってんだこのク〇ビ〇チ。お前こそ、〇〇くらえだ」

「あの会話できているのはわかったんだけど、どうしてf語みたいなこと言ってんの?」

「そんなのメス熊がケンカを売ってきたから。私が何か頭悪そうな猫だからってさ。だったら、お前はク〇だって返さないと。舐められちゃうから」


 どうして、そんなに沸点低いのかな。すごいウルフベア(メス)の目がやばいよ。確実に怒っている。これはまずいっ。

 僕はマオウを横にのけてウルフベアの前に出ようとするが、マオウはぐっとしゃがみ、ばねのように右足を上げる。足はモンスターの顎にヒットする。


「ようし、今のうちに逃げ」


 僕がそういうが、マオウは動かない。足をぶらぶらさせて、

「いっちー。ちょっとたんま」


くらくらとさせるベアだが、ぎりぎりで耐えて、走りこんできて、体当たりをかまそうとする。

 なかなかの威力だったが、そうはうまくはいかないらしい。

 

 ついてねー。しかし、時間は稼げる。僕は左の二の腕にある呪紋を呼び出す。


「風よ」


 呼び出す力は対象へのつむじ風。圧縮した空気の塊は刃とかして、ウルフベアの腹をえぐる。


「グアッ」


 悲鳴を上げたウルフベアの腹に風穴を開けつつ、森の樹木をついでに削る。


「あれっ、僕なんかやっちゃいました?」

「やりすぎですっ! これ、どこまでいくんですか?」

「どこまで行くんですかね?」


 アリエスさんの指摘にこたえることはできない僕。割と最近は出していなかったせいか、それなりの強さとなっていたようだ。


 貫通していた風が木々をなぎ倒して、何か、見えた広場にあった櫓を倒してしまっていたようだ。

 あれ、何か村っぽい。あと、何かでかい大男が出てきていませんかね。


「オーガさんです」


 ですよね。しかも、オジサマっぽくて強そう。


「あ、僕なにかちゃっちゃいました?」


「……帰ろうか。アリエス」

「やったのは、雅弥さんですし」


 薄情者ッ!


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