特訓レベルアップ
無事リンドウの町に帰ってきてからは、しばらく平和な日々が続いた。
昨日から特訓内容のレベルを上げたので、朝の早いルカも昼すぎなのにまだ寝ている。
でもまさか――皆して倒れるとは思わなかったな。
昨日の朝。
まだまだ弱いユリアス達を見ていて、わたしは皆にレベルを上げることを提案した。
「今までのやつは様子見も兼ねた内容だったけど、皆も少しずつ体力もついてきてる。だから特訓のレベルを上げようと思ってるんだけど、どうかな?」
「俺は賛成だ。ノアの動きも少しは目で追えるようになってきたしな」
「私もいいわよ。ずっと同じレベルだと上がりにくいだろうし。まぁ……キツいのには変わりないけど」
「僕も皆と同じ意見だよ。魔術の方はまだまだだけど、剣や体術なら前よりは強くなってきたしね。早くノアに追いつかなきゃ置いていかれる」
「決まりだね。早速始めよう!」
体力づくりはとりあえず置いておき、すぐに実践に移ることにした。
まず比較的簡単な魔術を教えていく。
魔力操作の特訓を続けたおかげか、彼らはある程度魔力を操作できるようになっていた。
しかしわたしが教えた魔術は、言わばただの付け焼き刃。
まだまだ練度が足りない。
「ねぇノア、これって…」
「あ、うんいい感じだよ」
それぞれ適性属性の魔術を教えているので、一度で皆に教えることはできない。
魔術と魔法のように、魔力を使って起こす現象などには属性やクラスといった種類分けがされている。
四大属性と呼ばれている、火、水、土、風。
他に無、闇、聖もある。
更に崩すと、氷、雷、時、空間などの派生属性も存在すしている。
クラスは下級、中級、上級、超級、神級の5つ。
わたしは特に火の水属性を得意としているが、フェルに叩き込まれたおかげで他の属性も使えるようになっていた。
今の制御できる魔力量だと、強くて中級までしか使えない。
全魔力を使えば神級も使えるかもしれないが、暴走する危険の方が高いので使ったことはない。
そんな種類が多いものをどのように教えようか考えていると、ジークのお腹の音でお昼ごはんの存在に気づく。
とりあえず休憩を取り、妖精の泉亭の女将さんからもらったお弁当を皆で頬張った。
「ふーっ、お腹いっぱぁい」
「美味しかったね」
「ああ、やっぱりあの女将さんの料理は最高だったな」
「食後休憩が終ったら、また特訓を再開しましょう」
食後休憩の後、次に多数の魔物を相手にするという実践方式の特訓を行った。
適当に近くにいた魔物を結界で拘束。
数は使えないので捕まえたら急いでユリアス達の元に戻る。
ユリアス達の前に放ったら猛ダッシュでまた魔物を捕らえる。
わたしはこの繰り返しだ。
どんどん増える魔物相手に、ユリアス達は魔術も混じえながら着実に数を稼いだ。
しかし彼らが倒すよりわたしが集める方が速く、中々終わりの見えない状況が生まれていた。
強すぎる魔物はわたしが相手をし、他の魔物は結界で閉じ込めユリアス達の元に連れて行く。
そんなことを続けていたわたしは、魔物に集中してしまっていた。
遅すぎる、とフォルンが宿を抜け出し探しにきたことでそのことは発覚した。
「ノアやっと見つけた。もう月も真上にあるけど、他3人はどうしたの?」
ちょうど結界で閉じ込めていた魔物を瞬殺し、フォルンと共に急いで3人の元に戻る。
ユリアス達を囲む魔物をフォルンと共に片付け、中心にいる皆の元へ慌てて駆け寄った。
「ユリアス! ルカ! ジーク! 皆大丈夫?!」
3人共に意識を失っており、魔術で水を造りだし顔にぶっかけた。
「はっ…!? 僕は…え、何を?」
ユリアスだけ目を覚ますが、混乱しているようだったのでとりあえず状況を説明した。
「ああそっか、特訓で……って2人は!?」
「そこで寝てるよ。ごめん、気づけなくて」
隣で意識を失っている2人の方を向き、わたしの瞳には涙の膜ができていた。
注意散漫になってきてる。
今まではこんなことなかったのに。
そんなことを思うと、涙が増えていくような気がした。
自分がわからない。
わたしは今、どんな感情を抱いているのか。
なんで涙を溜めているのか。
――…わからない。
地面に顔を向けるわたしに、ユリアスは思考を切り替えるように優しく言ってくれた。
「大丈夫だよノア。実際皆生きてるんだし、とりあえず宿に帰ろう。フォルンにも運ぶのを手伝ってほしいな」
「任せて」
2人と1頭でルカとジークを宿まで運び、一晩挟み現在わたしは目を覚ましたのだ。
「さて、今日はどうしよう。皆はダウンしてるし」
特にやることもなく、わたしは腕を組み唸った。
皆が寝てる間に特訓するのもありだけどー……そうだ、お金を稼ごう!
昨日のこともあるし、
「なら早速ギルドに行って依頼受けに行かなくちゃね」
わたしはぱぱっと着替えなどを済ませ、宿の外へ顔を出した。
「ノア、これからどこか行くの?」
ギルドに向かおうとすると、隣の厩舎からフォルンの声がした。
わたしはフォルンに駆け寄り、頭を撫でてやりながら答える。
「うん、ギルドに行ってくるんだ。3人は昨日無理させちゃったみたいだし、お金でも稼いでこようかなって」
「そう。ならアタシも連れて行って」
「フォルンも?」
「アタシ…いつも留守番じゃない? たまには一緒に行きたい」
特訓はよく一緒に行くけど、買い物や前に行った王都だって留守番してもらっていた。
依頼だってたまにしか連れて行ってない。
今日はわたしだけだけど、フォルンを連れていくのもいいかもしれない。
「いい子にできる?」
「できないなんて思われてるのなら心外よ」
不満そうに顔を逸らすフォルンに苦笑し、わたし達は冒険者ギルドへ向かった。
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