第3話 北校舎突き当りの掲示板前にて
北校舎に突き当たると壁に掲示板がある。そこには五月半ばに行われた中間テストの成績一覧表がでかでかと貼り出されていた。これを初めて見た時、オレはほぅとため息を一つ吐いた。
一学年一学期中間考査順位表 (全238名)
1位
2位
3位
中学時代のツートップがさすがに高校でも見られるとは思ってなかった。特にマキは相当頑張ったはずだ。深月の下は混戦だっただろうに、その中で頭一つ抜きん出て二位って普通にすげえだろ。なのにマキは、この結果をずっと悔しがっている。それはもちろん、深月に勝てなかったからだ。
一方、深月は順位なんてものには全く興味がないらしい。そもそもあいつが1位を取るのは、そうしないとマキが許さないからだ。
マキは深月を目標にしている。ガキの頃からずっと。到達すべき目標であり抜かすべき好敵手。だけど、同時に気付いてもいるんだろう。深月が先を行くから自分が伸びていけること。
深月はマキにとっての自分の役割をわかっていて、それを難なく実行してみせる。容赦も抜かりもない。入試ですら勝敗がわかる形にしてみせた。毎年、入学式の新入生代表挨拶は、入試のトップ合格者が務める。そして今年度は入学式の式次第に神木深月の名前が載った。
学校から挨拶文の原稿を書くよう深月の家に連絡があった時、たまたまオレもその場にいて、深月が面倒だなんだとぐずぐず言って逃げ回るから、あいつにちゃんと書かせるのに苦労した。「文句言うくらいなら少し抑えりゃよかったのに」と言ったら、せっかくのいい男がぶすっとしてハッキリしないことをボソッと言った。
そんでオレが「あ? 今なんつった? よく聞こえなーい」と言って耳に手をかざしたら、無言で耳の穴に指を突っ込んできやがった。まったくあいつは時々何を考えているんだかようわからん。
オレはそんなことを思い出して嘆息し、そのようわからん奴に会うために、1年A組へ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます