第31話 くっころ!


「はぁ〜〜〜」


 ある日の朝、教室で俺は大きな溜息をついた。


 その理由は十中八九、浅上 凛花だ……。


 浅上によって作られたエロ部。

 

 部の設立に向けて顧問探しをしているが、一向に見つからなかった。

 というかそもそも探していなかった。


 毎日毎日、古倉庫で俺達はくだらない猥談をしていて、顧問探しどころか、江戸の文学についても学んでいなかった。


 俺の中ではもう部にしなくてもこうして駄弁る感じで時間を潰せればそれでいいと思っていた。

 しかし、昨日——。


……………………


「まずいことになった!」


 古倉庫に入ると浅上が珍しく神妙な面持ちで有川さんに話していた。


「凛花ちゃん……もう、いいんじゃないかな、こうして話すだけなら家とかでもいいじゃん」


「何言ってるのオナルちゃん! 部として活動するからこそ意味があるんじゃない!? オ◯ニーと一緒、家でやるよりも家以外でやった方が興奮するじゃない?」


「意味がわからないよ……」


「なんの話してんだよ?」


 俺が介入すると、浅上が鋭い目つきを俺に向ける。


「大ピンチよ、松原くん」


「だから何がだよ」


「違う部活がこの古倉庫を部室として使いたいとお達しあったの……」


 有川さんが言う。

 な、なんだって……。

 

「くっ! 私達はまだ正式に部として認められてないから、このままだと受け渡すしかないわけ」


「そうか、ま、仕方なくね?」


 そう軽く言うと浅上は勢いよく俺に迫ってきた。


「何言ってるの?」


「こわ、近っ! いやだって、こんな猥談ばかりしている、部活が部として認められるわけないだろ」


「そんなもん、知るか! そもそもここを縄張りとして決めたのは私達が最初でしょ!」


 私達というか俺なのだが……。


「しかし、生徒会が言うんじゃしゃーねぇーよ」


「本気で言ってるの?」


 怖い目線で俺を言い詰める。

 なんなんだよ、もう決まったことなら仕方ないし、それに古倉庫が使えなくてもこの学校には俺の秘密基地はいくらでもある。

 階段下の第三用具室、壇上の下の地下室などなどいくらでも俺のプライベート空間は確保できるしな。 


「松原くん……もし、エロ部ができなかったらこの前撮ったこの動画をみんなに見せるから」


「は?」


 そう言い浅上は俺にスマホで動画を見せる。

 そこには俺が大人のおもちゃを浅上に向けている光景があった。

 

「この前のやつ……動画撮ってたのか!?」


「これを見たらみんなどう思うかな?」


 悪魔の笑み。

 こんなん見られたら俺の学校生活、いや、人生が終わる!!

 この悪魔め……。

 

「くっころ!! 俺に……どうしろと……」


「ふふ、松原くんは私に逆らえないのよ」


 いつか痛い目見せてやりたい。

 そう、拳を握っていると浅上は、


「松原くん! 顧問の先生を探してきなさい!」


 と指令を出す。


「顧問の先生!?」


「エロ部を部として認めてもらうことができれば、この古倉庫を開け渡さなくても済む!」


 顧問の先生って……。ここにきてようやく探すことになるのか。

 しかし……。


「無理だろ、いるわけないだろ」


「無理なら仕方ない、この動画をクラスLINEに……」


「やらせていただきます!」


………………………

 こうして俺は顧問を探す羽目になってしまった——。


 なってしまったのだが……。


 いない。


 誰もいない。


 というかそもそも、言えないだろ……エロについて話す部活の顧問になってくださいなんて……。


「はぁ……」


 再び、溜息をした。


 どうしたらいい。

 

 そう考えていると……。


「初めまして〜〜〜」


 色っぽい声が聞こえた。


 

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