第24話 おっぱい

 何分、何時間、何日、何週……いや何ヶ月が経ったかのような……。


 恐らく現実世界では一瞬の出来事だろう。そんな時間感覚の矛盾。


 死ぬ間際に見る走馬灯。

 スポーツ選手が極限状態になることで味わえる思考の加速現象。


 それらと似た感覚を俺は味わっていた。


 高揚、興奮、快楽、それらの言葉では簡単に片付けられないもっと高次元な感情……。

 この世界にある、ありとあらゆる言語でも、この今、俺が味わっているものを言い表すことができないだろう。


 いや、そもそもこの感情に対して言葉なんていらないな。


 いるのはたった一言。


 俺の思考を埋め尽くしている一つの言葉……。





 おっぱい。





 神が人類に与えた奇跡。




 おっぱい。




 二重の奇跡が産んだ賜り物。



 おっぱい。



 人類が初めに口にする原初の果実。



 おっぱい。


 

 人の夢、人の望み、人の希望。



 おっぱい。



 そんな人類の叡智を超えたエッチなおっぱいを俺はこの手で掴んだ。


 掴んで見て思ったのは全ての道、全ての物は最終的におっぱいに到達するということだ。


 古代の秘宝も、徳川の埋蔵金も、アカシックレコードも、シンギュラリティも、ワンピースも、暗黒大陸も、黒の組織のボスも、全部……おっぱいなのだ。

 

 この世は最終的におっぱいにたどり着くんだ……。


 おっぱいに始まり、おっぱいに終わる。


 おっぱいはこの世の全てでこの世の全てはおっぱいなのだ。


 だから俺自身も…………おっぱい。

 みんなも…………おっぱい。


 全部が全部……。

 おっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱい


 そう……おっぱいなのだ……。



 ………………………



「きゃっ……! って……松原くん?……」


「………………」


「ど、どうして……泣いてるの?」


「ありがとう……有川さん……」


「な、なにが? と、というか……その///……手を離して欲しいんだけど…………」


「……………」


「いい加減……私の胸から手を……」


「おっぱい……」


「ま、松原くん?」


「ありがとう……」


 俺はおっぱいに感謝を告げた。


 そして——。


「う、嘘……」


「ふっ………」


 俺は……。


「松原くん……わ、私の胸を掴んだまま……死んでる……」


灰になって萌えつきた。




『……ただ、二人のイチャイチャを見たかっただけなのに……私はなにを見せられているの……えぇ………………』




 

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