第43話 星を見上げる

ルエダは爪を構えると

姿が見えなくなる。すると、

魔獣の群れが変な動きをしていく。


攻撃は決して重くはないが確実に足首を

狙う攻撃をしていく。


テージョは薙刀を振り回しながら

「なんだありゃ!ただでさえ速いのに!

 何倍だよ!アレ息できるのかよ!」と驚く。


「息なんか移動中にするかよ!」と

テージョ背後にいた魔獣の延髄に爪を突き刺す。


「ダーリンをいったん引かせる。持たせろ!」

ルエダの声を聴き

「当たり前だ!早く帰ってこい!」とテージョ。


「ダーリン、悔しいだろう。」そういうと

回復薬をドバドバかける。


「ああ!悔しい!とても悔しい!」

とリスボアは立ち上がり大剣を握る。


「それでこそ私のダーリンだ!」

とルエダ。

「息を落ち着かせろ!あわてるな!

 ダーリンは強い!息を整えて

 戻ってこい!焦るなよ!」と言うと

ルエダは戦線に戻る。


リスボアは目を閉じる。深呼吸をする。

じっと目を閉じる。


そして想像する。これは大剣だ。

どうする。魔獣がこうくる、そしたら

こうやって・・・、そうだ。こうする。


「よし!」とリスボアが戦線復帰する。


「ほう!動きが違う!いいねいいよ!」

とハジメ。

「さすが私のダーリン!」とルエダ。

「ダーリン!組むぞ!」とルエダ。

「おうよ!」とリスボア。


「これでこっちはしまいだ!」と

ジェニは矢を放つ。


「すげえな!詠唱無しで極級スキルか。

 しらん者が見たら只、矢を放ってるだけに

 見えちまうぞ!」とエルセブン。


ジェニは苦笑いしながら

「後は頼みます!」というと右舷を

後にする。


「ボルドー!戦局は!」とジェニは叫ぶ。


問題ない!左舷に行ってくれ!


その声を聴き、弓を仕舞う。

そしてアイテムボックスから

一振りの刀を取り出す。


「神器 キリシマ」そうつぶやき

鞘から刀を抜く。


刀は強く光を放つ。

ジェニを中心に光が広がる。

キリシマの特性「守る」を発動させる。


ジェニは向こうの世界でやっていた

刀の立ち回りを思い出す。


その重い一撃が魔獣を斬りつける。

ただただ、魔獣を斬りつけるだけだが

魔獣は煙となる。


そして次の魔獣も煙となる。


辺りの動きが、魔獣さえも、

すべて動きが止まり

その斬撃を見て驚愕する。


「つ、つええ・・・。反則じゃねえか」

とテージョ。ハジメは笑う。

「ウォッカさんかと思ってビビっちまった」


ルエダの攻撃で動きが止まり

リスボアがソミュールの援護と

共にとどめを刺す。


ハジメとテージョがなぎ倒して回る。

それをジェニが斬撃をして回る。


そして・・・。魔獣が引いて行く。

と言うよりも逃げていく。


「この地域より全ての魔獣が

 撤退していきます!」と犬人族。


「深追いはするな!」ハジメはそう言うと

「勝どきを上げろ!この街に響き渡る様に!」


うぉおおおお!と全員がこぶしを突き上げ

叫ぶ。


「引いて行く先を追え!」と指示をするハジメ。

「このまま突っ込みますか?」とジェニは言うと。


突っ込むは突っ込むが・・・。

「行くのは俺と、ジェニ。そしてボルドー。

 リスボアとルエダ、テージョとチェスキー。

 ソミュール。エルさんはすまないが

 ここを守ってくれ。」とハジメ。


「勿論だ。この一角には釣具屋がある」と

エルセブンは笑う。


「少し休憩をしたら突っ込む。」と

ハジメは言う。


各々が乾いた口に水を流し込む。

「ジェニ君も初めての戦いかい?」と

ハジメは言う。


「はい。」と答えると。


君は凄いね。冷静だ、それに動きがいい。

動きと言うのは自分が居る場所を

知っているという意味だ。


「もう無我夢中ですよ」と笑う。

その他の全員は回復薬をがぶ飲みをする。


「ウォッカさんに言われてきてみれば、

 押されてたじぇねえか」とルエダ。


「ウォッカさんも来るのか!」と興奮気味に

テージョは言うが

「いや、無理だろう。あの人のお婆さんが

 もう・・・。持たないだろう」

そう言うルエダの声を聴きジェニは


「唯、いやベル様は!どうなっているんだ」

と聞く。


もう衰弱している。多分、魔力も

回復していない。今、ウォッカさんと

ジヴァニアが看取っている。


「そうですか・・・。」とジェニは言うと

空を見上げる。


ジェニ・・・。向かってもいいぞ?青の国に

行ってもいいぞ?とハジメ。


「大丈夫です。魔獣を追います」

とジェニは言う。


「残りは約90です。全て領主の

 屋敷に向かいました」と犬人族。


「よし、右から周り側面から突く」

とハジメ。


「一人10匹ちょいか。腕がなるぜ」

とテージョ。


じゃあ後は頼みます、エルさん。

「おう、行ってこい」とエルセブン。


8人は歩いて移動をする。

「綺麗な星空だな。月明かりを

 遮る雲もない。」とハジメは言う。


「この世界はどうなっているんでしょうね」

とジェニは言う。

「アスティもそんなこと言ってたな」

とハジメは言うと



もしかしたら神様の手のひらなのかも

しれないな。

まぁバーボンの言った事だけどな。


ジェニは何故か納得した。


「俺、強くなりたいなぁ」とリスボア。

「強くなってどうするの?」とルエダ。


強くなったらこんな争いをしなくても

そこに居るだけで止められる。

俺だって戦いは嫌いだ。

アスティ様はそれが出来ている。

俺もああいった存在になりたい。


「なるほどね」とルエダは言う。


「お前今まで何してたんだ?」と

テージョはチェスキーに聞く。


普通に釣りさ。竪琴も何も

あったもんじゃなかった。

「でもな」釣ってない魚は残り

9匹になった。因みに師匠は

残り2匹と太古の竜だけだ。


「なんだそりゃ」とテージョは笑う。


「お前、相当鍛えられたんじゃないのか?」

とボルドーはソミュールに言う。

ソミュールはメスカルの背に乗っている。


メスカルを撫でながら

「そんなことないわ。只、妖精と

 少し暮らしていただけ。そして

 この子の世話。」


本当にそれだけよ。




















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