6.モンスター襲来!

 唐突ですが、このコスドーリア王国は、モンスターや魔王軍の驚異に晒されている。


 コスドーリア王国は、"魔法鉱石"という天然鉱石の、世界一の産出国。


 魔法鉱石とは、燃焼すれば熱源や光源として、生活に欠かせないエネルギー源だし、溶かして生成すれば、魔力を帯びた鋼材が作れるのだ。


 そのおかげでコスドーリア王国は、世界最大の経済大国となっている。


 さらに、数年前からは西の領地と南の領地で、より良質な魔法鉱石が採掘されるようになったみたい。その魔法鉱石を狙って、モンスターや魔王軍が襲来しているのだ。


「あぁ、そうだな。前まではモンスターだけだったのが、最近は父親が働く鉱山でも、魔王軍が現れると言っていたぞ」

「うぅむぅ……私ん家からはぁ、鉱山は遠いけどなぁ。やっぱりぃ、心配だぞぉ」


 と、西の領地出身の二人も、心配そうに話をしている。


 そのモンスターや魔王軍に対抗するために、王宮所属の魔法師団が百日かけて完成させた魔法陣で昨日、”勇者召喚の儀”が宮殿で執り行われたとのこと。


 一年の中で、最も魔力の高まると言われる本日の夜刻に合わせ、昨日の夕刻から始まった儀式は、日付が変わる頃には最高潮に達したそうだ。



 そうして勇者召喚の儀は大成功を収め、この世界に勇者様がやってきたのだった。

 


 ◇◆◇ヒルコクデス◇◆◇◆◇◆◇ゴハンチウ◇◆◇



「勇者様かぁ……どんな人なんだろうね?」

「うむ、そうだな。"勇者"と言うくらいだから、屈強で筋肉ムキムキだったらいいのだが」

「おぉぉぉ。マリマリの好みはぁ、ムキムキかぁ。それではなぁ、頭までムキムキだったらどうするのだぁ? あははぁ」


「いや、とりあえずムキムキなら何とかなるだろう」

「「おぉぅ……」」


 マリマリの事が、チョッピリ心配になってしまった瞬間だった。


 ――私は、ムキムキはちょっと苦手だな。なんか、暑苦しいし……ね?



 そんな話をしながら昼刻食を済ませ、少し早いけど持ち場に三人で移動。衛兵先輩に、先に向かうと言付け、正門から王都の外に。


 城壁沿いを西に進み、持ち場近くの田園地区で、農家のおじさんやおばさんと談笑した。


 ――ふえっ? サボってる訳ではありませんよ? だってまだ、昼刻の任務は始まってないもん。


 それに、これも王都民を守る者としての交流の一環。決して収穫したてのお野菜の、おすそ分けが目当てではない。



 採ったばかりのお野菜や、重そうな肥料を持ち運ぶお手伝いをしていた時だった。私達を呼ぶ大きな声が、後方から聞こえてきたのだ。


「ヒヨリ! マリマリ! カーニャ! 集合しろっ!」


 そう叫ぶのは、サリッシュ先輩。


 私達が所属する、"つるぎ部十七番隊"の隊長さん。マリマリよりも背が高く、プレートアーマーで見えないけど、メリハリのある身体に腰まで伸びたサラサラな髪が目を引く、超がつくほどの美人な先輩だ。


 今年が三年目で、来季は騎士団入団を希望していると、昨日の初任務前の自己紹介で言っていた。そんな隊長が十七番隊の面々を引き連れ、慌てた様子でやって来たのだ。


 表情は仮面で見えないけど、その口調から緊張感がひしひしと伝わっくる。つまり、緊急事態のようだ。


「この先にある大河の対岸で、モンスターの群れが現れたとの情報が入った。これより討伐に向かう。行くぞっ!」


 そう言われた後で、三十人の兵士が足早に移動すること暫し。田園地区の先にある大河の対岸で、魔法鉱石を積んだ"荷パ車"がモンスターの群れに、襲われているのが見えてきた。


 "荷パ車"のことは、いずれまた説明します。


 その後ろで、雇われたであろう冒険者が戦っているけど、多勢に無勢の様で徐々に囲まれていく。それ以外のモンスターが、荷台を激しく揺らしていた。


「人命最優先だっ! 一年兵は手前のモンスターを、二年兵と三年兵は私に続け! 王宮戦士、”つるぎ十七番隊”! 突撃ぃぃぃっ!!!」


「「「「「はいっっっ!!!」」」」」

「「「「「はいっっっ!!!」」」」」

「「「「「はいっっっ!!!」」」」」


 大河に架かる橋を越え、私たち一年兵十人は、荷台の手前で冒険者達が戦うモンスターへ。先輩達は裏側に回り込み、激しい戦闘が開始されたのだった。

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