第11話 ストレス解消
「おぉ、アキじゃん。」
「よぉヤギ。久しぶりだな、このロリコン野郎」
「お前声出せて、っていうか。そんなこと思ってたんのか…」
「そりゃああんな性格してればなぁ。
それはともかく大ピンチじゃねえか。」
「マジでそう。助けてくれるか。」
「勿論。本当はこの墓に近づくなって言いたかったんだけどな。
私は記憶がなかったから、うまく伝えられなかったんだよ。すまんなヤギ。」
これが記憶の戻ったアキなんだろう。
「今回は喋れんのね。」
「お前の小指を貰ってるからな。
残念だったなヤギ。お前の能力は最弱だぞ。
なんせ自分の身体を溶かさないと発動出来んからな。」
「確かに最悪だ。まあとりあえず目の前のあいつ潰そうか。」
「ノナに化けて俺を騙すなんて小細工しやがった変態には制裁が必要だろ。」
「だな。」
アキは前に手をかざして、霊的な何かで攻撃するのかと思いきや、ポケットからメリケンサックを取り出して、直に幽霊を殴り始めた。
出会った頃に俺が殴られたやつだな。
右、左、右、左…
交互に殴りまくって、相手の刃物なんて知りませんと言わんばかりに殴る。
「私さぁ、ショッピングモールでこいつに殺されてたんだよな。
こんな雑魚にやられるなんて、記憶ってのは大事なんだなヤギ。」
「当たり前だ。
人間記憶が1番大事だ。
ゲームのセーブデータみたいなもんだからな。」
縦横無尽にアキは殴りまくる。
相手が後ろに倒れる瞬間に腹に足蹴りを一発入れて、見事に吹っ飛ばす。
「そういや、これも俺食らってたな。」
「攻撃の仕方だけは忘れてなかったんだよ。」
「もっとも、こいつには背後からやられたから。殆ど為す術無しだったんだけどな。」
吹っ飛んだそいつをポルターガイストで手前に持ってきて、そいつが死ぬまでサンドバッグにしていた。
「殴る。また殴る。幽霊だって元は人間だ。ムカついたら殴るんだよ。」
「いや、人間は法があるから殴らないけどな。」
「法なんていざって時には役立たずだ。やんなきゃいけない時ってのはあるもんだろ。」
「一理あるのか。俺には分からん。」
まあ別にいいさ。
それより、ヤギお前も殴るか?」
「俺は平和主義だぞ。」
「そうか。お前はそういうやつだったな。じゃあ少し待ってろ。私が…」
「だから、平和のためなら悪は蹴散らさないとな。」
「おぉー、そうくるか。いいぞ。思いっきりやっちまえ。」
「あぁ。俺もそいつには世話になったからな。」
そう言って、顔面に一発入れてやった。
俺のボロボロの腕はどれだけのダメージを与えられたのだろうか。
きっとロクな攻撃にはならなかったはずだ。
でも、すでに顔面がどうかすら分からなくなっているそいつを殴った気分は最高だった。
ざまあみやがれ。
「でもこれ、反動が痛すぎて、もう無理だわ。」
「貧弱だな。」
「戦闘はお前の担当だよアキ」
「だな。任せろ」
そう言って、アキは幽霊ごとこの部屋をぶち壊した。
壁に入った亀裂はそれはもう見事で、ストレス解消にはもってこいだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます