第14話 通い妻がうなだれた。
諒太さんの看病を終え、ひなのちゃんを呼びにリビングに戻った私はそのひなのちゃんが居ない事に気が付きました。
「あれ……どこ行ったんだろ。ひなのちゃーん?」
私がリビング全部に響く声で呼ぶと、廊下の奥からひなのちゃんが返事をしてくれます。
『どうしたじぇーけー!!』
「? いつの間にあっちに……」
私がリビングのドアを開けると、ひょこっと顔を出す小さな女の子は正しくひなのちゃんで、視線を合わせるためにしゃがみ込みました。
「どこ行ってたの?びっくりしたよ」
「マミーのところ!」
「あ、そう言えば今日はご挨拶がまだだったね」
「そうだぞ。じぇーけーもしてこい。一緒に行ってやるから」
それもそうだな、と思った私はひなのちゃんと一緒にあかりさんの部屋に入りました。
するとひなのちゃんが私が置いたままにしていた配信に使う機材を指差して一言。
「じぇーけー、あれ点きっぱなしだったぞ?電気代の無駄だからってパピーに怒られちまうぜ?」
「……え?」
一瞬、この子が何を言っているのか理解出来ませんでした。
「ご、ごめんひなのちゃん……点きっぱって……モニターが?」
「ん?いやそこのやつ全部だぞ」
「!?」
私は慌ててモニターに近付きます。
た、確かに配信の最中と同じ画面が……!
続いてスマホを手に取──
「……やっちまった……」
「お、おいじぇーけー……?喋り方おかしくなってるぞ……?」
そ、そうです、項垂れてる場合じゃありません!
私は急いで配信を消し、届いているコメントの確認を済ませます。
続いてswitterで検索を掛けました。
──MiyaBi 配信 と。
そしてその全てが終わった後、私は再び床に手を着いてしまいました。
「……私、子持ちVtuber(JK)とか言われてる……」
「じぇーけー子供いたのか!?」
「んなわけあるかぁーー!!」
「おぉ!?じぇーけーご乱心!?」
ひなのちゃん、どこでそういうの覚えてくるの?
じゃなかった。
「どうしよう……炎上って訳じゃないけど、微妙に言い訳もしづらい……」
「む?」
そもそも6時間近くも放置していた配信だから、残ってた人はかなり少ない。
それでも0じゃない……
もう!これだけ放置しても居てくれる人がいたのは嬉しいけど、フクザツ!!
ネットを見る限り、"MiyaBi"に子供が居る!?で止まってるから変な探りを入れてくるバカが居なければ大丈夫だと思いますが……
だからと言って何の説明も無しって訳にもいきません。
でも説明って……?
私が家出した時に出会った方のお子さんで、私はそこに通ってるんですぅーって?
「……言える訳ねぇーーー……」
「じぇーけー、キャラがブレてるぞ」
「……うぅ……」
まぁリアルで言ってるのと同じように親戚の子供ですとか何とでも言えば良いのですが……
こんな騒がせしてるの、お母さんにバレたらややこしい事に──
「ん?電話か?」
「……本当だ」
私のスマホに着信が入ったので、画面を見てみるとそこには"母"の一文字が。
どっち……!?
これは今日はちゃんと帰ってくるの?の電話なのか、はたまたネット見たわよの電話なのか……
「……ごくり」
「出ないのけ?」
「う、ううん出るよ。出る……出る……!!」
そう自分に言い聞かせた私は、ひなのちゃんに諒太さんが元気になった事を伝え一人になった後、画面を右にスワイプしました。
「もしもしお母さん?どうしたの?そろそろ帰るから別に掛けて来なくて良いのに」
──極めて自然に、冷静に。
お母さんの第一声はこうです。
『……みやび?あなたそちらのお宅で一体何をやってるの……?』
えぇ、こういう時、私はなんて言うかを知っています。
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