クラスの優等生がやりたい100のこと!

枯れ尾花

クラスの優等生がやりたい100のこと!

そもそもの始まりは、俺が放課後の教室で居眠りをしたことから始まった。


俺、田代裕たしろ ゆうが起きる頃には、時計は午後五時を回っていた。


荷物をまとめて帰ろうとすると、教卓の上にノートが置いてあった。 


誰かの忘れ物かな。そう思い近づきノートの表紙を見て、僕は驚いた。


驚いたのには理由がある。


表紙に1度も見たことがないキャラのシールが貼ってあったことではない。


タイトルが「死ぬまでにやりたい100のこと!」だったのだ。


死ぬまで?どういうことだ?


そして、驚きに拍車をかけたのがそこに書いてある名前だった。


西沢にしざわ 百々子ももこ


彼女は、クラスの委員長を務めている。


誰にでも優しくて、成績優秀で、そして可愛い。


クラスでは、「天使」と言われるほどの人気者だった。


その時、教室の扉が空いた。


「あー、やっぱりここにあったかー。」


西沢さんだった。


「見ちゃった?」


「…うん。」


「なら、しょうがないかー」


そこで、彼女はそっぽを向き、咳を二回した。


「ごめん。…うつるようなやつじゃ無いから安心して!」


俺は、このノートと今の咳ですべてを悟った。


彼女は何か大病に侵されているのだと。


だから、人生に悔いが残らないようにこのノートを作ったことを。


「田代君、気づいてるんだよね…。」


「うん。」


「じゃあさ、このノートを完成させるの手伝ってくれない?」


「ん?」


「このノートに私がやりたい100のこと書き出したの。」


「うん。」


「最初は1人でやろうと思ったんだけど、協力者が居た方が楽しそうだし!」


「それって本当に俺でいいの?」


「だって、ノート見られちゃったし~。」


確かに俺には、彼女のノートを見てしまった責任がある。


少しの葛藤があったが、それほど迷うことはなかった。


「分かった。いいよ。」


「じゃあ、私のことは百々子って呼んで。私はゆう君って呼ぶから。」


「それって絶対?」


「うん!!」


彼女に笑顔で頷かれてしまった。


それなら仕方ないと思えるのが彼女の凄いところだ。


「分かったよ。百々子。」


「うん!それでよい!」


「あのさ、1つ聞いていい?そのノートの表紙のキャラ何?」


「あ!良いところに目を付けたね!これは、ハニワのハニー君!」


「ハニー君?」


「ゆるキャラだよ!」


「もしかして、美的センスないって言われたことない?」


「えー私、見る目ある方だよ?」


彼女はまるで自信満々と言わんばかりの笑顔でこちらを見てくる。


「だといいけど。」


それから俺は、百々子にノート「死ぬまでにやりたい100のこと!」の中身を見せてもらうことにした。


内容は


・ボーリングでパーフェクト出す!□


・カラオケで100点出す!□


・バンジージャンプに挑戦!□


など難易度がバグったものばかりだった。


「よし、じゃあどれからやろっか!」


俺は、無理があるだろ。と言おうとしてその言葉を飲み込んだ。


百々子には、時間が無い。それでも挑戦しようとしているのだ。


「まずは、簡単なものからクリアしていこう。」


「じゃあ、この【・四葉のクローバーを探す】からにしよっか!」


「分かった。じゃあ、日付決まったら」


「今から行こうよ!」


「百々子。戦略ってものを立ててから……」


「大丈夫!私、戦略家だから!」


彼女の「大丈夫」は謎の説得力があった。


「了解。天使様。」


~~~


「見つかったー?」


「全然無いよ。」


近くの公園に来たものの、お目当ての四葉は中々見つからなかった。


「百々子。今日は帰って、また明日別の場所に行ってみよう。」


「そうしよっか~。」


帰ろうとして地面を見たその時、


「あ、あった。」


俺はしゃがみ込み確認した。


百々子もそれを覗き込んだ。


「ほんとだ!」


俺は、その四葉を摘むと彼女に差し出した。


「これが記念すべき1つ目だな。百々子。」


「ありがと!すごいよーゆう君!」


彼女は、まるでお気に入りのおもちゃを買ってもらった子供のようだった。


俺は、彼女の喜びを正面から受け止めきれなくて俯いた。


それが、ばれないように頑張って言葉を探した。


「けっこう暗くなってきたな。送るよ。」


「うん!ありがと!」


~~~


それから俺は平日の放課後や休日、彼女のやりたいことに付き合う日々が始まった。


「ゆう君見てー!キリンだよ!」


「見れば分かるよ。」


動物園に行く☑


「ゆう君!ハニー君だ!!会いたかったよ!!」


「おー、よくきたハニね!」


「あ、喋れるんだ…」


推しに会いに行く︎︎︎︎︎︎☑︎


「やっと頂上だよ!やったね!」


「はぁー、はぁー。…なんでそんな元気なんだ?」


「そこに山があるからだよ!ゆう君!」


「使い方、はぁー、間違ってるぞ。」


登山する︎︎︎︎︎︎☑︎


彼女との日々はあっという間に過ぎた。


春は、ピクニックに行った。

☑︎


夏は、一緒に花火を観た。

☑︎


秋は、ベンチに並んで読書をした。

☑︎


冬は、雪だるまを作った。

☑︎


☑︎

☑︎

☑︎

☑︎

☑︎


そして、1年が経った。

ノートには、99個の☑︎が付いていた。


~~~


俺には気になる事が3つあった。


1つ目は、彼女の病気の事だった。


彼女は、隠したがっている様子だったが月に何度か病院に行ってることを知っていた。


百々子に残された時間を知りたかった。


何度か聞こうとしたが、勇気が無くて聞けなかった。


2つ目は、彼女は俺をどう思っているかだ。


2人で色々な場所を巡って、色んな事をした。


だから俺が彼女を好きになる事は、もはや必然だった。


そしてやっぱり、百々子に告白する勇気はまだ無かった。


3つ目は100個目のやりたい事について書かれているはずのページに封がされている事だった。


彼女に聞いたが、笑って


「秘密~!」


と言われてしまった。


その秘密が発覚する時が近づいていた。


~~~


「なぁそろそろ100個目を教えてくれよ。」


百々子に、今日は100個目のやりたいことを達成する。


そう言われて、百々子について行ってるが…


「良いからついてきてゆう君!」


さっきから本人はこの調子だ。


山道を登っているが到着先も分からない。


「そろそろのはず。あ、ここだ!」


不意に山道が開けた。


そこには、輝かしい星空が広がっていた。


「…綺麗だ。」


「でしょ。お気に入りの場所なんだ!」


俺が、星空に魅了されていると百々子が言った。


「じゃあさ、100個目の封開けるね。」


百々子が封を開封する。そこには、


彼氏と綺麗な星空を眺める☐


そう書かれていた。


「え?」


「星空は綺麗なのに、彼氏がいないから達成できないなー!」


「…」


「何、ぼーっとしてるの!聞こえなかったならもう1回言うけど!」


「はっきり聞こえたよ。」


俺は、ついに自分の思いを口にした。


「百々子、好きだよ。俺の彼女になってくれないかな。」


「はい。喜んで!」


「釣り合わないって言われるかも知れないけどさ、」


「大丈夫!」


百々子が言葉を区切る。


「私、見る目ある方だから!」


「そっか…。」


「うん。そう!」


~~~


「病気大丈夫なのか?」


「え?」


「時々、病院通ってるだろ…。」


「うん。だって、私のお父さんが務めてるからね!」


「え?」


「お父さん、凄い忘れっぽくてね。大事な資料とかすぐ置いてっちゃうから。困っちゃうよ。」


「…じゃあ、死ぬまでにやりたい100のこと!とか最初にしていた咳とかは!?」


「言ったでしょ!私、戦略家だから!」


百々子の小悪魔的な笑顔が輝かしい星空に照らされていた。俺は天を仰いだ。


百々子は、最初から俺を狙い撃ちにしていたのだ。


「じゃあ、俺の事最初から…好きだったのか?」


「うん。」


「理由を聞いても?」


「うーん。じゃあ」


百々子は、鞄からまた新たな1冊のノートを取り出した。


彼氏とやりたい100のこと!


「これを埋めてからね!」


「また1年かか、んぅ」


百々子は俺の唇を奪った。


「はい。1個目!意外と早く終わるかもね!」


「…そうだな。」









































































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