84.夜刻任務二日目!?
次の日も、日付けが変わる半刻前には寮を出て王宮へ。大陸の若干北寄りにある王都は夜中になると、かなり冷え込むから自然と早歩きになる。
こんな時、プレートアーマーだと寒さを感じない。だから、少しでも早く宿舎にたどり着きたいと思っていた、その時だった。
後ろから下品な声が、私たちを振り向かせることになったのだ。
「おうおう! こんな夜中に女がうろついてやがらぁ! これから夜の、お仕事かぁ!?」
「おいおい、よく見りゃお子ちゃままでいるじゃねぇか。そんなんでお仕事出来んのかよ、あぁん!?」
「馬鹿野郎、そんだけ生きるのに精一杯ってことだろうが。こんな子供が夜な夜な仕事をしなきゃならねぇなんてよぉ……泣けてくるじゃねぇか、なぁ」
はいはい出ました、出ましたよ。治安を乱す、よそ者冒険者。おそらく昨日は飲みすぎて、今朝の出立に間に合わなかったんでしょう。
だったらもう、お仕事が無いんだから、とっとと王都から出ていけばいいものなのに。わざわざこうして喧嘩を売りに来るなんて、冒険者って暇なんですかねぇ。
しかもですよ、しかもですよ! またまた見た目で判断ですかぁ? 昨日といい今日といい、嘆かわしいことこの上ない。
それに何ですか? 何なんですか? その可哀想な子設定は? 確かに王都に働きに来てますけど、うちはそれほどお金に困ってるわけではないですよ?
高収入な兵士職に着いたのも、家計のためじゃなくて自分の為。
だって私、現実主義。
いかに余生を面白おかしく且つ、そこそこの労働で楽に生活するかを考えながら、貯蓄をするのが趣味な女。今のところのはそれだけで、十分楽しめていますし、ね?
もうちょっと、人を見る目ってものを養って欲しいもんですわぁ。
「「…………プッ!」」
そんでもって、そこの先輩方っ! 笑いをこらえて、小刻みに震えてる暇があるんですかねぇ? 可愛い後輩のために、何とかしようと思わないんですかねぇ? 全く……
それじゃまぁ、そういうことで。
◇◆◇ヨッパライ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ボッコボコ◇◆◇
「……っていうことでさ、もう面倒くさくってね。しかもさ、二日連続だよ? ありえないなくない? 酔っ払いって、なんで見た目ばかりで判断しちゃうかなぁ? ホント、失礼しちゃうよね。……って、ねぇ聞いてる?」
「……あっ……あぁ。もっ……もちろん聞いているぞ……プッ!」
「お……おぉぉぉ! わ……私もぉ、聞いてたぞぉ。た……大変だったなぁ……プククッ!」
プレートアーマーに、香水を擦り付けながら愚痴る私。返事はするけど、昨日と同じで背中を向けて小刻みに震えるマリマリとカーニャ。
――笑ってない……よね? 親友のあり方、考えなくっていい……よね?
◇◆◇シンユウダヨネ◇◆◇◆◇◆◇ワタシタチ◇◆◇
またまた釈然としない中で着替えを済ませ、昨日と同じくピリカ(術部隊の)と共に、サリッシュ先輩の指示を仰ぎ、宿舎を出る。
寮を出た時に感じた夜刻の寒さも、プレートアーマーのおかげで問題なし。本当によく出来た鎧だと、感心するばかりな私達なのだった。
「ホントに不思議だよね、プレートアーマーって。さっきまであんなに冷え込んでたのに、今は全然寒くないもん。どんな造りになってるのかなぁ?」
「うむ、確かにな。私は、魔法鉱石で出来ていると言うことしか聞いていない。そもそも、鉱石の効果がどんなもか分からないが」
そんな話をしている私とマリマリを、不思議そうな表情で眺めてくる、カーニャとピリカ。それからだんだんと半目になっていき、最後にはため息を同時に吐かれてしまった。
すこぶる感じが悪い。
「うぅむぅ……困ったもんだぁ。そんなのはぁ、訓練期間中に聞いたはずだぞぉ。今さらぁ、疑問に思うとはなぁ。あぁ……嘆かわしいぃ、嘆かわしいぃ。同じぃ、王宮兵士と思われたくないぞぉ」
「あはは……私はそこまでは思わないっけどさぁ。二人とも、訓練期間に教えてもらったこと、忘れるのが早すぎっさぁね」
やれやれと、首を左右に振るカーニャの横で、呆れた口調で言ってくるピリカ。
――ふえっ? 知ってたよ? 私たちだって聞てたもん。ちょっと忘れてただけなんだから、ねっ?
声には出さず、視線をマリマリに向ける。だけど、マリマリは私から仮面を逸らすと、同時に下手くそな口笛を吹いてくる。
はぐらかし方が、とっても下手くそだった。
「おぉぉぉ! マリマリはぁ、嘘をつくのが苦手だからなぁ。まぁ、そういう正直なとこがなぁ、マリマリらしいと言うものだぁ。あははぁ」
「ホント、そうっさねぇ!」
――何だろう……ちょっとはぐらかしたマリマリだけが、好感度が上がるのは何故だろう……
とっても憤ってしまうんだけど。
ちなみになんだけど、鉱石に含まれる魔力を閉じ込めて製鉄する方法を開発し、それにより魔力を帯びた鉄が出来上がったとのこと。
その鉄で加工された鎧に、防御魔法を施したのがこのプレートアーマーで。その副産物として、暑さや寒さを遮断する機能が備わったらしい。
このような防具を、兵士ひとりひとりに与えてくれる国王様には感謝しかないし、おかげで任務にも精が出るというものだ。
◇◆◇コクオウサマ◇◆◇◆◇◆◇◆◇アリガトウ◇◆◇
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