第32話 天然教師はエロい


朝のホームルーム。

担任ではなく見知らぬ人が入ってきた。

年齢は20代後半、ルーズサイドテールの綺麗な女性……。

なんだろう。ものすごく、バブみを感じる……。

 

 その女性はみんなの前でニコッと微笑み、黒板に自分の名前を書き始める。


"月宮 マリナ"


「育休に入った朝倉先生に代わって今日から新しくこのクラスの担任になった月宮マリナです。担当科目は化学です。教師になって初めてクラスを持つので至らぬ点がたくさんあるかと思いますが、今日からよろしくお願いします」


 月宮先生……。

 クラスがざわつき始まる。特に男子。 

 美人な先生を前にテンションが上がっていく。

 女子も女子で比較的、歳の近い先生に興味津々だった。


「先生、恋人はいますか???」


 クラスのお調子者である佐々木が、定番な質問する。

 しかし、月宮先生は再びニコッと微笑み、


「いませんよ」


 と答えた。


 クラスの男子のテンションが上がる。

 

「好きなタイプはなんですか?」


 次に早漏王、橋本くんが質問する。

 

「うーん、ピュアで面白い人かな」


 包み隠さず答える。

 さらにクラスが盛り上がり始める。


「デートに行くならどこがいいですか?」


 次に、前のめりのタチ花が質問する。


「ゆっくりできる場所かな」


 男子のボルテージは最高潮に。

 なんなんだこれ? 

 しかし、その気持ちも理解できてしまう。


「それじゃあ、質問コーナーはまたにして朝のホームルームしましょうか〜えーと」


 出席簿?を見て月宮先生が言う。


「C班の安藤さん!」


「先生、それ出席簿じゃなくて、回覧板じゃ……」


 教卓の前の生徒が言う。

 目を凝らしてみると確かに回覧板と書かれていた。


「あ、間違えて持ってきちゃった……へへ」


 頬を赤くして照れる。

 その瞬間、男子たちの胸の高鳴りは限界を突破した。


"何この先生可愛い"


 クラスのほとんどがそう思った。 

 もちろんこの俺も……。

 それほどにこの先生は男子高校生の好みドストライクなのだ。

 年上、清楚、天然。男子高校生の三大タイプを全て網羅している。

 好きにならないわけがない。

 

 その後も月宮先生の天然と純粋な笑みに心を奪われながらホームルーム、さらにそのまま化学の授業を行った。

 一限目化学といういつもなら萎えるもんだが、この日に限ってはバチクソにバイブスが上がった。


 そしてその日の昼休み。


「ようやく飯だぜ!」


 弁当を机の上に出す。

 いつもなら古倉庫で食べているが、月宮先生が教室で一緒にご飯を食べると聞き、俺も教室で食べることにした。

 もう月宮先生の虜になっていたのだ。俺だけではなくクラスの男子全員が。

 

 ひっそり月宮先生を見ながら優雅なランチを取ろうとすると、無粋な存在が机の前に立ち、俺の視界を塞ぐ。


「なーに、ずっと鼻の下いや、股の下伸ばしてるの?」


そう浅上である。

浅上が俺にしか聞こえない声で言う。


「昼からやめてもらっていいすか?」


「そんな遠くからニヤニヤと変質者のように見つめて……きっしょ」


 あの悪口とか言わない女子ナンバーワンである浅上が蔑んだ目で俺に言う。

 周りをキョロキョロ見て浅上の本性をみんなにアピールするが、周りは月宮先生を囲んでいてそれどころではなかった。


「そんな悪口言うために俺に話しかけたのかよ、ほっとけよ」


「ふふふ、そんなじゃないわよ。促しにきたのよ」


「促す?」


 頭を傾げると、浅上は月宮先生とは真逆の不気味な笑みを浮かべて、


「あの月宮先生にエロ部の顧問になってもらいましょう!!」


 そう勢いよく告げた。

 

「は?」


 この女……何考えている……?


 

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