第9話 アラサーとアラフォーの男と
「おそよう」
マオウの声が非常に心臓に悪い。
「ハッ、まさか僕は遅刻」
「一応、ぎりぎり間に合うかな。ご飯は抜き。ひげ処理はちゃんとしといてね。きちんとしておかないと大変だよ。30歳だし大変だね」
マオウが茶トラの耳を膨らませ、目も口もにんまりと笑う姿は小さな魔王。
やめてください。誕生日に遅刻とか、やだよ。
あと、何故裸エプロン? ご飯が机に無いのに。
「気分。新妻。私を襲ってくださいの合図。そうだ、YES枕も作ったよ」
狙いすぎだよ。ホント。
30歳の童貞。アラサーの子供を狙うのが丸見え。下心のせいで萎えちゃうよ。
「下半身は元気だけど」
「それは生理現象です。あと、お前が来てから、そういう処理がしにくくてたまらん。どうにかしてくれ」
「とりあえず、私で一発処理してくれたっていいからね」
話がまるで通じない。まるで妖怪のようだ。
僕は1DKのアパートをとぼとぼと出て、会社に行くしかないらしい。
色々とあきらめて、会社に行く。
誕生日だなんて、浮かれているような年はとうに過ぎた。30歳となった自分をトイレの鏡で見つめると何か泣きたくなる。
周りは男ばかりで女の子は遠い。ケモミミ女の子? ああ、そういう子は営業で少しだけ見たことがあるけどさ。お調子者の僕を知っており、悲しいくらいに相手をしてくれない。
気づけば、上司の赤井主任(38歳アラフォー・独身・男)が僕を見ていた。
「何でしょうか? 赤井主任」
僕はとりあえず、何となく見つめている少し背が低い太っちょの主任に見つめられ、何かやばい雰囲気を感じ取る。
「いろいろと勘違いはするなよ」
まさか、僕を狙っているとか思って、アレ?
赤井主任はため息をついて、席に戻っていった。
僕の勘違いですか。本当にありがとうございました。なんという悲しいことをしてしまったのでしょうか。ボーナスとかに響いたらマジで嫌だな。やだっ、僕の評価こんなに低いの?
という妄想なんてしている暇はなく、メールとビジネスメッセに届いている社内からの問い合わせや電話相談に明け暮れるしかない。
メインは別の会社に出向している社員からの相談やそのヘルプの相談をベンダーに投げたりするつなぎだとか。検証だとか。
まあ、忙しいったらありゃしない。異世界帰りの男もここではただの一般人であるわけです。
だから、ホモに狙われることだってあるよね。考え方は人それぞれだけど、僕は女の子にちやほやされたいデス。
小太りの男(アラフォー)に見られながら、30歳の誕生日は過ぎていく。
「ま、家に帰ったら、マオウが何かしているんじゃないのかな」
と思っていたら、もちろん、そこには倒れたマオウとアリエスさんがいたわけです。
二人で抱き合って、何をしているのかわかりませんが、これは何が起きて、しかも、何か顔が赤くて、エロイ。
これって、事件ってコト?
『ぶーっぶーっ! えっちです。ちょっとエッチです。注意してください。破廉恥です。子供が魔王になります』
欲望度測定器さん、うるさいです。事件ですから、黙っていてください。
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