第35話 エアリアル・デッド・ショット

「ハジメはサボルチに入るのは

魔獣が到達した後だ。」と

コニャックは言う。そして、


守る必要もない者を守る事によって

自分の行うべきことが出来ていない。


本来ならば、すぐにサボルチに入って

内乱をしたものを纏め、他の街に

増援を呼び、サボルチを拠点に

しなければならない。


そうすれば、我々と拮抗するはずだった。

しかし、アイツは足かせを自分からはめた。


「ジェニエーベルとかを頼りに

 しているのでは?」と傍使い。


ジェニエーベルはハジメと共に行動している。

それも無意味だ。

どちらかがサボルチに先に入り

統率を取るべきだった。


ジェニエーベルはよそ者だ。

ここはハジメだっただろうな。


「後ろでバーボンが動いている事は?」

と傍使い。


わからんな。密偵を送り込んでいるが

音沙汰がない。駆除しているのだろう。

相当な手練れが居る。

そう言う事に長けた。


「魔獣を放ちます?」と傍使い。


あの国は狭いし、出来立てだが

数ではなく、個々が強い。

こっちも出来立てだ。

ジェニエーベルが動いているとはいえ

表だって争いたくはないよ。


「あー、わかりますよ。」と

笑いながら傍使い。


多分、各地で内乱が起きるが

ハジメたちはサボルチにしか

目が向いていない。


「そういえばジェニエーベルと

ルナティアは仲いいんですよね?」


基本的に俺以外は繋がっている。

ルナティアも得体のしれない何かがある。

アスティはそもそも異世界人だ。

バーボンも。


そんなわけわからない奴らに

この大陸を好きにさせてたまるか!


「でも、あなたの考えや作戦?

 行動は何となくバーボンに似ていますよ?」

と傍使いは言う。


俺はな、好き嫌いがないんだよ。

いいモノはいい、悪いモノは悪い。

まぁ自分の判断だがね。


だからアイツの、アイツが指揮官になった

時からの行動を全て吸収した。

あえて言う、アイツは屑だ。


「勝つ」事に対して100を求める。

99では争いをしない。


もしかしたらアイツは俺を知っている。

俺は直接話した事もないし、アイツの事なんて

書物とか、聞いた話しか知らないが。


「どういった事です?」と聞くと


類は類を呼ぶ。興味を抱く。だよ。

なんだかんだ言いながら俺は

ハジメが13人衆頭目になる前まで

この国の指揮官だったからな。


昔も今も、この大陸は

よくわからない世界から来た者に

蹂躙されている。


そんな事は許せない。

そりゃそうだろう、だから俺は

この大陸にあるもの全てを使い

あるべき姿に戻すんだ。


「エアストとエンド・・・。」

と傍使いは言う。


神について聞きたいのか?

私の考えを?


そもそもあいつらは神ではない。

ただの魔獣だ。意思のある魔獣だ。


「はっはっは!」と傍使いは笑う。

「私もそう思いますよ!」と。


「そもそも、エアストとエンドは

 この地に住む者から生まれた。・・・と

 言われています。」


「ならば、神は他に居る」

「私はね、そいつを探してるんです。

 だからあなたについている」

と傍使い。


知ってるさ。私はお前に利用されている。

それでもいい。現在としてお前は

私の力になっている。

問題はない。


お前がその神とやらに会って何をしようが

私は私の理想の国を、この大陸を

作るよ。


まぁ、違ったらその神とやらが

私を罰するのだろうね。


しかし!今まで!罰せていない!

ならば!私は私の思うがままに行動する!

それが神の意思だ!そう思っている!


そして、惨殺の時間の始まりだ。

サボルチの街を廃墟とする!

あの街を廃墟にしてこそ、民衆は

私にひれ伏すのだ!


私は神に愛されている!


傍使いは言う。

「神は偉大ですね、エンドもエアストも

 形無しだ」と苦笑いする。



それから2日後、サボルチに

魔獣の軍勢が侵入する。



「ボルドー!おかしいぞ!魔獣なのに

 統率が取れている!」と言うと


「兎に角、1匹ずつ仕留めろ!

 戦いの出来ない者を守れ!」とボルドー。


「無理だ!あいつらおかしいぞ!」


全体が完全に混乱してしまっている。

ボルドーは思う。

「頼む・・・。早く来てくれ」と。


しかし、ジェニ達は移転を希望する、いわゆる

難民たちの警護の為に思うように

進めていなかった。


吸血族が応戦していが、押し返すことができない。

「戦闘の出来ない者を一カ所に集めろ!

 守るに守り切れん!」とボルドー。


「これだから、素人が内乱とかをするのは

 ダメなんだ・・・。」とボルドーは

眼を閉じ思う。


「いかん!魔獣が5匹ほど入り込んだ!」


ボルドーはそこに向かい肉弾戦をするが

手が回っていない。

「なんだこいつら!戦闘の仕方、が

 解っている!」


ボルドーは囲まれ防御だけで

手一杯になってしまう。


「なんだ、この強さは。まるで

 冒険者パーティを相手にしているようだ」


「民衆を建物に入れろ!

 守り切れん!」とボルドーは指示をする。


民衆の損害が尋常ではないほど出ているが

死者は少ない。

吸血族は自身を顧みずに建物に誘導する。


「守ってくれよ!絶対だ!」


誰かが言った、人間のその言葉に吸血族は

心が傷つく。

しかし、それでも誘導を行う。

魔獣の攻撃を受けつつも民衆を守りながら

建物に誘導する。



「無理だ・・・。ボルドー!ムリだ!」と

吸血族の誰かが言ったその時



エアリアル・デッド・ショット!



その声と同時に様々な色合いの閃光が

魔獣たちを貫く。

魔獣たちが数匹ほど煙となり灰となる。


「言われてきてみればなによ、これ」

その声の主は続けて

「メスカル!魔獣の気を引き付けて!

 防御結界を張る!」

と言うと、さらに魔法を唱える。


ディフェーサ・ペルフェット!


民衆が避難した建物の入り口に

その呪文が張り付く。



「お前って、いつもいい所に来るよな?」

とボルドーは言うとその者の名前を言う。



「ソミュール、よく来てくれた」




















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