観光 (Sideルカ)
翌日。
さっそく防具を買いに行こうと防具屋を訪ねる。
しかし、扉には手書きの紙が貼り付けられていた。
その紙を見たユリアスが、呟くように読み上げる。
「『今日はお休みです』……だって」
「ならさ、せっかく王都に来たんだし観光しようぜ!」
ジークの提案で、急遽皆で王都を観光することに。
(服屋で自分の服も見たいけど……ノアを着せ替えたい!)
そう思ったルカは、4人全員が行ってみたいところを言い順番に巡ることを提案した。
順番にジーク、ユリアスとノア、ルカの順で回ることが決まり、。午前中にジークの言う露店巡り、昼食でユリアスの言う店。
ノアの言う甘いものは、王都で人気だというケーキ屋に決まり、午後はルカの言う服屋に行く。
(あれ……私以外全員食べものが含まれてないかしら……?)
そんな小さなことに気づくも、ルカは気にすることをやめ皆で市場に向かった。
店が一番多く立ち並ぶ広場には、真ん中に大きな噴水があり、子供達が笑い声をあげ遊んでいる。
露店も賑わっており、客引きの声が至るところから響いてきた。
リンドウの街も活気はあったが、やはり王都とは比べものにならない。
何気なく横へ視線を移すと、そこにはジークが立っていた。
彼を見たルカの口からは、思わずクスっと笑いが溢れる。
(ふふっ……まるで犬みたいね)
ジークは子供のように目を輝かせており、尻尾があれば千切れんばかりに振っていただろう。
子供のようにはしゃぐノアとジークを追いかける形で露店を巡り、気づけばもう昼頃。
露店で聞き込みをし、勧められた店へと入る。
「いらっしゃい! 空いてる席に座ってくださーい!」
店員の明るい声と笑顔で迎えられ、空いていた席へと座った。
悩みに悩んだ結果、ノアとジークはホーンブルのステーキ。
ユリアスはリーフバードのシチュー。
そしてルカはハールシィープのフロンクフルト。
その他パンやスープなどを頼み、しばらくすると次々と机に並べられていく。
「ふぉあああ……! すごいぞ! 口の中で肉が溶けるっ!」
「んま〰〰!」
「このシチュー、クリーミーなのにさっぱりしてて美味しいよ」
「これパンに挟んだら美味しいわ!」
「さすが王都の店! お城の料理は更に美味しいのかもな」
「更に美味しいもの……ジュル」
皆思い思いの感想を口にしながら、目の前からみるみる消えていった。
意外と沢山食べてしまったので、ユリアスがスイーツを食べるか皆に訊く。
「もちろんだぜ!」
「もちろんだよ!」
ノアとジークが食いつくように頷き、ルカやユリアスもまだお腹に余裕があったので向かうことになった。
(というか、この2人すごい仲良しね。同じかおで同じこと言ってる)
ルカは心の中で笑いながら、4人で人気店のケーキを堪能したのだった。
服屋に向かう途中、ジークがいきなり眉尻を下げながら言う。
「ルカ。申し訳ないんだが、服屋は2人で行ってくれ。俺とユリアスはちょっと用事があるんだ」
「は? 用事?」
「そうだよなっ、ユリアス!」
「う、うん。ちょっと用事がね…」
「てことで、ごめん! 2人で楽しんできてくれ!」
ジークはまくし立てると、2人は半ば強引にこの場を去っていった。
(あいつら…絶対逃げたわ……)
前にルカは買い物に付き合わせた際、夢中になりすぎて2人を3時間ほど連れ回したことがある。
その日は相当疲れたらしく、2人はぐったりとした様子で帰路についていた。
2人の手には大量の荷物がぶら下がっており、それはもちろんルカの手にもある。
だが、その量が違う。
そんなことがあったからか、ユリアスとジークは逃げるようにしてこの場を離脱したのだ。
(でもまぁ、本命のノアがいるから許してあげるわ)
ノアは逃げた2人を疑う素振りを見せず、ルカの後ろをついていく。
それから、ルカによるノアの
綺麗で端正なノアの
「ノア、これ着て。あとこれも。ああ、これ忘れてたわ」
「お客様にはこちらもお似合いになると思いますよ!」
途中から店員の女性も加わり、ノアに
次々と服を渡していく。
白いワンピースを着せれば、線の細い儚げな清楚女子に。
露出度控えめのドレスを着せても、女性らしい魅力が光る花のように美しかった。
町娘のような服を着せれば町一番の美少女になり、フリフリやリボンが多く付く服を着せればどこかの良家のご令嬢。
化粧もせずにこれだけ似合い美しいのだ。
ルカのテンションも天に達しそうになる。
「ルカ、そろそろ疲れてきたんだけど……」
「何言ってるのノア。まだ試してない服が沢山あるんだから!」
疲労を見せるノアに対し、ルカは笑顔で服を選び続けた。
そんなルカに観念したのか、ノアは運ばれてくる服に着替えていく。
「あなた、すごくキレイなの!」
知らない人の声が聞こえたが、ルカは店員かと思いスルーしようとした。
しかし、店員にしては高く幼い声。
疑問に思ったルカがその声のした方へ視線を移すと、そこには声通りの幼い少女が立っていた。
ふわふわな金髪は両側の高い位置で、紅いリボンによって結ばれている。
リボンと同じ色の丸く大きな瞳が特徴的だった。
服は動きやすいワンピースのようだが、質がいい上等なもので位の高さを表している。
その幼い顔には笑みが浮かんでいて、ノアに見惚れているようだった。
(この女の子……まさか貴族の令嬢?)
そう疑うルカだったが、ノアのときのように誤解だった場合相手に申し訳ない。
とりあえずルカは話しかけることを選んだ。
「私はルカって言うの。あなたのお名前は?」
「わたくしはアウローラ・フォン・アリシア。以後お見知り置きをなの」
綺麗な所作でお辞儀する幼女は、顔を上げるとニコッと笑みを浮かべた。
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