第17話裏 アラサーと猫耳少女の暮らし方について

 さて、残念顔のアラサー(30歳)が眠った。ブ男ではなく、どちらかというと童顔のオタ少年といったところだ。

 あとは、アリエスも眠ったと。

 正確には、アリエスの片方が眠っただけで、もう一つの意識ロリババアは起き上がってくる。

 正弥のベットに腰かけ、アリエスとは思えないほどの優雅なしぐさで語りかけてきた。


「わしはお前と二人で話したかったからこれは好都合と言いたいところじゃが」

 マオウとしては嬉しくも、魔王という意義としてはあまりよろしくない。

 悟ったような目をして、私を見てくる。


「勘の鋭い奴は嫌いだよ」


 しかし、ロマーヌは私の妖怪らしい睨みに涼しい顔をしている。

 顔はアリエスのくせに、中身は老獪なババアとか、チートかよ。


「まあ落ち着け。わしも対立するつもりはない。アリエスはそこの頭の悪そうな男に思っていることがあるとはいえ、お前とは仲良くしたいと思っている」

 ケラケラと笑う仕草は何だか大仰めいて、なんだか時代劇っぽくて、古臭い。雅弥の家を出てから少しいた組織の連中を思い出して嫌な気分になる。


「私は思っていないのだけれども」

 2つのしっぽを膨らませて、妖力を込める。このアパートは色々と細工をして、私の力が増幅しやすくなっている。

 3か月。色々と雅弥の呪紋の力をコントロールするためにやった副産物だ。


「このアパートという場所じゃが、お隣さんがおるらしいの。なぜ、のじゃ?」

「もちろん、あなたたちの上位組織の人間が住んでいるから」

「次にあの雅弥は30歳までどうして生きてこられた? 呪いをまといすぎじゃろ。家族が死ぬぞ。あと、ペットでもいたら化け物ねこまたになってしまうくらいに」

 そう、飛田雅弥は呪いを異世界で受けすぎたらしい。曰く、


「魔力がなかったから。だったから」

「なんともまあ。この世界の住人が異世界に行けば力を得られるのは普通なのにな」


 だからこそ、ケイというエルフに呪紋を色々と書き込んでもらって、無理やりブーストした。それだけのこと。ただ、おかげで体は魔力的にボロボロだったそうだ。

 仲間の女の子にDTのまま死にたくないから、結婚してと言いまくったが、何かそれで死にそうだからといって、ふられたらしい。


「色々と無茶をして30歳で死ぬかも、と。本人は笑っていた。何とか帰ってきて、家族は魔力がなくて影響がなかったけど、なんかよくわからない夢を見るわで、死期を悟って、独り暮らしを始めた――本人が生き残ることを頑張ったのと、私が来て、呪いを吸収する努力をした結果、ひとまずは10年生きられるかなというところまでこぎつけた。結果、周りはそういう事情を知った人たちがいるから何も言わなかった」


「左様か。ならば、その力でわしも一時的に冥府から這い上がってきて、一族の危機に話しかけることができたのだろう。感謝する」

 ロマーヌは素直に頭を下げた。

 本当に感謝をしていている。だからこそ、彼女は英雄だったのだろう。

 でも、私は素直じゃないから、素直に褒めはしない。


「感謝しなさい。まだまだ残っている呪いだけを無効化して、エッチさせてくれるならなお、よし」

 という本音を答えるのが魔王らしいのだ。


「明日、オーガの結果によるがな。解けたら、アリエスとも、な」

「周りの部屋は結構美人のケモミミ女性や魔女がいたりするのよね。アリエスなんて大丈夫なのかな」


「それはアリエス次第じゃな」


 ロマーヌさん、胸を触りながら言ったら泣くと思うよ。それ、アリエスすごい気にしているんだからね。


「と、言いながら、その魔王とばかりの邪悪な笑みはないんじゃい」

「さーてね。ライバルは少ないほうがいいからね。私、マオウって名前だから、いいにゃんよ」

 雅弥の初めての女は私だからね。

 いたずらっぽく笑みを浮かべ、私は23時を過ぎた時計を見た。

 

 今日の雅弥のお仕事はおしまいってね。

 雅弥、今日も生きてくれてありがとう。

 

――もうわたしを守るために逃げるなんてことはするなよな。


「尻尾がフリフリ揺れとるぞ。機嫌がいいのかのう」

「さあて、どうしてなんでしょうかね」

 私はごまかして、何となく雅弥のベットにもぐりこんだ。

 ロマーヌさんもアリエスさんの体で小さいので、同じようにもぐりこんだ。


 明日は朝起きたとき、どんな反応をするか楽しみだ。


 あと、雅弥も美少女に添い寝されてもいい人生はしてほしいじゃない。

 てところかな。

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