81.ゴロツキ!?
――ほうほう、なるほどなるほど。
見た目ですかぁ、見た目だけで判断しちゃいますかぁ。いやぁ残念ざんねん。いい女って、見た目じゃ分かんないもんなんですけどねぇ。
それとも何ですか? 先輩方のけしからんお胸の出っ張りと、比べちゃいましたかねぇ?
いやいや、これは私の個性ですからねぇ、他人にとやかく言われる必要はないんですよねぇ。可愛いんですよ? 見せてあげませんけど。
あぁあぁ、そうですかそうですか。見てくれだけで判断するんですか。ホント、男の人って浅ましくって情けないですねぇ。
この内面から滲み出てくる、私の女性らしさが分からないとは……嘆かわしいなげかわしい。
いや、そこ! 先輩方! 可愛い後輩がこうも言われてるんですよ? 何とも思わないんですか?
二人して大笑いする前に、やることがあるんじゃないんですかねぇ……全く。
◇◆◇ゴロツキ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ボッコボコ◇◆◇
その後の展開は、面倒くさいから省きますけど、しっかりチャッカリすっきりバッチリ叩きのめしてやりました。
えぇえぇ、それはもう完膚なきまでにですね。完全に白目を剥いちゃってるし、鼻血は出てるし。ついでに肩の関節が外れ、両腕の長さが左右で違ってるのもいるし。
――手加減? してませんよ? そんなの。だって、自業自得だもん、ね?
ボロボロになったゴロツキ三人を、路上に放置するのも衛生上良くないから、両足を掴み引きずって移動。王宮前の衛兵詰所に引き渡す。
恐らく、厳しい罰を受けて王都から永久追放されるんだろうけど、はっきり言って興味も無ければどうでもいい。
と言うより、二度と見たくないし。
まっ、これからは人を見た目で判断しないようにすることですね。それと、女性に声をかける時は優しくしましょう。これ、教訓にしておいて下さいな。
◇◆◇ツイホウ◇◆◇◆◇◆◇ゴシュウショウサマ◇◆◇
「……って事があってさ。信じらんないよね、ホント」
「「…………プッ!」」
「人を見た目でお子様認定するなんてさ、失礼にもほどがあると思わない?」
「「…………クプッ!」」
「ふえっ? 聞いてる、二人共? どう思う?」
「あぁ……そっ、そうだな。しっ……失礼だと思うぞ……ププッ!」
「だ、だなぁ。ヒヨリがぁ、怒るのも当然だぁ……クププッ!」
更衣室で、プレートアーマーを装着しながら、さっきの出来事をグチる私。歯切れの悪い二人に視線を向けると、こちらに背中を向けて小刻みに震えている不思議?
――調子でも、悪いのかな?
今日から三日間の夜刻任務が始まるんだから、ちゃんと体調を整えとかないとダメなんじゃない?
そんなにお腹押さえちゃって、鎧を全部装着する前に、おトイレに行った方がいいんじゃないのかな? 鎧姿になって、腹痛の波が押し寄せてきたら厄介だしね。
ただ、何となく笑ってるような感じがするけど、きっと気のせい。だって私たち、同期で親友だもん。涙が滲み出るほど笑ったりしなもんね? ねっ?
釈然としないなか、着替えを終えて宿舎の外に出る私たち。ふと、宮殿の方を見ると、日付けの変わりそうな時間にも関わらず、人の出入りが激しく感じるように見えた。
「何だか、宮殿の方が騒がしいね。何かあったのかなぁ?」
「あぁ、そうだな。夕刻から南の湖に討伐隊が向かうはずだったが、物資の調達が遅れて出発が出来ないと言ってたな。それと関係があるのだろうか?」
「だなぁ。川の向こうでぇ、東の領地からの物資を乗せた荷パ車がなぁ、モンスターに襲われたらしいぞぉ。そのせいでぇ、討伐隊の出発がなぁ、明日の朝刻に延期になったそうだぁ」
「ふえっ? そうなの? 大変だったんだね……って、そんなことよく知ってるね? カーニャ」
「そういえば、更衣室に来る前に姿が見えなかったが、それと何か関係があるのか?」
「ふっふっふぅ。その筋のぉ、人間に聞いたんだぞぉ。詳細はぁ、秘密だぁ。あははぁ」
何だか、意味深な態度に拍車をかけてくるカーニャ。どうしても、謎多き女のイメージを定着させたいのかもしれない。
――微妙なお年頃だから……かな?
着替えを済ませ、早急に宮殿の入り口へ。物資の搬入の手伝いを済ませた後、いよいよ夜刻の任務の始まるのだった。
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