第33話 ピンクの煙ってなんか興奮する

 

 月宮先生をエロ部の顧問に……?


 突然の浅上の発言に俺は呆気にとられた。


「いやいやいや、無理だろ。あんな下ネタとかエロとか無縁な人にエロ部の顧問なんて……」


「あんたばかぁ?」


 実は罵声を言ってほしい女子ナンバーワンの浅上の罵声を受ける。


「堂々と本当のこと言って誘うわけないじゃない! 江戸のことを勉強している文化部ですと伝えれば問題はないわ、それに相手は新任でどの部活の顧問でもないしね」


「いやしかし、月宮先生は化学の先生だぞ。その反対とも言える江戸浪漫の部活を受け持ってくれるわけがない」


「なら部活を"江戸ロストテクノロジー研究部"、通称エロ部に変更しましょう」


 なんだよ、江戸ロストテクノロジーって!!

 こいつ意外と厨二病なのか?


「そんな、無茶苦茶な〜〜」


「それにね、松原くん……」


 浅上が月宮先生の方をじっと見ながら呟く。


「ああいう、天然っぽい女ほど中身は相当エロいんだよ」


「は?」


 知った風に話す浅上だが、にわかには信じられない。


 あんな美人で天然な人が……すけべなのか?

 もしそうなら死ぬほど興奮するけど……。


 頭を抱えながら月宮先生を見つめた。


「それじゃあ頼むわね〜〜松原くん、絶対あの先生を堕としてきてね〜〜さもないと……」


 すると、急に浅上が顔を近づけ、そして


「みんなに松原くんに襲われたって言ってあの動画ばら撒くから」


 そう俺に耳打ちし、ニコニコしながら浅上は自分の席に戻っていった。


 悪魔め……。

 俺に拒否権はない。

 やるしかないのか……。


 放課後。


 本日最後の授業が終わり、それぞれみんな、部活に向かおうとする。すると、


「ねぇ、月宮先生に天文学部の顧問になったもらおうよ」


「いいね! 早速頼みに行こう!」


 近くにいたクラスの女子の声が聞こえた。

 まずい! 月宮先生を先に取られてしまう。

 

 俺は急いで教室を出て、理科室へ向かった。


 化学の先生なら理科室にいるだろう。

 

 しかし……。


「あれ?」


 理科室には誰もいなかった。

 やはり職員室だったか。まずいな、このままだと天文学ガール達に先を越されてしまう。

 急いで職員室に行こうとすると———。


 ボン!!


 小さな爆発音が聞こえた。

 その音は理科室の隣の理科準備室から聞こえた。


 何事だろう。変な実験でもしてるのか?

 

 気になり俺は理科準備室の扉を開けた。


 その瞬間、ピンク色の煙が全身を包む。 


「な、なんだこれ!」


 驚愕していると、目の前から、


「ドア閉めて!」


 と誰かの声が聞こえた。

 その声に無意識に反応し、俺はドアを閉めた。


「ゴホッ ゴホッ!」


 しかし、なんだこの煙は。まるでドライアイスの煙のようだ。有毒っぽくもないけど……。

 見えないけど、目の前にいる人物が、窓を開けて煙を外へと逃がしていく。

 一体誰が? 

 というかこの煙どこかで見た気が……。


 煙の先を見据えていると、そこには……


「ケホッケホッ……ご、ごめんなさい。大丈夫ですか?」


「月宮先生!!」


 月宮先生の姿があった。


「あ、えと松原くん? だよね?」


 名前を覚えてくれている。

 すごく嬉しい。

 んなことよりも。


「先生なんすか? この煙は?」


「ちょっと実験しててね。ドアを閉めてもらわなかったら今頃ボヤ騒ぎになっていたよ、ハハ」


 笑い事じゃない気もするが……。

 

「でも、なんの実験してたんですか……ん!!」


 体の一部全体が猛烈に熱くなる。

 な、なんだこの感覚……。

 いや俺はこの感覚を知っている!

 以前にも同じ感覚を俺は味わっている!


 まさかこの煙……!!


「吸っちゃった? 吸っちゃったよね?」


 困り顔で月宮先生が聞いてくる。

 その視線の先は俺の顔ではなく……俺の下半身を向いていた。


 そして俺の下半身は……。


 月宮先生へと向いていた……!!


 あ、あの時と一緒!!!

 まさかこれ!!!


「媚薬……ですか?」


 そう聞くと月宮先生はにっこりと笑みで返した。


 浅上の言う通りだった。


 この教師……変態かもしれない!!!

 

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