第29話 ナニをしよう


「は…………?」


 今こいつ何を教えると言った?

 女の子の……ナニ?


 呆然と突っ立っている俺に浅上は手招きする。それに釣られる形で俺は浅上の前へ立った。


「今から松原くんに教えてあげる。私が普段どうやってるか」


「だから何を?」


「ナニをよ」


「何って何だよ!」


「ナニはナニよ」


「は?……」


 本気でやるつもりなのか……。


 俺が口を閉じると浅上は右手に持っていたディ○ドを自分の……その……スカートの中に入れようとした。


「待てぇーーーい!!!」


 俺は大声で止めた。


「うわ、急に大声出さないでよ、手元、狂うじゃない!?」


「え、お前ガチ?」


「何が?」


 さっきからお互い意思疎通ができない。

 わざとなのか、それとも天然なのか?


「本気でやるつもりかよ」


「うん」


「何でだよ」


「だって、松原くん見たいんでしょ、女の子がやってるところ?」


 悪戯な笑みで言う。

 咄嗟に誤魔化そうと、


「は、は、ち、ちげぇーし!」


 テンプレ的な言葉を言ってしまった。


「ふーん、そうなんだ〜〜にしてはさっき、ジャ○プを貫くほど凝視してたよね〜〜」  


「あれはその、お前が本気で有川さんと淫らなことしないか見張っていただけだ」


「そっか、そっか。ここでオ○ニーするのはそんなにダメなの?」


「ダメに決まってる!! モラルを考えろ!」


「ふふ、わかったよ、松原くんがそこまで言うならしないよ」


「そ、そうか」


 ひとまず安心した。

 しかし、安堵する俺の気持ちとは裏腹に少しがっかりしている俺もいた。


 まあでも、これでよかったんだ。

 確かに女性がやっていることは気になるが、それをリアルで見たら夢が崩れる気がする。

 夢は夢のままの方がいい時はある。

 可愛いと思っていたVtuberの中の人が男だったように。

 好きだったアイドルが大手社長と付き合っていたように。

 美人だと思った人が友達の母親だったように……あ、いやそれはアリだな。

 ってんなこと考えてる場合じゃない。

 さあ、興奮した気持ちを消化するために早く家に帰ろう。


 そう思い、帰ろうとしたその時、


「だけど、ナルちゃんを責めていた胸の高まりがまだ残っているんだよね」


 突然、浅上が呟く。

 一体何を? 

 振り返ると浅上は頬を赤らめてモジモジしていた。


「え……」


 照れたら絶対可愛いと思う女子ナンバーワンの浅上が俺の前で本格的にしおらしく照れている。

 思わず見惚れてしまう。


「松原くん……体が疼いちゃうの///」


 ゴクリ……。

 しおらしいと共に卑しくも見えた。


「そ、それってお前どういう——」


 俺が聞く前に浅上は手に持っていたおもちゃを俺に手渡し、そして……。


「1人でするのがダメなら……松原くんに私の疼きを止めてほしいの……」


 と普段とは違う甘えた声で俺に言った。


 こ、これは………? 


 もはや自慰行為ではなく、


 ただの………。


 ただの…………………。


 "協力プレイ"じゃないか!!!

 

 

 


 

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