第8話 神々にも悪魔にもなれる種

「神々にも悪魔にもなれる。そんな種の条件に付いて、高名な予言が言い始めたのは最近。予言者を問い詰めて、該当する人物を私たち、世界管理機構は探し出しました」


「――結果、欲望に忠実な気分、特にエッチな気分になればなって、えっちをすれば強くなれる種を持つ人間、飛田雅弥が特定された。有名な話よね。まあ、予言者の告白の後も、私の隠蔽がうまくいって、ぎりぎりまで幸せな生活を雅弥ができたのは幸いよね」


 とマオウはかっこよく言うものの、胸をちらちらさせるのはやめましょう。僕の理性が持ちません。


「予言者が軽々しくいってしまうから。何で、軽々しくいってしまうの。世界管理機構が黙ってほしいことを簡単に言うとか。おかげで見つからない。仕事の根回しやら何やらでここまで段取りをつけるのにどれだけ時間をかかったのやら。しかも、変な猫又がオマケでいて」


 うん、とても疲れがたまっているようだ。見た目が若いのに、どこかで老け込まないかなと僕は心配してしまう。


「何か? その同情を含めた目で見ていただいても何も出ませんよ」

「たまに理不尽なことを言われて泣いている同僚を思い出してね。なんか辛くなってくるんです。何かね」


 明日も仕事。そんな顔が僕や同僚と同じで少し泣けてくるね。


「とりあえず、アリエスだっけ。早く帰ってよ。夜だし。私はすぐに雅弥を襲ったりしないわ。もっとしっぽり暮らして、心を許して、エッチな気分や庇護欲。もちろん、癒しを得られるようにしてから、むっちりしっぽりやるにゃんよ」

 下心丸見えでありがとう。マオウも追い出したほうがいいかな。さて、荷物を用意してあげて。


「根回し済みだから。同棲している女の子を追い出したクソやろうと近所にばらまかれる。会社にも伝わるかもね」

 僕の逃げ道は無いようです。どうして、この猫又さんは僕に迷惑をかけることだけは天下一品なのでしょうか。


 アリエスさんは額に手を当てて、目をつむる。何を言おうか、それともいうことがありすぎて言葉がまとまらないか。そんな苦悶の表情を浮かべている。

 頑張って。僕は何も言えない。


「雅弥さんが調子乗りだから。アホだからこんなことになったのです。もう少しいい性格をしていたら、勘違いとかせず、いい人と結婚をして何もかもが平和になっていたのです。中途半端にアホで勘違いだからモテないにぎやかしだとか言われる。背景だとか言われるんですよ。まあ、神々にも悪魔にもなれる種がこんなのから生まれるなんて、ホント」


 ちょっとー失礼じゃないですか。どうして、顔とかは結構整っていて、薄幸そうかつ、童顔っぽくも妖精のような顔をしてモテそうなのに口だけは悪いんですかね。


「言いたいことはわかりますが、私も何となくわかっているので、今日は帰ります。お仕事頑張ってください。明日は金曜日。休みの日にきちんと話しましょう――これからの人生設計について、ゆっくりと」


 そう吐き捨てて、アリエスさんはアパートを出た。

 空を飛んで帰ったらきれいなのに、姿は見えなかった。何か、タクシーが見えたから、それで帰ったのかな。


 という現実逃避をしながら、気づけば、深夜2時。明日起きれるかな。


「いやさ、それよりも明日のアリエス来襲について考えろよ」


 マオウサン、考えたくないことってわかるかな。

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