第12話 30歳の誕生日の夜、捨てるものは
「帰っちゃったね」
ソウデスネ。すごい勢いで帰っちゃいましたね。
「すごい飛んで帰って、アレすごい目立たない?」
「確か、法律で飛ぶときは許可が無いと危ないと聞いたことがあるね。僕もあこがれたからよくわかるよ。現実って厳しいよね」
僕は良くそれを調べた。中2病って色々な原動力があるからさ。
「とりあえず、家に入って寝ないかな。私はシャワーも浴びたし、雅弥も浴びなよ」
猫耳をピコピコさせながら、二股尻尾をフリフリさせる姿。顔を真っ赤に染めて、何となく性的な覚悟を決めたような顔。発情をした猫。
最後に、僕はマオウの口元が三日月のように笑っているのを見逃さなかった。
あれは獲物を逃さないようにする目。とはいえ、僕も頬を緩ませた。
だって、現実はラブコメじゃないから。
童貞を捨てるのはもったいない――わけじゃない。ルパンダイブ? そんなことを人間はできません。ただ、体を清め、見た目は美少女の猫耳少女と直結。
性格はアレだけど、見た目はね、すごいいいの。見た目は10代だけど、20歳を超える高齢猫になり、気づけば猫又になっていたのだとか。
だから合法なのですよ。わあい。
誕生日のプレゼントは僕の童貞を捨てること。当り前じゃないか。
あと、置かれていたケーキですか。うん、そんなのすぐに食べた。シャワーも浴びて、綺麗に綺麗に身を清めた。
入念に体を洗う。どこまでもきれいに僕の心はウナギのせいで色々と高ぶらされたようだ。そういえば、精力ドリンクも置いていたような気がするが、そいつも飲んじゃったねHAHAHAHA!
23時50分。さて、
『ぶーっぶーっ! えっちです。ちょっとエッチです。注意してください。破廉恥です。子供が魔王になります』
うるさいのでとあるエルフの師匠から、盗んだ異世界仕込みの魔術で黙らせる。魔術はイメージの力。無詠唱だろうと、そこだけ風を止めるイメージと魔術を込めて。
音を伝達する空気を一部分だけ抜いて、真空状態にする。
「これでいいんだな」
僕はマオウを押し倒しながら、彼女に問う。
茶トラの耳をピコピコさせながら、顔を真っ赤にさせて答えた。
「もちろんだよ。ギブアンドテイク。私はマオウという名だけれども、魔王にはなれない。猫又だから。でも、雅弥の子は魔王になれる素質があるから魔王の母になれる。半妖の人間か、妖怪かどっちでもいいけど、強い力を持つ子が。まあ、種族違いだから何回もしないと駄目らしいけど、別にそれはいいんでしょ」
もちろん、問題無い。それでもいい。むしろ、その方が燃える。
そうして、いつものマオウのタンクトップを触り、胸を感触を堪能する。ちらちら見えるお腹や紅潮した白い肌はすいつくような感触。いかにもな背徳感が僕の背中をゾクゾクさせる。
マオウの健康的な太ももも僕の心にヒットして、何かがこぼれ出そうで、こぼれ?
『私よりも先に大人の階段を上ってはいかんのだ! BまではOKだが、Cはいけないのだ!』
声変わりのしない男とも女ともにつかない声。それは非モテ大王、ケイ。
僕の師匠であり、中性体。だから、美形なのにどちらもできるのに、できない非モテエルフ、ケイ! アイツの呪いだ。
白いぼーっとしたきれいな何か(呪い)が僕の股間にスマッシュヒット!
「OUCH!」
「ええっ! 雅弥! 起きて! この私の高ぶりをどうしたらいいの!」
という叫びと僕の痛みのような快楽のような感覚とともに、僕の意識は途切れた。
誕生日の夜、僕が捨てそうになったのは僕の尊厳。
僕のアパートで捨てることにはしたくない尊厳。
「何で、僕はこんなに残念なんだ……不幸だァ」
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