第伍話 鳴らないで、電話
「はぁ……」
夜10時。
俺は自室のベッドに倒れるように横になった。
今日は色々あって疲れてしまった。
……いや、そんな一言では語れるものではなかったな。
あの美少女と言えば真っ先に思い浮かべる女子ナンバーワンの浅上 凛花にエロ本を見られて、それでなぜかダメ出しをされて、そこから変態的な質問をされて、最終的にめちゃくちゃ最低な部活をやる羽目になってしまった……。
もう展開がフルスロットルしすぎなせいで、ついていけてない。
断ろうにも浅上に弱みを握られているせいで反抗できない。
はぁ……俺の学校生活は一体どうなってしまうんだろう……。
このまま"エロ部"に入れられてしまうのか……そんなん周りにバレたら死ねる自信しかない。
まあ、浅上という美少女と2人きりで部活動を行うのはとても嬉しいことなんだろうけど、彼女の本性を知ってしまったからそこまで喜ぶことはできない。
"凌辱"、"寝取られもの"という俺が大嫌いなジャンルを好んで見ているという時点で奴とは分かり合えないだろう。
というか性癖の好みがおっさんかよ。女でエロ本が好きという段階でイカれているのに、その好きなジャンルがおっさんって……もう性癖というより女子高生として終わってるだろ。
そんな奴をもう俺は"女子"として見れない。変態としか思えない。
「憂鬱だ〜〜」
部屋の天井に向かって叫んだ。
あれこれ考えて頭が痛くなる。
そんな気分が落ちている時はもう……。
"あれ"をやるしかない……!!
俺は立ち上がり自分の部屋の鍵をかけて、カーテンも閉めた。
そして……今日友人から授かった"ハチ豚先生"のエロ漫画を手にし、おもむろにティッシュを手の届く場所に置いた。
こんなブルーな時はもう……一回やってスッキリするしかない。
漫画を読もうといや、"使おう"とした次の瞬間。
プルル〜〜!
着信音が部屋中に響いた。
「クソッ! こんな時に誰だよ!」
苛立ちながら漫画を起き、スマホを見ると、そこには今最も話したくない者から着信がかかっていた。
「…………」
俺は普通に着信拒否し、再び漫画を読み始めた。
しかし——。
プルル〜〜!!
再び着信がきた。
なんだこいつ……。
俺は留守番電話にして着信拒否した。
すると次はSNSツールアプリである"LAIN"から一言メッセージが届いた。
"次 出なかったら エロ本 みんな 言う"
と。
その直後また着信が鳴った。
プル——。
「はい、もしもし、松原です!」
ワンコールかからない速度で俺は電話を出た。
『あ、もしもし松原くん? やっほー凛花だよ』
妙に陽気な浅上。
なーにが"凛花だよ"だよ。
せっかく男にとって至福な時間が始まろうとしていたのに邪魔しやがって……。
「要件なんすか?」
素気なく言うと、俺の不機嫌さが伝わったのか浅上はクスクスと笑いはじめて、
『あれ、もしかして"オナ中"でした?』
と真実を見抜かれた。
「は……は? ち、ちげぇーし! ね、寝ようとしただけだし!」
『ふふふ、相変わらずわかりやすいな〜〜反応も性癖も』
性癖は余計だ。
「それでご用件は?」
『あ、そうそうまだ"してない"ならいいんだけど、私がよく見てるエロ漫画のダウンロードサイト今から送るね。1話だけだったら無料で読めるから、もしよかったら今日の"オカズ"にしてね』
「オカズって……」
『それじゃあいい夜を〜〜』
そう言って電話を切った。
その直後、浅上のLAINからURLが送られてくる。
こいつのオススメって絶対ロクなのないだろう。
俺はURLを開かずに再び漫画を手に取ろうとした。
しかし……!!
「………………」
なぜだが知らないが、無性に浅上が送ってきたエロ漫画が気になった。
なぜあの可愛い浅上が、あそこまで変態になってしまったのか……その答えがこのサイトにあるのかもしれない。
"ハチ豚先生"のエロ漫画以上に浅上への好奇心が僅かに上回ってしまった。
未知なエロほどそそるものはない。
俺は漫画を置いて、浅上から送られてきたURLに指を伸ばした。
そして———。
「おおーーーー!」
"真理の扉"を開いた。
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