第10話 猫なんて

 ちょっと息抜きのお話をいくつか。


 二代目家猫のボケを飼い始めた頃、当時住んでいたアパートでボケが吐いた。私は何も言わずにティッシュで拭き取ったが、ボケは気をつけの姿勢で固まっていた。

 もしかしたら、前の飼い主には、吐いたときに叱られていたのかもしれない。「怒らないの?」と、不思議そうに私を見ている気がした。


 私は怒る代わりに、ボケを撫でた。

「吐いたくらいで怒ったりしないよ」

 赤ちゃんは泣くのが仕事。猫は吐くのが仕事。

 それ以来、ボケは吐いたら時々は「片づけて」と知らせに来るようになった。賢いやつだ。


 猫は毛繕いするので、胃の中に溜まった毛を吐き出さないといけない。だから野良猫は野草を食べて、毛玉を吐く。野草が喉に引っ掛かって、吐きやすくなるのだろう。

 ペットショップに行けば、飼い猫用の「猫草」が売っている。あれは、植物から栄養を取りましょうという趣旨で売っているのではないのだ。


 吐くのは一回だけでなく、立て続けに三、四回吐くこともある。これはたいていの場合、一回で吐ききれなかっただけのことだ。また、ご飯を食べた後にすぐゲロしちゃうこともある。食べ過ぎのときは特に。でもこれくらいなら心配することはない。

 一日中吐いてるとか、毎日吐くとかだったら、医師に相談した方がいいだろう。


 私は音楽を聴くのが好きだ。私の人生は、音楽と漫画でできているといっても過言ではない。

 それでひところ、ブルートゥース・スピーカーにハマった。

 BOSE(ボーズ)のサウンドリンク・ミニは、幅二十センチ・高さ五センチほどのミニ・スピーカーだが、低音が強調されていて、ベース・ギターの音をしっかり聴きたい私にとっては、ありがたいスピーカーだった。


 ソニー製のスピーカーも買ってみたが、全般的な音質はソニーに軍配が上がるものの、ボリュームを低くすると、重低音モードでも低音が弱くなってしまう。


 この話、猫と何の関係があるの?とキョトンとしているあなた。つまり猫といると、大音量で音楽は聴けないということなのです。猫は大きな音が嫌いなので。


 だから、低いボリュームでも低音がしっかり聞こえるスピーカーが欲しかったので、他社のも買ってみたのだが、低ボリュームでの重低音に関してはBOSEの右に出るものはなかった。


 ヘッドホンかイヤホンで聴いたらいいじゃないかというあなた、そのとおりです。いや、それも買ってますとも。

 でも耳を塞いでしまうと、逆に外の音が聞こえなくなる。猫がいたずらしてても、喧嘩してても、まったく気づかないということになる。


 骨伝導方式のブルートゥース・イヤホンというがあって、耳を塞がない画期的なイヤホンなのだが、やはり低音は弱かった。

 物事はなかなかうまくいかないものだ。


 夢の中に、よく猫が出てくる。でも大抵、うなされる内容が多い。

 家猫に外へ逃げられて、私が探しに行く。見つかるのだが、同じ模様の猫がわんさかいる。101匹わんちゃん状態というわけだ。

 一匹ずつ確かめる私。だがやがて、猫たちは「ご飯くれー」と大合唱を始める。


 どっと疲れて目が覚める。よく、仕事で疲れて帰ったのに、夢でも仕事をしている夢を見て、徹夜で仕事をした気分になることがあったが、それに近い。


 こんなこともあった。

 ボケが突然人間の女性に変身して、「あなたが好きです」と言う。

 お恥ずかしい。漫画の読み過ぎだな。でも、それがボケの気持ちだったら嬉しいんだけどな。

 残念ながら、三代目のチロはまだそういう夢を見させてくれない。


 猫はどうやって飼い主を見分けるのか。調べてみたところ、視力は弱いので、顔で認識しているわけではないという。

 声と匂いで認識しているんだそうな。特に聴覚は犬よりも優れているんだと。

『ワールドトリガー』の風間隊の菊地原のサイドエフェクトみたいだな(わかります?)。


 わたしなんか、集会所に集まる猫たちと外で会っても逃げられるもんだから、家ではなるべく同じ服を着て集会所に入っていくようにしていたのだが、意味なかったんだな。


 猫は純血種よりも雑種の方が、一般的に免疫力が高く、病気になりにくい。ペットショップで売っている猫は何十万円もするが、免疫力が弱くて、病気になりやすいかもしれない。

 猫は宝石じゃないから、値段で価値が決まるもんじゃないと思う。


 猫を飼ってみたいと思う人は、できれば都道府県などが運営している「動物愛護センター」などに保護されている、いわゆる保護猫を家族に迎えて欲しい。


 でもこれを読んでくださる方は、猫を飼うことの大変さがわかってきたから、飼いたいと思わないかもしれないな。


 だから、一番最後に書こうと思っていたことを、ここで書いちゃいます。まだもうちょっと書くことになりそうなので。


 この話のタイトル、『猫なんて飼うもんじゃない』は、少しひねってるんです。


 もしタイトルが『猫なんか』だったら、絶対飼ってはいけない、という意味になります。勿論、『猫なんて』でも同じ意味に受け止められますが、そこにはもう一つの意味が隠されているんです。


 それは、猫は『飼う』ものではない、『家族』として迎え入れるものだ・・・という意味です。


 確かに迎え入れる覚悟は必要です。とてもやんちゃな家族です。最期まで看取る覚悟も必要です。


 でも、猫からの贈り物もいっぱいあります。それは目には見えないものですが。


 ただし、さすがに複数飼いはお勧めしません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る