第32話 別の生き物

「このまま首都を目指そう!」

「いいや!まずは近くの街だ!」

「俺達は戦うぞ!」


民衆は勝った喜びで

気分が高揚している。


ハジメは女性を抱えながら

皆の前に立つ。

「お前らはそんなに人を殺したいのか」

「お前たちはそんなに死にたいのか」

そう言うと抱えていた女性を

近くの者に渡す。


「サボルチに向かう。強要はしない。」


ついてきたい者だけでいい。

この先どうなるかわからないしな。

サボルチも貴族派が頭だが

ここよりも貴族派の力は弱い。


そこならばこの街よりも

住みやすいし、生きやすいだろう。

そこまでは俺が守ってやる。


「この国をただすんじゃないのかよ!」

民衆から声が聞こえる。

「俺は戦うぞ!」「そうだ!俺もだ!」

と既に興奮状態になっている。


勝利に酔っている。


「俺は止めない。しかし、俺と共に

 来る者は最後まで面倒は見てやる」

ハジメは冷静に言う。


「ただ、ひつとだけ言うぞ。俺達が居ないと

 お前たちは必ず死ぬ。絶対だ。」


「そんなこと覚悟の上だ!」と

どうにも止まらない。


「わ、私達はハジメ様について行くよ」

そう言うのは年配の者と子供連れの

者達だった。


「いいのか?まじであいつら死ぬぞ」

とテージョは言う。


「お前たち、どうせなら絶対に勝ちたくないか?」

ジェニは前に出る。


お前たちはバーボンと言う男を知っているか?

今俺達の国でこの国を救おうと作戦を

進めている所だ。


お前たちが勝手に行動すれば

勝てる者も勝てなくなる。


バーボンさんは言った。

サボルチから進行を始めると!


そうジェニは言うと


「ま、まじか!本当にバーボン様も

 参加してくれるのか!!」

全員が歓喜をする!


「勝つためにサボルチに移動する!」

とジェニは言うと


「ハジメ様は相変わらず言い方が

 下手だな!」と全員が笑う。

「そう言う説明をしてくれれば

 俺達も納得するのにな!」


全員が移動準備を行う。

「持っていくものは必要な物だけにしろ!

 どうせそのうちに帰って来るんだ!」

そうハジメは言うと


「お前・・・バーボンに似てきたんじゃ

 ないか?そっくりだぞ。はったりが。

 それに金をちらつかせるとかも。」

とジェニにむかって言う。


「まじですか!?」と本当に困惑するジェニ。

「ちょ、ちょっとマジでショックです。

 ちょっと休みます・・・。」とまで言う。



数時間後


「それでもこれだけか・・・。」と

ハジメは見渡す。


「約300ってとこか」とジェニ。

「まぁ、守りやすいっちゃあ守りやすい」

とテージョ。


「残りは?」とジェニはハジメに聞く。


「首都はやめてほかの街に合流するそうだ。

 ・・・すでにこの街を落としたと

 伝達の者が走ったそうだ」

と悔しがるハジメ。


「もう止まらないのかもしれませんね」

とジェニ。


「いや、止まるさ。全滅と言う形で」

「行くぞ!サボルチだ!」と

ハジメはジェニの顔も見ずに言うと

民衆とともに歩いて行く。



黄の国 コニャックの部屋


「どうやら失敗したみたいですね」

と傍使い。


そんな事はないさ。相手が強かっただけだ。

ジェニエーベルか・・・。

そういえばバーボンも居たな。


魔獣に関して言えばまだ改良の余地は

あるさ。

普通の人間だったからな、今回は。

次は犯罪者どもを使おう。

普通より強いしな。

あぁ、そうだ冒険者もだな。

ランクAくらいなら金でどうにかなるだろ。


統合させるのは上級で行こう。

上級魔獣。うん。そうしよう。


「そんなに簡単に行きますかね」と

傍使い。


そうだなぁ・・・。やってみるしか

ないんじゃないか?

よし!そうと決まればすぐにやるぞ!



「いいますが、人間だけにしてくださいよ?

 亜人とか使わないでくださいね」と

笑いながら傍使いは言う。


お前を敵に回したくないよ。

お前は得体のしれない力があるしな。

だから傍に置いている。金でな。


「飼い被りすぎですよ、ただの亜人や

 精霊が好きなだけの学者ですよ」


良く言うよ。もしも・・・亜人を、

亜人に魔獣を統合したとしたら?


「あー。大丈夫。あなたを殺しはしません。

 ただ、死ねなくなるだけですよ」


未来永劫苦しみながら生きるのか、俺は。

それは嫌だから人間だけにしとくよ。



サボルチへの道中


ハジメを先頭に民衆の右横をテージョ

後ろをジェニ。

左側に戦闘になれている者を置く。


「一週間はかかるかな・・・。いや

 さらにかかるかもしれないな」

ハジメは思う。


「もう少し護衛が欲しいな・・・。」

とテージョは思う。


道中、弱めの魔獣が出てくるが

民衆は冷静に対処している。


「やはり、下級、いや超下級の魔獣で

 ないと無理か、従わせるのは」と

ジェニはおもう。


ジェニの前には檻に入れられた魔獣が居る。

その魔獣は暴れもしないでジェニを見ている。


ジェニは少し考え、その魔獣に向かって

微笑む。魔獣は何と目を伏せる。


「休憩だ!前のハジメさんに伝達をしてくれ!

 そしてテージョとハジメさんを呼んでくれ!」

慌てながらジェニは言う。


全員が休憩を取る中

「どうした?ジェニ君」とハジメ。


「ただ、私が思った事なので」と

前置きをして話す。


この魔獣は意思がある。感情がある。

見ててくれ。


そう言うとジェニは檻の鍵を開け

中に入ろうとする。


最初は威嚇をするが・・・。

その中の魔獣は檻の隅に行く。

そして顔を見せないように下を向く。


先ほどの戦闘で煙とならず

死骸となった。

これは魔獣ではない。別の生き物だ。


「ジェニ君、死骸を私に解剖させてくれ。

 何かがわかるかもしれない。」

とハジメは言うと


「勿論です、その為に持ってきましたし」

とジェニは言うと


動きながらできますか?

私が先頭を行きます。テージョは

後ろについてくれ。


「ほいさ」とテージョは言う。


そして休憩を終えサボルチへ歩き始める。

ハジメは馬車の中で死骸の解剖を始める。





















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