VOICE

醍醐潤

VOICE

 目の前に真っ黒な世界が広がっている。


 どこを見渡しても同じ黒色一色の景色。どのぐらいの広さで、どこまで続いているのか、全く分かるわけがない。


 君はさまよっている。自分がどこへ向かえばいいのか、どうすればいいのか……不安になって頭を抱えてしまった。



 そっちじゃない。


 君が歩いて行った所には何もない。


 そう、何度も何度も、声をかけているけれど、君には届かない。泣きながら、何度も何度も、同じ場所をさまよっている。


 早く抜け出したいと思っているのに、また、最初の地点に戻ってしまう。その度に、君の心は壊れていってしまう。


 やがて、疲れ切って倒れた君は、心の底から、自分の感じる痛みを声にして叫ぶことすら、止めた。

 


 誰も傷つけないよう、口を縫い、言葉を捨てた。


 自分が傷つかないように、目と耳を隠して、痛みを感じるところを潰した。


 こうすれば、もう生きることが辛くなくなる気がした。


 それでも、

 それでも、君は自分を責め続けた。

 


 生きる意味が分からなくなって。


 自分の存在すら見えなくなって。


 人を信じることも怖くなって。


 何もかも嫌になって、全てに絶望して。


 それでも、君は、少しずつ、

 

 自分のペースで歩いている。


 

 辛くて苦しくても、必死に耐えて、身体をボロボロにしても、精一杯生きていることも、全部知っている。その痛みを僕は知っている。


 君の声が僕には届いている。それが、何のために君が生きているかの証明になる。


 あなたの代わりなどいない。誰もなれない。必要ない。

 

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VOICE 醍醐潤 @Daigozyun

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