第42話 ダーリン

ハジメはソミュールに耳打ちをする。

それを聞いてソミュールは頷く。


右舷ではジェニがテージョに言う。

「ここは一人で問題ない!前に言ってくれ!」

「了解!」とテージョは薙刀を持ち

バルドーたちと合流する。


「いいか!7人で1匹ずつ行動不能にしろ!

 袋叩きだ!動かなくなったら次へ行け!」


「怖いな!おい!ボコボコじゃねえか!

 魔獣が!」とテージョは

動かなくなった魔獣にとどめを刺す。


「流石、吸血族。夜戦の申し子ね」と呟く。


左舷では

「リスボア君。」

そうハジメが後ろから声をかける。


「こんなとこに来ていいんですか?

 こっちはウズウズしてるだけで」と

リスボアは聞く。


いいんだよ。それはそうと君は

アスティの本当の戦いを見たことはあるかい?


「ないです」とリスボア。


アイツは俺よりも強い。本気のあいつは

もっと強い。ここぞという時にはね。

白いひものような布を腕にかけるんだよ。

「これが本当のたすき掛けだ。決死だ。」と

教えてくれた。

ボルドーも指揮が凄いだろう。


「はい。」戦局を冷静に見るんですね。

とリスボアは言うと。


まぁそうだ、でもね。ジェニ君に付いている

バーボンはね。戦局は見ないんだよ。

何故かわかるかい?


「い、いえ」とリスボア。


戦いが始まった時点で終わってるんだよ。

戦局も何もない。もうその通りに動くからね。


その二人と一緒に居た、それを

見てきた俺からの一言だ。


「すまないね、この白い布をつけさせてくれ」

そうハジメは言うとリスボアにタスキを巻く。


リスボアはキョトンとしているが

ハジメは斧を右手で持ち仁王立ちしている。

「準備はいいかい?はい、深呼吸」

とハジメは言う。


「左舷来ます!その数は・・・

 約80!増えてます!」


「放て!」とハジメは号令すると

後ろから無数のロックダーツが飛んでくる。

それはまさに機銃のように。


「いくぞ!リスボア君!こっちが本命だ!」

そう言うハジメを見ると

少し薄ら笑いをしているように

リスボアは見えた。


「リスボアは俺の左だ!下の方だ!」

と叫ぶ!


「テージョはこっちだ!こい!」と

ハジメは言う。

「もう来てるぜ!」と薙刀を振り回す

テージョ。

ソミュールのロックダーツが止まらない。

マシンガンのように放たれる。


「流石だな!」とハジメ。

しかし!数が多い!

竪琴使いはいるか!居たら補助頼む!


声がしなかった為にハジメは

「くそ、やはり準備が足らなかったか」

と唇をかむ。


突然ハジメの足元に魔方陣が現れ

その魔法陣は全体を包むほど、ボルドーの

所にも届くほどに広がる。


プログレ・フォ・オール!


全員の体が一瞬金色に輝く。

「これは!極級の!補助魔法!」

とハジメは驚く。


「私、登場」とそ魔法を唱えた

男の子っぽい女性は言う。


「テージョ!動きが甘いわよ!」

とテージョに補助を掛けながら

その付き人は言う。


エルセブンさん!そしてチェスキー!

何故ここに!


「ここはなぁ!私はこの街の

 釣り具屋の餌でないとダメなんだよ!」

とエルセブン。


「噂を聞いて速攻で来た!」とチェスキー。

「魚くせえぞ!」とテージョは笑う。


いけ!テージョ!

おうよ!お前が居たら私は負けない!


ハジメは斧を軽々と振り回す。

一撃が重く、それで魔獣はほぼ

戦闘不能となる。それを吸血族が

3人づつで仕留めていく。


リスボアも大剣を振り回すが

初めての軍隊戦で思うように

動けていない。


「大丈夫だ!1匹づつ仕留めろ!

 仲間を信じろ!」とハジメは声をかける。


「そうだ!俺は俺の役目を全うする!」

リスボアの動きが変わる。


「思い出せ!鉱山での戦闘を!

 俺は弱い!ならば!」そうリスボアは言うと

ハジメとテージョが打ち漏らした魔獣を的確に

潰していく。


「あと3匹!」とジェニは言うと

後ろの鬼人族が唸る。

半数を前に!とジェニは言う。


「左でも戦闘が始まってるぞ!

 そっちはどうする!」と鬼人族が言うと


「多分、本命だが問題ない!まずは

 前を潰せ!」と指示をする。


「ジェニエーベル!強化するぞ!」と

エルセブン。


「エルさん!助かります!」とジェニ。

「残りを落としたら左舷に回れ!こっちは

 私が面倒を見る!」とエルセブン。


左舷のリスボアの動きが片手剣の

時と比べ動きが遅い。

「くそ!こんなことなら片手剣を

 持って来るべきだった。油断だ!」

とリスボアは唇をかむ。


その時に左から魔獣がとびかかり

リスボアは転げる。


その転がったリスボアに魔獣が

飛び掛かる。


「リスボア!」とハジメは振り向いて

しまい、魔獣の接近を許す。が

テージョが間に入り、魔獣を斬る。


ハジメとテージョは背を合わせ合う。

「すまんな!囲まれた!」とハジメ。

「問題ない!好きな状況だ!」とテージョ。


「ホレちまうな!そんなこと言われると!」

とハジメは言うと。

テージョは赤面しながら

「抜け出すぞ!」と少し上ずた声で

答える。


「イチャコラしてるんじゃねえ!」と

チェスキーは弦を操作し、魔獣の動きを止める。


リスボアは馬乗りにされ魔獣の太い左腕が

顔面に叩き込まれる!


「ぶほっ!」とリスボアは血を吐く。


魔獣は笑ったように雄たけびを上げ

トドメの右腕を振りおとす!

その瞬間、

何かの影がリスボアの上を通り抜ける。


魔獣のその腕は届かない。

切断されてリスボアの上に転がった。


「てめえ・・・。人のダーリンに

 何してやがる!」


その声の主は見えないほどの動きで

魔獣の背後に回り延髄の辺りを

爪で突き刺す。


魔獣は煙となる。


「ルエダじゃねえか!

 さっさと手伝え!」とテージョ。


「強化を掛ける!」とチェスキーは

ルエダに言うとルエダの体が一瞬

金色に輝き消える。


ルエダは目を座らせて言う。


「私、最強」























 





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