第3話 AVのインタビューにはよくわからない質問が混じりがち

 浅上さんが相当やべぇー女だったとは……この事実を打ち明けてみんなを目から醒まさせるべきか。

 あるいは浅上さんのイメージを守る為に言わずにおくべきか……。

 

 いや、んな他人の心配よりも今は自分だ。

 どうにかしてこのおかしな状況を潜り抜けないと!

 俺の第六感が言っている……浅上 凛花……この女は危険だと……!! これ以上関わったらとんでもないことが起きるに違いない!!


 穏便に済ませてこの場から逃げなくては!!


「にしても、浅上さんもこういうの見るなんて意外だったな〜〜あ、そろそろ帰らないと! それじゃあ俺はここで失礼しま——」


「待ってよ」


 帰ろうとした瞬間、制服の袖を掴まれる。


「え、ちょ……」


 浅上さんの方を向くと先程の表情とは打って変わってしおらしい仕草で俺を見る。

 そんな浅上さんを見てドキッとしてしまった。


「こうして松原くんのエロ本を見つけたのも何かの縁だし……松原くんのこと色々教えてほしいな……」


 照れながら彼女は言った。

 色々って……色々って一体なんなんだ! 

 この流れ的にあれか? 俺に興味を持ったということか? 興味=気になる=好きという方程式を解こうとしているのか? 

 おいおいおいおい。

 確かに本性を垣間見てやばい女と思ったが、しかーし! 付き合いたい女子ナンバーワンである存在に変わりない!

 もしかして……始まるのか……俺の青春が……ここで!


「あ、ああ……」


 唾をゴクリと飲み俺は小さく頷いた。

 すると浅上さんは少しニコッとし、俺を再び倉庫に連れ戻した。

 さらに扉を閉めて、近くに置いてあったパイプ椅子に俺を座らせた。


「そ、それで聞きたいことってなに?」


 尋ねると、浅上さんは「ゴホン」と咳払いをし、制服の胸ポケットからペンとメモ帳を取り出す。

 妙に真剣だな……一体何を……。


「まず、松原くんって何で"精通"した?」


 ん……? セイツウ? 今浅上さん、セイツウって言ったか?


「あの……"セイツウ"ってなんすか?」


 聞き返すと浅上さんは目を丸くして答えた。


「え、知らないの? まあ中身中坊の松原くんなら仕方ないか……えーとわかりやすく言うと"はじめての"オ○ニー"何でしたの?」


 前 言 撤 回。

 こんなやばい女で青春なんて始まるわけがなかった。

 マジで何言ってんだよ……。


「おな……って、え?」


「え? 流石に"オ○ニー"くらいはするわよね?」


 するよ、するけども!!


 このままだと俺も頭がおかしくなってしまう! 

 ここは強制退出だ!


「あ、ごめん俺急用思い出したから帰るわー」

 

 そう言って逃げるように倉庫を出ようとした。

 しかし。


「ふーん。帰るんだ……このまま帰ったら松原くんが学校で隠れてエロ本読んでいることをみんなに言おうかな〜〜」


 小悪魔的な笑みを浮かべて浅上さんが呟いた。

 その呟きをしっかり聞いてしまった俺は立ち止まり、


「いや、そんな大した用でもなかったな、よし続けようぜ!」


 再びイスに座った。

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