第31話 まじで無理な貴族

魔獣の中に突貫して無双をするテージョ。

「中級程度なら!」


テージョの背後から矢が放たれる。

確実に魔獣の眉間を打ち抜く。


「背後は任せろ!ガンガンいけ!」

とジェニ。


お前たちは魔獣を相手にしてくれ!

兵士は俺達が受け持つ!

とハジメ。


ランクSの冒険者のみ魔獣を相手しろ!

その他は部隊を解体して俺が指揮する!


臨機応変の対応をするハジメに

「さすがだ」とジェニ。


「しかし・・・なぜ魔獣が居る!」

とハジメは言う。


ジェニは試す。

「引け!魔獣よ!」と念じるが

何も起こらない。「無理か」と思う

ジェニ・・・。


踊るように棍を振り回すテージョ。

顔が笑っている。


「本当に数が多いな!」とジェニ。

矢が、追いつかない!

そう言うと神器キリシマを取り出す。

テージョの背後に向かおうとする

魔獣を1匹ずつ仕留めていく。


「テージョ!おかしい!」とジェニ。

「ああ!私も気づいた!」とテージョ。


魔獣が獰猛ではないのだ。

普通の魔獣ならば狂ったように

見境もなく襲い掛かってくるが

ここに居る魔獣は「少しおとなしい」

感じだった。


それに・・・。死骸が残っている!



パップの代表の部屋にて


「くそ!くそ!くそ!なんで俺の

 街なんだ!」といらだつ男。


コニャック様もコニャック様だ!

あんな使えない魔獣を投入して!

どれだけ金を出したと思うんだ!


そもそも俺は貴族だぞ!

なんで平民どもは

私についてこないのだ!


今まで、住む場所も与え、仕事も

与えてやっているのに!

それに対して私に金を払うのは

当然ではないか!


ここは俺の街なんだ!当たり前じゃないか!

こんなことなら平民、いや!愚民どもを

さっさと売り飛ばせばよかった!


「コニャック様よりの伝達です」と

メイドのような服を着た女性が手紙を渡す。

それにはただ1行書いてあった。


「貴族は逃げるなよ」


それを握りつぶす男。

「あぁ!やってやるさ!剣と盾を持て!」

と、そのメイドに言う。


「自分でやってください」と

うすら笑いをするメイド。


「な!なんだと!?」と驚く男。


貴様もか!貴様もたてつくのか!

仕事も与え、この屋敷に住むことを

許可しているのに!


「あなたはお馬鹿さん?」とメイド。

賃金の発生しない仕事なんて仕事では

ないわ。

住むところを与えた?物置じゃない。

それに、体目当てじゃないの!


そうメイドは言うと剣を投げつける。


男はそれを避けると剣を拾い

メイドを斬る。


「十分じゃないか!平民には!

 食事も与えたではないか!」


「1日にパン2つと野菜スープしか

 あ・・・あたえなかった・・くせに。

 ハジメ様に・・・斬られ・・・ろ。」

そしてメイドは息を引き取る。


「ああ!俺は貴族だ!やってやるさ!」

男は豪華な鎧を身にまとう。

剣と盾も装備する。


「ふふ、ははは!どうだこの格好!

 これこそ貴族だ!待っておれ!ハジメ!」

そう言うと男は屋敷の外に出る。



場所は街の中


「もう全く手ごたえないぞ!

 なんだこりゃ!」とテージョは

棍を振り回しながら言う。


「テージョ!数匹捕らえろ!

 あと死骸もだ!

 今後の事もある!調べたい!」

とジェニは言う。


そして同時に近くの仲間に

大きめの檻を持って来るように伝える。


「ジェニ!」後ろからハジメが呼びかける。

向うの兵士はほとんど眠ってもらってる!

今縛り倒している!

このまま、ここの貴族の屋敷に突っ込む!


「魔獣は冒険者に任せておけば問題ない!

 3人で行こう!」とジェニ。


そうして3人は屋敷の前に到着する。

そこには兵士数名とこの街の代表の貴族が

立っていた。


「俺達は殺し合いをしたくない!

 ここは引いてくれ!」とハジメは言うが


「なにを寝ぼけたことを!反乱を起こして

 おいて、悪いのはお前たちじゃないか!」


そしてその貴族は剣を構える。


ジェニはハジメの肩に手を置き

「多分、何を言っても無理ですよ。

 聞く耳持つ男であれば内乱なんて

 起きませんよ、この街で」と言う。


殺さない程度に攻撃して

縛り上げましょう。部屋に閉じ込めておけば

ハジメさんに付いてくる人達を

余裕をもって移動準備させる事ができます。


ハジメはうつむき唇をかみしめる。

「俺がやる、俺だけがやる」と

右手に持った斧を引きずりながら

貴族の前に立つ。


「だから俺はハジメを殺せと言ったんだ!」

そう言いながら剣を切りつけようとする

貴族であったが・・・


簡単にハジメは避けると剣のみを

斧で粉砕する。そして手から落ちた剣を

斧でさらに粉々につぶす。そして

それが終わると貴族を蹴り倒した。


「やれ!やってしまえ!」と周りの

兵士に声をかける。


「今なら逃げてもいい。私は強いぞ。

 私は手加減が出来ない女だ。」

棍を右手に持ち構えるテージョ。


その迫力に押され兵士たちは

動けないでいる。


その後ろから一閃の光。

一人の兵士の股の間、股間すれすれに

矢が放たれる。


「俺は外さないぞ?俺とテージョは

 この国とは関係がない。お前たちが

 死のうがどうなろうが関係はない」

とジェニ。


「テージョ!?あの棍使いのテージョか!

 女3人でこの街の誘拐組織の50人を

 なぶり殺した!」

と敵の兵士の一人が言う。


「50人じゃねえよ、64人だ。」

(本当は全てウォッカさんだけども)

テージョは言う。


「一人金貨5枚だ。それを持って

 どこかへ消えろ」とジェニは言うと

金貨の入った袋を投げる。


兵士たちは一瞬固まったが顔を見合わせ

その袋を取るとどこかへ逃げていく。


「き、貴様ら!」と貴族。


「お前もこうしたんだろう?どうせ。」

とジェニは言う。


ハジメはさらに貴族を蹴り飛ばす。


「わ、わかった!仲間になろう!

 どうだ!この街を拠点に一緒に

 謀反を起こそうではないか!」と

その貴族。


「だめだな、こいつ。まじで無理。」

とテージョはため息をつきながら言う。


ハジメとジェニは貴族に轡をかけ

身動きできないように縛り倒す。


そして屋敷に運び込み

一番奥の物置に放り込む。


その帰り、扉が開いている部屋を

見るハジメ。

そこにはメイドが死んでいた。


そのメイドに近づき目を閉じる。

「すまんな、俺のせいだ。

 ・・・ほんとうにすまん」と。


ハジメは唇をかみ、

そのメイドを抱きかかえる。



















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