第25話 自慰行為の別称多くね?

 ラブコメのヒロインにしたい女子ナンバーワンである浅上 凛花。

 容姿端麗、誰もが目を奪われてく完璧で究極な美少女である彼女はなんと学校一の変態女だった。

 そんな彼女に弱みを握られた俺は"江戸浪漫研究部"通称"エロ部"を設立する羽目になった。

 エロに耐性のない、浅上の親友、有川 成美も無理矢理加えて部活設立に必要な部員は揃い、あとは顧問を見つけるだけになった。


 しかし———。


「ねぇ、松原くん、この世で一番エロいものって何だと思う?」


 放課後、部室(仮)である学校裏の古い倉庫で浅上が突然俺に尋ねた。 

 

 そう、俺達は顧問集めをせず、毎日毎日、古倉庫でダラダラとたむろしていた。


「何だよ、急に」


「そもそもエロって何だろうって思っちゃってさ、裸体ことそがエロなのか、それとも交尾こそがエロなのか。いや、そういう次元よりもっと上にあるものがエロなのかなって」


 エロ漫画雑誌を片手にこいつは何を言っているんだ?


「お前、エロという概念、ゲシュタルト崩壊してないか?」


「うーん。かもしれない。最近、何だか心に来るものがなくて"オカズ"がマンネリかしてしまってる。ナルちゃんはどう思う?」


「え? 私? 私はよくわからないな〜〜」


 勉強していた所、急に振られたが、軽く流す有川さん。

 ここ最近、浅上と俺の会話を聞いていたおかげか多少エロに耐性がついてきたようだ。

 

「え? じゃあナルちゃんって何で抜いてるの?」


「抜く?」


「何でオ○ニーしてるの?」


 はっきり言うなや。

 でもちょっと気になる最低な俺がいた。

 すると、有川さんは頭を軽く傾げて、


「そのオ○ニーってなんですか?」


「「え?」」


 俺と浅上の声が重なる。

 まさか有川さん、したことないのか?


「え、ちょ、ナルちゃん。自分でその……したことないの?」


「何を?」


「オ○ニー」


「?」


「マスター○ーション」


「??」


「自慰行為」


「???」 


「手淫」


「????」


「センズリ」


「?????」


「うわぁ……きっつ……」


 思わず引いたような声が出た。

 自慰行為とは無縁な女子ナンバーワンの浅上がまさかこんなにその類語を口にするなんて。

 しかし、有川さんは相変わらずキョトンとしてる。

 俺との自己紹介の時に浅上が言ったオカズの意味も理解してなかったみたいだし、保健体育の授業も多分ろくに聞けてなさそうだし、恐らく本当に知らないんだな。


「まさか……本当にナルちゃんしたことないの?」


「え、うん……多分。そもそもオ○ニーって何なの?」


「とても気持ち良いこと。ね? 」


 なぜ俺に振る?

 話に関わりたくなかったので、読んでいたジャ○プで顔を隠した。


「気持ち良いの?」


「ええ、とても!」


「そうなんだ〜〜どんな感じに?」


「どんな感じか。そうね〜〜それは私よりも松原くんの方が詳しいかも」


「は!?」


 またしても振られる。

 正直とても言いづらい。

 しかし、有川さんは純粋な眼で俺を見つめている。単純な好奇心がそこにはあった。

 

「え、えと……なんつーんだろうな。スッキリする感覚かな」


「え、松原くんもやってるの?」


「うへ!?」


 なんかこうして女子に聞かれると無性に恥ずかしくなる。いや、女子に関わらず誰にも。男子高校生の性事情はそっとしておいて欲しいのに……。しかし、ここで嘘をついてもすぐに浅上が本当のことを言うし……早く会話を終わらせよう。


「まあ、嗜む程度に」


「1日2回は嗜むというより依存症かと」


「そんな毎日2回やってないわ! 2回以上なんて土日しかやってねぇ! だいたい1回だわ! ……ハッ!」


 しまったと思った瞬間、浅上はニヤリと笑みを浮かべ、


「ふーん。でも毎日やるんだ〜〜やっぱり松原くんってお猿さんね」


 煽られる。

 すげぇー屈辱的だ。

 

「ふーん。毎日やるほど気持ちの良いものなんだ〜〜」


 有川さんが気になり始めている。

 これ以上この話を広げたくはないんだけど。


「松原くん、オ○ニーというのは具体的にどんなことをするの?」


 何このエロ漫画的な展開。

 でも、からかってるわけでなく純粋な好奇心で聞いてるから逆に答えづらい。


「ふふふ、私も知りたいなー教えて松原先生」


 ニヤつきながら言う浅上。

 こいつは100%揶揄ってる。

 殴りたいその笑顔。


「いや、それはそのアレだよ。ナニをナニしてだな〜〜」


「ナニって何ですか?」


「それは……その……」


「んー?」


 そんな透き通った瞳で見るな。

 さらに答えられなくなる。何なんだよこの状況はよぉー!


「ごめん、俺うまく説明できねぇーや」


 耐えきれず俺は逃げた。

 有川さんが少しがっかりする。それ以上に浅上が溜息をして失望の視線を送る。

 なんだ……こいつ、殴ってやろうかな。


「しゃーーない。親友である私が一肌脱ぎますか」


「え?」


 突然、浅上がエロ本を置き、立ち上がり有川さんの前へと行く。

 浅上の奴……何を?

 

 そして———。


「私がナルちゃんに教えてあげる。オ○ニーを!」


「は?………」


 何か如何わしいことが始まろうとしていた。

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