第47話 コニャックの嘆き

黄の国ではコニャックの傍使いが

マルチネの居る宿の扉を開ける。


「ここにマルチネさんが居ると

 思うのですが。お話がしたい」と

受付に居たブルダに言う。


「そんな人はここにはいないよ」と

答えるが、なんとマルチネが

自ら奥より出てきた。


「あらあら、珍しい気配。

 20年ぶりね、こんな気配は」

と笑いながら扇を構える。


「私は戦いに来たのではないですよ。

 お願いがあってきたんです」と傍使い。


「うちの大将を脅してほしいのですよ。

 このままだったら青の国も

 参戦すると言ってね。」と笑う傍使い。


私はね、この国を誰が納めようと

知った事じゃないんですよ。ただ

これ以上の負の感情は、私もエアストも

今のままじゃどうする事も出来ない。


特にエアストなんて人間に、いや

貴方の娘に囚われているし。


私もサンテミリオンを失って

このホムンクルスを動かすだけで

精一杯なんですよ。


「ジェニエーベルじゃダメなの?」

とブルダが準備したお茶をすすりながら

マルチネは言う。


「契約をしていないんですよ。彼と。

 でもそれは関係が無いんです。」

と傍使い。


そもそもサンテミリオンに渡した

鍵が行方不明なのが問題なのです。


「だからその体が精いっぱいだと?

 というか鍵どこにあるかわからないの?

 あなたの物なんだから感覚で

 探せないの?神なんだから。」


えぇ。残念ながら探せません。

「じゃあお互いが出れないままで

 均衡じゃないの」と平然と言う

マルチネ。


「この状態が一番まずいんですよ」

と言うと


まずエアストが人間の負の感情を

処理しきれていないんです。

だから人間は、調子に乗って

今回のような事をした。


私の方はと言うと

処理も何も私に負の感情が

集まらないんです。

集められないんです。


「どうにかして集めなさいよ。

 あなたエンドなんだから」と

マルチネは言う。


「だから人間は嫌いなんですよ。

 いつも上目使いでそうやって

 命令ばかりする。弱いくせに。」と

エンドと呼ばれた傍使いは言う。


なのであなたにして欲しいのは

まず、コニャックを脅して大人しくさせ

エアストの負担を軽減させる。

そして鍵を見つけて

私の元に亜人たちの負の感情を

送る事。


まだして欲しい事はありますが

それはなんかうまくいきそうなので。

私の眷属を使ってやるみたいですが。


ウォッカなら大丈夫でしょう。

エアストの眷属になった娘もいるしね。


「あらま、ジヴァニアはルナティアに

 ついちゃったの?笑える」とマルチネ。


最終的には。とエンドは言うと


私とエアストは居城にて眷属たちの

負の感情を集め、処理する。

ウォッカとジヴァニアは眷属たちの

「目に見える」拠り所として存在する。


ジェニエーベルが魔族として、そして

ボルドーもなんちゃって魔族としているが

契約をしていないので影響は少ないでしょう。


まぁでももう一人くらいジヴァニアの

ようなモノを作ってもいいでしょうね。

エアストは。


それで均衡の出来上がり。

そしてこの大陸は平和です。

・・・バーボンが余計なことを

していますが。


「今度は何しているのよ、あの男」

とマルチネ。


この大陸の在り方を変えようとしています。

異世界から来た者の特徴です。

なにか選ばれたモノ気取りで

色々とやっちゃうの。いい事かも

しれませんが、本来それをするのは

この大陸の者でなくてはなりません。


「まぁバーボンには最初だけ

 頑張ってもらって後は放置して

 もらいますけども」とエンド。


「わかったわ。じゃあ案内して。

 この国の総統とやらの所に」

というと席を立つマルチネ。


そして二人は宿を出て行った。


「あなたジェニエーベルに何をさせる気?」

と歩きながらエンドに聞く。


奇数では均衡はあり得ないんです。

昔は6つの国があった。それが

4つになり、いまは3つ。


アンタの娘のせいでね。

とエンドは言うとチラ見する。


「やったのはエアストじゃないの」

とマルチネ。


ジェニエーベルが他の国と

肩を並べる事が出来ればいいんです。

それは、そうするのは

ジェニエーベルで無ければなりません。

バーボンでは駄目です。


エアストが抜けたルナティア、

異世界人と言ってもこちらに馴染み

こちらのルールを守るアスティ。


そしてジェニエーベル。


「コニャックは?」とマルチネは聞く。


「彼は自信過剰ですが今回の件で

 学習する力はあります。

 負の感情の循環、と言うんでしょうか。

 それがうまくできれば彼も

 真面ですよ?魔獣とかに頼ったのは

 エアストのせいです」とエンド。


「ハジメちゃんは?」とマルチネ。


「かれは弱すぎます。国を支えるという

 観点においては」とエンド。


「でも頑張ってたじゃないの」


個の力と人気は大したものです。しかし

それだけです。

個の力も人気もコニャックが下ですが

国を運営するという点では

コニャックの方が上です。


「その二人が手を取れば、この大陸を

 制覇できるでしょうね。無理ですが」

と笑うエンド。


「絶対的に思想が違いそうね」と

マルチネ。その通りとエンド。


さて着きました。

じゃあお願いしますね。


そして二人はコニャックと話し合いを持つ。

エンドは丁寧に説明をし

マルチネも打合せ通りに話をする。が!

突然とんでもない事を口にする。


「貴方さえよければ、私がここに残って

 あなたを支えてもいいわよ?」と。


エンドは大笑いをし

「流石私に封印魔法を展開した人だ。

 おもしろい!」と。


「多分貴方が作ろうとする国は

 どういったモノかわかるわ。でも

 棘が立ちすぎている。」


貴族が貴族の責を全うし

領民がその貴族を心から慕う国。


それ以上何を求めるのよ。とマルチネ。

そういったのも一つの国の形。


「いう事を聞かないと私は貴女を

 殺すわ。」と扇を広げるマルチネ。


「この人は本当に強いですよ?

 エンドと呼ばれている私もそう思います」

と傍使いは言うとコニャックは項垂れる。


私だって愛される貴族になりたいさ。

この国の貴族は不幸だった。

仕える人をなくし。存在と言うものを

否定されたようで。





















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