第30話 魔獣

「・・・わかった。俺の名前を使え」

そう男に言うハジメ。


「見ておけ、ジェニエーベル。

 これが国が亡ぶ瞬間だ」

とジェニに向かっても言う。


「しかし」と言うと


国が興る瞬間でもある。

争いは生き死にに目が行きがちだ。

しかしどの国にしても、過程として

争いが起こる。


力にしても経済にしても。


「俺は腹を決めた。」


ここまでくれば俺が立つことが

最善だ。勝っても負けても。


勝った場合は俺を慕ってくれる

者達を俺が守る事が出来る。

負けた場合でも俺の首一つで

平民派の命だけは守る事が出来る。


ジェニは思う。

「この身に替えてでも守る。」

という事を。

俺は母さんに守られた。

ずっと守ってもらった。


「ハジメさん。俺はあなたを尊敬する。

 でもね」とジェニは言う。


守られている方のことを考えたことは

ありますか?

俺は母さん、ミネルヴァ様に守られ

続けていた。母さんが死んで初めて

わかった。


「生きててほしいんです」と。

「この身に替えてでも、とか

 言わないでください」というと

涙を流すジェニ。そして続ける。


現状、争いは始まっています。

今後取れる選択は


ひとつは

ハジメ様が出て行き争いを止める。

しかしこの場合は首謀者として

ハジメ様は処刑されるでしょう。


もうひとつは

ハジメ様が主導して争いを続ける。


この争いに勝って、可能な限り勝って

ハジメさんに従う者だけでも

受け入れる国を作る。

負けた場合は処刑。


どっちにしろ、ハジメ様が生き残るには

もう戦って、勝つしかないです。


「お前はバーボンの世界で過ごしていた。

 向こうの世界でもこういうことはあるのか?」

とハジメ様は言う。


「あります」とジェニ。

この世界よりも頻繁に起きています。


「そうか」とハジメは言うと

ハジメはアイテムボックスから

斧を取り出す。


その斧を持ち民衆の前に立つ。

そして声を大にして言う。


遅くなったな!趣味の読書に没頭して

こんなことになってるって思わなかったよ!

誰か言ってくれよ!この引きこもりに!


民衆から笑いがおこる。


いいか!この争いの主導者は俺だ!

こんな旨い役割は誰にも渡さないぞ!

だから勝って俺をまた頭にしろ!

そしたら昔よりいい国を

作ってやる!


ジェニエーベルが前に出る。


「俺は今話題の紫の国の国主だ!

 俺の国はハジメ様を支持する!」

そうジェニが言うとハジメは

驚いた顔でジェニを見る。


そして目を閉じて微笑む。


「だそうだ!しかしこいつの国には

 あの屑なバーボンが居る!

 信用するなよ!」


また民衆から笑いが起きる。


でも戦においてあいつほど信頼がおける

奴はいない!

その紫の国が後ろ盾となる!勝つぞ!


「サボルチはもう動いていますか?」

とジェニはハジメに聞く。


多分、もう争いは起こっている。


「ボルドー!サボルチに行って

 戦局を拮抗まで持ち込め!」とジェニ。


「民衆の盾となれ!出来るな!?」

そう言うと


「御心のままに」とボルドーは

胸に手を当て首を垂れる。


「この中に吸血族はいるか!」

とボルドー。3人の者が前に出る。


「ボルドー様、指示を」と首を垂れる。


可能な限りの吸血族に伝えろ!

サボルチに集えと!


「じゃ行ってくる」とボルドーは

拳を突き出す。


それに合わせるジェニ。


ハジメも突き出し合わせる。

「すまんな、撒き込んじまった」と。


「条件として、国が興ったら

 うちと友好関係を結んでくださいよ?」

と笑うジェニ。


折角だ。部隊編成をしよう。とハジメ。

「必ず勝つために」と。


ジェニ達は編成を行う。

第一部隊はハジメが率いる事となる。

第二部隊はジェニが

第三部隊は遊撃としてテージョ。


「多くの人間が死ぬな・・・。」と

ハジメは目を閉じる。


明け方と同時に進行するぞ!

それまでは休息だ!


「戦局はどう見ます?」とジェニ。


この街は勝利するがサボルチに撤退する。

あまりにも首都に近い。

勝利条件は平民派全員を

サボルチに移送だ。


サボルチを拠点とすることが

一番の目標だ。あそこは平民派が多い。

ここで勝って次にサボルチに向かえば、

サボルチが戦地となると言うだけで

多分貴族派は撤退する。


その後に2~3の街を取り込めば

それで国となる。

防衛として考えればそれが限界だ。


あとはこっちに来る者達を守るのが

仕事だな。


「そういえば」とジェニはハジメに聞く。


なんで青とか、赤とか。この大陸は

色の名前で固有の名前はないんです?


あるぞ?国の名前。長いんだよ。


青は「スオマライネン・マルヤリコーリ」

赤は「コネリアーノ・ブロセッコ」

黄は「イシュケ・バハー・エールナック」


ま、マジで長いですね。とジェニ。

因みに紫は?


「オリギナリ・リエトゥヴィシュカ・デクティネ」


あ、紫でいいです。とジェニ。

ハジメは苦笑い。



そして朝が開ける。


基本的に戦闘職ではない民衆だ。

これは頑張るしかないな。

そうテージョは思う。


「お前たちは私が撃ち漏らした

 兵士を倒せ!」と後方に向かって言う。


兵士の真ん中に突っ込むとテージョは

無双を行う。

「力的にはランクAくらいか。」

問題ない。行ける。しかし

貴族派の兵士たちは下がっていく。


「びびったのか?」

そう思うが、テージョの目の前に

ありえない光景が広がる。


「魔獣だと!?」とテージョは驚く。


「ハジメさんに伝えろ!魔獣が居ると!」

そうテージョは言うと部隊を

後方に下げる。



「うはぁ、50くらいか!

 ・・・おもしれぇ。遣ってやる」























 






















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