第11話  クソ雑魚メンタルなハービィさん

「破廉恥はいけません。各々の同意のもと、子供を産みましょう。魔王は誕生させない。わかりましたね」


 誕生日の22時もせまり、わけのわからん漫才のまま。終わりなりそうな勢いのアリエスさんの説教。

 気づけば、誕生日なのに、どうして、僕は説教を受けるのでしょうか。後ろにはケーキがあるというのに。


「いやー理解した。早速、雅弥に抱き着く。そして、ベットイン。世界はマオウに抱かれて最高の世界よ」

 僕も抱き着かれてもいいかなーと思う。頭がぼーっとする。あ、おいしそうなマオウの太もも大好き。このまま枕にして寝たい。マジで疲れた。

 かれこれ、アリエスさんにごちになった回転寿司を食べてから、1時間ほど訥々とした説教が長々と1時間ほど続いている。

「理解していませんね。マオウさん」


そして、マオウが僕を押し倒そうと何回も。どうやら、ウナギ寿司は何故か、猫又妖怪のマオウにも効いたようだ。僕はただ、仕事の疲れを癒されたようだが、ムラムラこない。なんて、おりこうさん。いいでしょ。


「聞いていますか。雅弥さん」

「んーパワハラ! もうさすがにうんざりです。ここは僕の部屋です。そこで犯罪に及ばない程度の行為であれば別にいいでしょう。これで終わりじゃないですか」

 うっ、正論かも、とアリエスさんは小さくうめく。だが、そうはいかないのが彼女の立場らしく、眼鏡をクイとあげて、反論をしようとする。


「とはいえ、あなたの子供は世界のバランスを変えてしまう。だからこその処置です。私ならば」

 子供を産んでも問題はない、と。


「けれども、恰好が聖職者みたいだからそういうのいけるんですかね」

「大丈夫です。世界を守るためですし。私の世界では処女信仰とか無いですから。よぅし、明日は休みです。私の世界に行きませんか?」


「えー、それはいきなりじゃない。あわよくば、そのままベットに連れ込んでとか」


 マオウさんもこの居候生活で何度も及ぼうとしたじゃないですか。まあ、下心があって、寸止めとか僕の理性が何回泣きそうになったか。

 一応、いちゃラブが信条の飛田雅弥さんですから。耐えましたが。

 でも、今日のための寸止めならちょっと泣いちゃいますよ僕。


「下心。そんなものはありません。あわよくば、勇者を産んで私たちの世界を良くしてもらおうとか考えていませんよ」


 目がマジだ。下心はないかもしれないと本気で言っている。内容はどう聞いてもNGなんですけどね。


「よし、明日は私の世界に行きましょう。明日の10時ごろにここに来ます! ありゃっぱ!」

 

 そういって立ち上がったアリエスさんがやったのは、玄関で靴を履こうとした瞬間のずっこけからのティーバック。

 寿司のときにいたお姉さんなら、最高だったのにな。


「見ました?」

 顔を真っ赤にして、羽をあげるアリエスさん。恥ずかしかったようだ。

「見てません」

 雅弥という男の答えは紳士な一択。

 見えるとか見えないとかどうでもいいくらいのTバック。でも、何も来ない。


「見ましたよね」

 しつこいなあ。

 くまさんパンツの方が似合うと思う。


「いいえ」

「見ましたよね」

 強情ですね。

「いいえ」

「見えてどう思いましたか? 勇気を出した勝負服でした」

「それはもう、セクシーなつもりが、幼児体系のせいで残念なことに。まあ、気まずいのと、どこか、幼児な感じがずれてて、何というか興奮もしないかというと――結論として、まず無いな」

 という感想ですね。


 顔を真っ赤にしたアリエスさんがアパートのドアを開けて外に飛び出した。言葉にならない涙を流しながら、外に飛び出すと。


「ばーかばーか! 雅弥さんのアーホアーホ!」


 と言って、空を飛んで逃げていく。

 しかし、語呂がひどすぎるな。


「あ、空を飛べるんだ。飾りじゃなかったんだ。あの子供、すごいな」


 マオウのとどめの言葉を彼女が聞いたら泣き崩れそうだな。クソ雑魚メンタルそうだし。

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