第2話 ポプラの木の木陰にて
駅の階段から人がわらわら降りて来る。その中に待ち合わせの相手が誰かいないかと自然と目で追う。すると間もなく一際目を惹く女の子が、友達二人と話しながら降りて来た。その子の周りだけ華やかな空気に包まれているのは、花柄のオフショルのせいだけではないだろう。
「トキちゃん」
階段を降りたところで、ユミちゃんがオレたちに気付いて手を振る。そしてポプラの木の下でオレたち二人と合流するなり、早かったねとか、待った? じゃなくて、
「トキちゃん、フルーツバスケットみたい」
と言う。
「えーこれダメだったかなァ」
オレは自信を失ってしぼむ。。
「ううん。トキちゃんに似合ってる。見つけやすかったし」
「やっぱ?」
オレの自信なんて風船みたいに軽い。ポンと叩かれればふわっと舞い上がる。
章也はオレの後ろに隠れるように立っていて、オレが肩を押して前に出してやらないとずっとそうしていそうだった。
「こいつ初瀬章也……って。オレよりユミちゃんたちの方が知ってるか。同じクラスだもんな」
「ど、どうも。よろしく」
「うん」「よろー」「よろしく」
消えいるようにつぶやいた章也に、女の子三人が口々に言う。
「神木君は?」
「あいつは遅刻するかも。朝早いの苦手だから」
「10時半はちょっと早すぎたかな」
ユミちゃんが言うと、眼鏡をかけたロングの子にベリーショートの子が「普通だよね?」と聞くと、
「え? あ、どうなのかな、そうなの?」
と、眼鏡の子が狼狽えながら質問を質問で返す。
なんだかほんの少しだけど、章也と似たものを感じる。
「もともと深月は遅刻常習犯なんだけど、昨日はちょっとイベントもあったから、遅くまで起きてたんだと思う」
「イベントって何かのゲーム?」
ユミちゃんがうるりとした瞳で聞いてくる。相変わらず距離が近い。
「ゲームじゃないんだけど、もうすぐ夏至だろ? 昨日は真夜中にISSが通る予報が出てたんだ」
だからそれが、と説明を続けようとした時、
「常葉?」
聞きなれた声で名前を呼ばれた。
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