第15話 ロマーヌの天秤(お土産)を手に入れた

 赤茶けた断崖絶壁。その上に存在するのは石造りの古代ローマのパルテノン神殿をほうふつとさせる石柱群と屋根。修業した人間や空を飛べるハーピィでもいないとたどり着けない神殿。

 であるように思えるが、階段も手すりが神殿内は整備されている。

 どうも、ハーピィさんが上に上げてくれるサービスもある。ただエロハプニングはないようゴンドラっぽいところに詰め込まれて、ハービィさん数人に運ばれる姿はシュールです。観光に使っているのだろうが、旅行気分に来ているようにしか思えない。 あと、天秤のお土産屋がとっても修学旅行感があって、なんというか、


「うーん、ありがたみが減っちゃうにゃん」

「そういうのは黙っておくのがエチケットだ。マオウ」


 じろりとアリエスさんが睨みつけてくる。小鳥みたいな印象なので可愛いし、顔もほお袋を膨らませて、文鳥みたい。


 その中のご本尊と言えるのが、長年かけて作られた一つの珠を片方の秤に置いた天秤を持った傾いていないハーピィの美女をかたどった石像。

 わりと露出高目ですが、先ほどアリエスさんに怒られましたのでコメントは控えます。


「あ、アリエスさんと同じで胸ちっちゃい。まあ、体はそれなりにムチムチしてる」

「私、それなり。負けないにゃん」


 アリエスさんはひどく疲れたため息をついていた。

「もうどうでもいいです。なんかもう色々と」

「元気出すにゃん。私のおっぱい触る?」


「あのですね。このハービィの聖人、ロマーヌ様はハービィの子供たちが生まれなくなる呪いにかかった時に呪いを解くアイテムを手に入れて、呪いを解いたそうです」

 

「なるほど。だから彼女はその天秤アイテムを持っている、と。それを盗めば解決。マオウなら妖術で少しくらいごまかしてやっちゃえば最高ってコトかにゃ」

「私、ハービィです。あと割と公僕的な立場であることをお忘れでしょうか?」

 流石にこめかみを押さえながら、アリエスさんはマオウアホに語り掛ける。


「にゃんにゃん」

 マオウ、手を猫の手にしようが、にゃんにゃん頭の悪い顔をしようが、仕方ないと思うぞ僕も。


「とりあえず、疲れたし。お土産の天秤のレプリカでも買って帰るにゃん。ほれほれ、チート魔術のアパートのドア召喚とかやってくれるかにゃん」

 にゃんにゃん言ってごまかすな。うざい。

 あと、あのドア召喚、割と疲れるし。


「え、ドア召喚って。空間を繋げる魔術は相当ハイレベルな術ですよ」

 アリエスさんは目を回しながら、驚いている。よく言われることだけど、ま、できるから、仕方ないわけです。

 僕の手のひらに転送用に書き加えられた魔術紋が浮かばせて、何となく答える僕ってすごいね。


「色々とケイに鍛えられたり、自分を改造したりしてね。ま、異世界人特権マシマシの最強の種の発揮ですよ。あと、天秤のお土産に何か霊験あらたかなモノがありませんかね」

「サラッと危ないこと言わないでください。体はボロボロじゃないですか」

「いやまあ、元気ですかね。その辺は色々と頑張ったんで」

 苦労したよアレ。思い出すだけで辛いけど、いい思い出よ。


「それはよかっ、ああっ、ドア召喚は人のいないところでやってくださいッ! お母さんに顔合わせしたかったのにッ!」

「そんなのさせるわけないにゃん」

 猫又の邪悪な笑みと、アリエスさんの下心の会話は聞こえる僕ですが、聞かなかったことにするのがエチケットですよね。


 で、僕たちを見つめる視線もなんかあったけど、ロマーヌの天秤(お土産)のことが気になって、僕は何となく無視をしてしまった。後悔? そんなことはいっぱいしたことがあるから知らないね。


――ほんと、呪いって巡るものだな。


 何か微かな声も聞こえたけど、考えたら負けだよね! 呪いとか、色々ありすぎて、もうどうにでもなれや!

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