第14話 堕ちたな
「何度も倒れてすいません……」
再び仕切り直しで席に着く。
有川さんは深く俺に頭を下げた。
「いえ、元はと言えばこの変態女が悪いんで」
「そんな〜〜褒めても潮は出ないよ〜〜」
褒めてねぇーよ。てかもう黙ってくれ!
「ごめんなさい……私昔からそういうの苦手で……」
「あ、うん。そうだね……というか苦手なのにこいつとは今でも仲が良いんだな」
「うん……リンカちゃんはいつも私と一緒にいてくれたから」
「え?」
「私……昔から引っ込み思案で友達を作るのが苦手だったの。だけどそんな私といつも一緒にいてくれたのがリンカちゃんだった。幼稚園の頃から今まで、家が隣というだけで私といつも遊んでくれた。それに私に勉強やピアノ、面白い漫画やドラマも教えてくれたりもした。ある時を境になんか変なことばかり言うようになったけど、それでも私にとってはたった1人のかけがえのない友達なんだ、例え私と違う趣味を持ったとしてもね……」
素晴らしい女友情だな。有川さんは本当の意味で浅上が好きなんだな。
これを聞いたら流石の浅上も可愛い照れ顔を見せるじゃないか?
そう思い、浅上の顔を覗いた。
しかし……。
「うわ〜〜流石に"クリーチャー系"はグロもあるから見るのきついな〜〜だけど、なんかそそられるんだよな〜〜あれ? 話終わった?」
どぎついエロ漫画を見ていた。
幼馴染みが馴れ初めを話している時に、こいつは……。
どぎついエロ漫画を見ていた!!
終わってんな……相変わらず。
「こんな奴はもう置いといて、なんかごめんね。変な部活に勧誘してしまって、この部には有川さんが望むものはないから他の部に入った方がいいよ。そう言えば歴史好きだったら同好会で歴史研究会があると思うからそこに行けばいいと思うよ」
「ありがとうございます……でも私、リンカちゃん以外と話すのが苦手だから、部活には入りません」
「そっか……よし、まあ今日はもう帰ろう。帰宅部らしく速やかに下校しようぜ」
「そうですね」
そう無理矢理帰る流れにしようとした。
が……。
「待て待て待て! 何勝手に終わらせようとしてんの? ナルちゃんも何勝手に部活に入るのなかったことにしようとしてるの?」
浅上が割って入ってきた。
「いやだって、3人中2人が設立反対してたらもう諦めるしかないだろ」
「待って、松原くん、大事なこと忘れてない?」
「なんだよ」
そう聞くと浅上はドヤ顔でスマホをかざし、そして、
「この部活は君が始めた物語でしょ!」
古倉庫でエロ漫画見ながらニヤついている俺の写真を見せた。
「お、おい! それいつ撮ったんだよ!」
「フフフ、この写真をばら撒かれたくなければ君は私の言いなりになるしかないよね!」
「くっ!!」
ゲス野郎め……。
「そして、ナルちゃん!」
「な、何?」
有川さんに近づき、さらに抱きついた。
「キャッ! ど、どうしたの?」
「ナルちゃん、ごめんね。騙すようなことをして……私……ナルちゃんのこと大好きだから……私の作った部活に入ってもらいたいと思ってつい嘘をついちゃった、ごめんね。でも、私ナルちゃんと同じ部活に入るのが夢だったの。同じ部活で楽しく活動したいとずっと思ってたの。だからナルちゃんが入りやすいようにこうして部活作ったんだ。ねぇ……ナルちゃん……エロ部に入るの……ダメかな?」
可愛い声を出し訴えかける。
下手な口説き文句だが、それを浅上が言うと話は変わる。
美少女フェイスで耳元でそんなことを囁かれたら流石に女子でもこれは……。
「は……はい! 入ります!」
堕ちる——。
こうして部員が3人揃ってしまった。
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