第28話 思春期特有のアレ


何物にも抑止力というものが存在する。


腹八分目という言葉があるように、欲求を100%満たされないように人の欲はできている。


食欲は満腹になったら消えるし、物欲は手に入れたらなくなるし、睡眠欲は寝たら消える。


性欲もそうだ。


100%、性欲で支配されて生きていたら、世の中エロ漫画になってしまう。それに少子化という問題は出てこないだろう。


誰だって経験はあると思う。

階段で上を歩いている女子がいて、その子のパンツが見えそうになった時、自然と視線を外す"アレ"。

本心では女子の生パンツ見たいと思っているのに、何だか見てはいけないと体と心が判断して拒絶してしまう。


他にもあるだろう。

プールの授業、女子の水着を直視できない。

前の席にいる女子の透けブラを直視できない。

ポニーテールの女子のうなじを直視できない。

巨乳の女子or女教師の谷間を直視できない。

スカート短い女子の生足を直視できない。


などなど……。


見たいという意思とは裏腹に発動する抑止力。

思春期特有の"アレ"だ。

※アレというワードに深い意味はない。言語化できない為。


今まさに俺の中でアレが発動しようとしていた。

可愛い女子が目の前で淫らな行為を行っているにも関わらず、それを止めようとしてる自分がいる。

見たいけど、でもこれ以上は見てられない!!

だって……あまりにも刺激が強くて……。


耐えられないからだ!!!


「待ってくれ!!!」


 俺の声は先程よりも大きく響く。

 2人は同時に俺の方へ振り向いた。


「ま、松原……くん?」


「ちょっと〜〜せっかく良いところだったのに何で止めるのよ〜〜」


 浅上が細い目で俺を見る。

 

「いや、だって……流石にこれは……いたたまれないだろ」


「くっ、これだからチェリーボーイは……!」


「え、も、もしかして……見てたの?」


 有川さんが恐る恐る俺に尋ねる。

 それに対し俺は、


「見てた」


 はっきり答えた。


「ど、どこから……?」


「全部」


「う、うそ……」


「ほんと」


「私の変な声も……聞いたの?」


「ああ、すごかった」


「うう……」


 包み隠さず答えた。すると有川さんの顔が一気に赤くなり、そして……。


「いやぁぁぁぁぁぁ!!」


 悲鳴をあげながら、勢いよく外へ出ていった。


「有川さーーーーーん!!!」


 呼んだが見向きもせず、俺から離れていった。


「あーあ。ナルちゃん、ノーパンでどっかいっちゃった」


「え、ノーパン!?」


 確かにカバンとパンツが置きっぱなしだった。

 ノーパンってなかなかやばいな。

 気づいて戻ってくればよいが……。


「それにしても、せっかく良いところだったのに、なんで水差すかな?」


 浅上が急に詰めてくる。それはそうか、奴のお楽しみを邪魔したんだから。しかし、


「あれは流石にアウトだろ」


「ふーん、そんなこと言って漫画読むフリしてバリバリ見てたくせに」


「ギクッ!」


 思わず古いリアクションをとってしまった。

 こいつ、気づいていたのか。


「この不完全燃焼感どうするのよ、もぉ〜〜」


「どうするってしらねぇーよ。そんなにしたかったのなら、自分ですればいいんじゃねぇーか。そもそも自分でするもんなんだしよ」


 ぐちぐち言う浅上に背を向けて皮肉を口にした。

 そう、皮肉を言ったはずだった……。


「そうだね、わかった、そうしよう」


「え?」


 今こいつ、なんて言った?


 思わず振り向くとそこには……。


 マットに寝転び、ディ○ドを手に持つ淫らな姿の浅上がいた。


「浅上さん? なにを……?」


「本当はナルちゃんに教えるつもりだったけど……代わりに松原くんに教えてあげる」


 教えるってなにを?

 戸惑う俺に浅上は卑しい笑みを浮かべて告げた。


「女の子のオ○ニーを!」


 


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