第9話   せんせーみっけ!

「ルイー、本当にこの人なの? 昨夜のウサギさん」


「そうだ。子供の頃に俺と契約したまま、大人になったようだな」


 デフォルメしたアニメ調の、黒いロップイヤーとコウモリが、校門を掃き掃除する里山の後ろに、ぴったりくっついていた。


 体育館の扉の下にワイヤーを入れだしたときも、二匹の動物は里山の周りをうろちょろ。マロは翼があるのに、里山の背中によじ上っている。


「わーい!」


「それにしても、二度寝してまで夢でウサギを追跡するなんて、よく思いついたな」


「だってー、ルイが途中で俺を起こしたから、眠かったんだよ。でも、おかげで二度寝がすんなりできて、こうしてウサギさんに会うことができたよ」


 ウサギ先生は、トイレが間に合わなかった子供を背広に包んで、保健室まで運んで行った。その時も、マロは背中にくっついていた。


「優しい人だね。ちょっとだけ、ダディに似てる気がする」


 ウサギ先生は、体育館で子供たちを整列させていく。一年二組。きっと彼が担当を務めるクラスなのだと、マロは思った。


「今日はこの小学校の、入学式だったんだ。忙しそうだからー、今日直接会うのはやめにしようよ」


「……ハァ。直接会って、契約を解除してほしかったんだがな」


 里山の頭の上で、ルイがため息をつく。


「せんせーはルイの契約者なんだから、ルイが召喚すれば、夢の中ですぐに会えるよ」


「直接だって言っただろ」


 その夜もまた、二人は里山を夢の中に喚んだ。どういうわけだか一言も発さない仔ウサギ。マロはジャージの胸元に、いつも仔ウサギを入れて、好きなときにモフっていた。


 何日もかけて、都内一の電波塔のてっぺんまでよじ登り、マロが黒い厚底ブーツの片足だけで、やじろべえのごとく頂上に立ってみせたとき、光の玉が興奮のあまり激しく点滅し、珍しく仔ウサギが震えていた。


「大丈夫、怖くないよ。絶対に落としたりしないから」


 仔ウサギをジャージから取り出して、しっかりと腕に抱えた。後からやってきたルイと一緒に、小さな月を眺めていた。


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