第3話 いや、どうしたらええねん
「というわけで、実家のマオウが気づけば猫又になり、人化の術を身に着けて、やってきたのでした。どうでしょう、この面白い状況」
マオウはチェシャ猫をほうふつとさせる笑みを浮かべつつ、ダイニングの椅子に腰かけていた。相変わらずのなんか破廉恥な太ももやら何やらを見せつけながら、僕を見ているのはマジでうっとおしい。
「えっ、あっ、うっ、あっあっああああっあっ」
「言葉を忘れた悲しき人よ。驚いたかね。これはいいサプライズになっているようだ。よぅし、これであとはここに住むことができたら、最高だね」
「できるわ、けあるわけわけ、ない、わっ」
「何言っているかわかりませーん。優しいおまぬけ飼い主の雅弥なら、少しくらいなんとかなるわい」
茶トラの耳をわざとらしくふさぎながら、マオウはすっとぼけたふりをする。20歳を超えたあたりから、どうも馬鹿にしたり、人間臭い素振りをだしてなんか変だなとは思っていたが。猫又になって知能が伸びたのなら理解できた。
ただ、その知能伸び方が悪質に伸びていて、マジで最悪だ。魔王何て名前を付けたけど、まさにそっちに伸びていく感じがして嫌だ。とても嫌すぎて、泣きたくなる。
「最悪だと思ったでしょ」
「頭の中を読むな。顔に出てるとか言うなよ」
「よくわかっているにゃん。ここに泊めてよ。ほら、猫のふりするから」
といって、ぽんと煙に包まれたマオウは茶トラの猫の姿になっていた。尻尾は二股だけど。
「いや、ここはペット禁止の単身者マンション無理だって。管理会社にばれたら」
「あーそういうのは妖怪の仲介業者がいて、どうにか暮らせるように働きかけたから、どうにかなる。どちらかというと、お隣さんの目が気になるとか、そんなのが困るから言っただけだよ。わかるかな」
なんというご都合主義。なんて、わかりやすい優しい世界。僕にとってはなんかどうにでもなれって世界、という夜の出来事。
いや、どうしたらええねんこれ。なんか適応することができますかね。僕みたいな一般人が。
どうしようもならないねこれ。どうにかなるのであれば、今ここから追い出せばいいのだけれども、太ももやら、谷間が見えてなんというかまぶしすぎて、死んじゃいそう。心臓がバクバクするよ。
「DTバンザイ」
だから、僕の心の中を読んで嫌なこと言いまくるなよ。マジで困るんだ。29歳DT。悲しい性。どうしようも抑えられないところ。
草食系だったらいいのに、僕はそういうところがお調子者だとか、DTだとか言われてしまう由縁。なんて悲しい。
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