第13話 大切なものを取り戻すために

 ピピッとスマートフォンの音が聞こえた。何故だろう。とても大切なものを失ってしまった気がする。今日は9月4日である。仕事に行かなければならない。

 しかし、僕の体は動かない。そして、何故か、女物のパンツが一枚置いてあり、

その横には達筆な毛筆の紙が1枚があった。


「探さないでください。マオウ」


 そうか。これはマオウのパンツ。うん、女の子のパンツ。そうか。パンツ被れば色々と目覚めるかもしれない。変態さん、そんなの関係ない。僕はもう大切なものを失った気がする。


「やめるのです。人間の尊厳が失われますよ」


 ああ、アリエスさん。何でここにいるんですか。ご飯はメシマズなのはやめてくださいね。あれはあれでしんどいです。ご飯が非常にもったいないです。


「あれはちょっと失敗しただけです。大丈夫、今度は大丈夫です。多分、きっと。恐らく」

 絶対に駄目なヤツダコレ。


あと、マオウが干からびたように倒れつつ、ドアの前で酒を飲もうとしているのですか。


「ああ、私がここにいる意味が一つ失われた。どうして、雅弥って肝心なところで最悪なの?」


 泣いている。ああ、そうか。何かマオウの中で失われたものがあるのか。僕も何か、うっ、頭と股間がしくしく傷む。


「思い出してはいけないのです。バカンスに行きましょう。そして、あなたを苦しめた呪いを話してください」

「僕を苦しめた原因のろい。ああ、そうだ。あのクソDTエルフを僕はやらなきゃいけないんだ。うっひっひっひっ、僕の力ならあいつだって、今なら。あっ、魔力の訓練はやめてください師匠。死んでしまいますから。ばっばぶう」

「幼児退行するほどの呪いを受けたのですか。それはかわいそうに」


「いや、単にDTから非DTになろうとすると股間に激痛が走る呪いを受けただけ。あれは相当DTをこじらせた何かが呪いをかけたに違いない。酷いものだから。うっ、二日酔いがきつい」

 マオウ、それを言うと余計につらくなるからやめてあああっ、ケイ先生、お尻に魔力注入は駄目だ。おぎゃあ、アリエスさんの体内に入って、おぎゃりたい。


「やめてください。最悪です。訴えますよ。お誕生日の次の日ですが、私の故郷に連れて行きましょう。そうすれば癒されますし。もしかしたら呪いについても、少しは緩和できるかもしれません」


 な、なんと? それは早くそこに行きましょう。早く。善は急げです。


 僕のとても大切なものを取り戻せるかもしれません。本当に。あの野郎は僕を強くしたが、同時に色々な傷を残している。まさか、呪いを隠していたとは。

何とか、何とかしなくては。


「私もお願い。じゃないと壊れちゃう」

「二人ともくっつかないで。鼻息荒いです。こわいです。いやあああ」

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