74.開戦です!?

「サーナンダー王国王宮戦士、並びに領地戦士に栄光あれっ!突撃ぃぃぃっっっ!!!」

「「「「「おぉぉぉっ!!!」」」」」

「「「「「おぉぉぉっ!!!」」」」」

「「「「「はいっ!!!」」」」」

「「「「「はいっ!!!」」」」」


 コスドーリア王国、王宮騎士団ミンナ副団長の号令を受け、王宮からの魔王軍討伐部隊と北の領地所属の戦士が、魔王軍に向けて、一斉に突撃。新たに新設された、魔法鉱石採掘場の手前で、魔王軍との戦いの口火が切られたのだった。


 ただ、ミンナ副団長の剣をかざす仕草が麗しすぎるし、号令さえも耳心地が良すぎ。まるで劇場での戦闘の一幕を観ているようで、緊張感を保つのに苦労したのは、私だけでは無いはずだ。


 一瞬、私と同じで出遅れた人がいたし……見惚れていたのかなって、思ってしまうし。


 相手は確か、”魔王軍四天王のひとりの、四人の側近の中のひとりに使える、十二人の中のひとりの、そのまた部下のひとりのリーダー"が、編成する部隊なのだとか。


 ――ややこしすぎて、どうでもいい。



 ◇◆◇ハッキリイッテ◇◆◇◆◇◆◇ワカリズライ◇◆◇



 颯爽と、飛び出して行ったのは勇者様。黒いパカパカに跨り、先陣を切るお背中は頼もしくって、とってもステキだった。そんな勇者様と、お話させて頂けて、とっても光栄だ。


 ――もちろん、誰にも言ってないけどね。


 その勇者様に追いつくのが、真っ白に輝くアンネロッテに跨るミンナ副団長。騎士剣を高々と掲げ、マントを大きく翻すお姿は、物語に出てくる戦いの女神様そのものの様で。


 釘付けにならないよう、視線をアンネロッテが巻き上げる雪に向けながら走るのが、コツとなる。


 オークやゴブリンには目もくれず、骸骨兵士を飛び越えながら駆け巡る勇者様とミンナ副団長。あっという間に、魔獣の群れに飛び込んで行った。


 その後ろに続くのが、黒や茶色のパカパカに跨る、王宮騎士団。二人を追うように、扇状に広がりながら、こちらもオークやゴブリンには目もくれず、骸骨兵士に斬りかかって行く。


 完全な役割分担が、出来ていたのだ。


 そして、こちらに駆けてくるオークやゴブリンは兵士がお相手。今回は拳部隊や術部隊や剣部隊を交え、男女混合の小隊をいくつも編成して迎え撃つことに。


 これもまた、ひとつの出会いと言えなくも無いのどけど。


 とは言え、お話をする暇なんて、どこにもない。なんせ、命懸けの攻防戦が幕を開けたのだから、喋っている暇はどこにもなかったのだ。


 ちなみに、北の領地所属の戦士は鉱山を守るために、最終防衛ラインで待機をしている状態で。


 戦力の温存もあるけど、常に北の領地で戦う騎士団や兵士だから、怪我をして戦力を減らすわけにはいかないとのことらしい。



「はぁぁぁっ……うりゃぁっ! たぁっ! おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃぁぁぁっ!!!」

「グローリー・マグナムッ! ハリケーン・ストラッシュ! うぉぉぉっ……グランド・ソード・アタァァァクッ!!!」

「きぇぇぇっ! えりゃ! うりゃ! はりゃ! ほりゃ! うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃぁっ!!!」


 激戦です。毎度お見せできないのは残念だけど、各地でかなりの死闘が繰り広げられていた。数的には魔王軍有利なのだけど、こちらは連携を高めて立ち向かう。


 とは言え、戦いは瞬く間に王宮兵士に傾き、オークやゴブリンは早々に全滅。残りの骸骨兵士を、騎士様と連携しながら次々に倒していくことに。


 もちろん、王宮戦士は誰一人としてやられていなかった。


「魔王軍ってさ、こんなに弱いのかなぁ? 手応え無さすぎじゃない?」

「うむ、確かにな。連携も何も無く、ただ突撃するだけでは、軍隊として成り立っているのかも疑問だ」

「だなぁ。これではぁ、何の指示も受けてないようなものだぁ。こんなのでぇ、王宮戦士を相手に勝てるわけがないだろぉ」


 後から聞いた話。


 どうやらミンナ副団長が魔獣に飛び込む時に、”魔王軍四天王のひとりの、四人の側近の中のひとりに使える、十二人の中のひとりの、そのまた部下のひとりで部隊を編成した"リーダー"を、アンネロッテで踏み潰してしまったと。


 結局、指揮官がやられた魔王軍は統率も取れずにやられていったらしい。元より、頭の悪いオークやゴブリンが言うことを聞くとは思えないんだけど。



『アルティメット・メテオ・ストレイバ━━━━━━━ッッッ!!!』



 勇者様の一撃で、炸裂する魔獣の群れ。ボトボトと、辺りに破片を飛び散らせていった。その中を悠然と立ち尽くす勇者様の勇姿は、カッコよくってステキです。


 でも、今は近寄りたくないかなぁ……と言うより、とても近寄れない。あの光景が気持ち悪すぎて。


 ――だって、勇者様の足元には、グロテスクな魔獣の破片がたくさん落ちているんだもん。


 乙女心、分かってください。


 ◇◆◇グロキライ◇◆◇◆◇◆◇◆◇オトメダモン◇◆◇

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る