第34話 統合の仕方

「お前があれを殺したことを

 後悔しているならば!あれが

 殺すはずだった人間を!私が

 殺す。それで問題なしだ!」


そうテージョは言うと荷馬車を降り

一人の少女世の前に立つ。


「すまんな」とテージョは言う。


「きゃあああああ!!!」と

少女の叫び声がする。


あわてて外に出るジェニ!

やめろ!テージョ!


テージョを見ると少女をくすぐっている。

「くやめてえ、くすぐったい!」と少女。


呆気にとられるジェニ。それを見て

テージョは言う。


「いいか?ジェニ。結果として魔獣、いや

 あの生き物は死んだ。しかし、この少女は

 生きている。」と言うと続ける。


逆もある。

あの魔獣の様な生き物が生きて

この少女が死ぬ。

もちろんどちらとも殺されない

事も出来ただろう。


殺したのは確かだ。しかし、それを

後悔する時間を、

これからどうするかに使え。


でなければ、お前が救った命が

殺されてしまうぞ。

お前が相手を殺して助けた命だ。

最後まで責任をもって守り通せ。


守る者を間違えるな。

残念ながら、これは戦だ。


後は自分で考えろ。


テージョはそう言うと

先頭で警戒をしつつ進む。といって

手を振り前に進んでいった。


「ジェニ、俺は万だ。間接的なモノも含めて

 人間を殺した数だ。」

そうハジメは言うと続ける。


お前個人だけだったらいいだろう。

お前の仲間や目についた者を

守るだけなのだから。


しかし、お前は国主だ。

お前の国の住民が殺されかけた場合は

相手をやるしかないんだ。


あのルナティアさえもお前の国を

滅ぼした。何千という人間が

死んだはずだ。


天秤にかけるな。

はき違えるな。


「俺はな・・・。」とハジメは

話を折り、続ける。


エンド討伐戦の時に仲間をこの手で

殺した。


俺達はエンドの間の目前で既に

少数しかいなかった。

一人の回復魔法使いが腕と足、そして

眼に傷を負っていた。


回復魔法士はそいつしかいなかった。

自身で回復も出来なかった。


そいつが居る事で、そいつを守る必要が

あった。しかし、そんな事をすれば

残された5人は戦力をそがれ

多分、全滅をしただろう。


俺はそいつを殺した。


でなければ、生き残れる可能性がある者も

死んでしまうからだ。


何度でも言う。

敵と味方を天秤にかけるな。

重いのは必ず味方だ。


殺しまくれとは言わない。

選択として、間違えるなってことだ。

そして、甘っちょろい考えで

両方を救うなんて考えるな。


バーボンに聞いたことがある。

向こうの世界の事を。

お前は向こうの世界で育った。

ハッキリと言う。


向うとこちらでは有り様が違う。

今、俺達が守っている民衆だって

死が隣にある事はわかっている。


向うの世界では、特にお前たちが

いた「日本」と言う国では

それがわかっていない。


逆に、生きるという事もだ。


「相手を殺せとは言わない。

 守るモノを見失うなという事だ」


この世界のモノ全ては皆、

敵も味方も生きる事に覚悟を決めている。

結果がどうなってもだ。


「わかっています・・・。でも、

 割り切れないんです。」とジェニは言う。


「割り切れるわけないじゃないか」

とハジメは言う。


国を背負う、民衆を守るという事は

そう言う事だ。

もっと上手く言えればいいが、俺は

残念ながら言葉足らずだ。


そう言った所の教えはバーボンよりも

アスティがいいぞ?と笑いながら言う。


「ジェニ、敵の無力化という事で

 あの魔獣たちをもっと調べるぞ」

とハジメは言う。


その言った事の深い部分を感じジェニは

頷く。

救えるならば救う。無理ならば諦める。

この世界に生きるモノは皆、一生懸命だ。

ならば、俺も一生懸命やってやる。


意味は違うが

「命」を「懸」けて「一」つの「生」を

守ってやる。それが俺の一生懸命だ。



黄の国 コニャックの部屋


「出て行った者を追わないんですか?」

と傍使い。


追わない。当初は素材として欲しかったが

ありゃ、ダメだ。戦力にならない。

やはり、基礎能力は大事だと知った。


それに加え、

最初は人間に魔獣を統合したが

それも失敗だった。逆だった。


魔獣に人間を統合するのが正解だった。


「意思・・という事ですね?」と

傍使い。


人間に魔獣を統合した場合と

魔獣に人間を統合したん場合。


前者は基礎能力が人間に近く

意思が魔獣になる為に

使い物にならない。


後者は基礎能力が魔獣で

意思が人間なので・・・。

自分がとても強くなった気になる。

まぁ外見は魔獣だけどな。

しかし、遣りたい放題できる。


力で何事も解決するバカには

さぞ、素晴らしい事なんだろう。


サボルチの反乱分子を殺してこいと

言ったら行っちゃったよ。

「お前たちがその街を今後

 好きにしていいぞ」

とも付け加えたんだよ。


「結局向かったのは何匹・・・いや

 何人?と言った方がいいのかな。」

と傍使い。


130だ。110がサボルチで

20は他の街の反乱分子・・・。

愚民どもを潰して回れと言ってやった。


「良く集まりましたね。というか

 比率おかしくないですか?」と驚く

傍使い。


サボルチ、あそこだけは

必ず制圧しなければならない。

それも瞬時にだ。


おかげで金貨3000枚使ったよ。

ハジメのおかげだ。ため込んでいた。

使わない金は、ただの鉱石だ。


「そういえばハジメ君も貴族でしたよね」

と傍使い。


昔、貴族は選ばれた人間だと言ったら

あいつは「違う」と言いやがった。

私達が指導することで国家は成り立つという

事を理解していない。


国は三角形が一番理想だ。

四角では決められることも決まらない。

上が「こうだ」と言わない限り

永遠と議論が続く。


少数派の意見をいちいち聞いていられるか。

そんなことしたら少数派の

「声がデカいだけのバカ」のいう事に

振り回され、混乱してしまう。


「だからこうなった、と?」と

傍使い。



そうだ、だからこうなった。

































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