第29話 内乱
「まさか平民派が全員落選とはね」
とテージョ。
「まさかじゃないだろう、当然の
結果さ」とお茶を入れながらジェニ。
テージョはその出されたお茶を飲みながら
「こんごはどうなるのかなぁ、この国は」
とジェニに聞く。
「わからないな」と言うと
おれは他国の者だ。
とやかく言う筋合いはない。
権利もない。
「ハジメ様は今後どうするって?」
とお菓子をジェニに差し出す。
ジェニはそのお菓子を食べながら
「ここに残って住民を守るってさ」
「でも議員でも何でもないんでしょ?」
とテージョは言うと
「立場なんてどうでもいいさ、守る
という事はね」とも続ける。
「大変だ!向こうの筋の店が!」
とドウロが飛び込んでくる。
全員がその場所に行くと兵士たちが
店を荒らしている。
「いいか!法に違反することは
こういうことになるんだ!」と
笑いながら。
どうやら宿で起こっていた事と
同じであったが
その店の店主が役人を
ぶちのめしたらしい。
店主は縛り上げられ連れていかれる。
「お前たちも覚悟しておけよ?」と
兵士の一人が言う。
そう言うと引き上げていった。
黄の国 総統の部屋にて
コニャックはそば使いの男に言う。
この世は金だ。
この地位も買えてしまった。
そしてこの地位を利用すれば
その金も入ってくる。
「次はどうするんです?」と
傍使いの男は言う。
そうだな、「神」といわれる
地位も買えるのだろうか。
よし、神と言う地位を買う。
いくらかかるかわからないから
バンバン吸い上げろ。
どうせ平民なんて存在意義が
我ら貴族の為に作られたものだ。
「そんなことしたら嫌われちゃいますよ。
神って好かれないといけないのでは?」
そもそも貴族は王に仕える者だ。
しかし、その王は王族はいない。
だからこの国は歪んでしまった。
俺が、貴族が崇拝する神になれば
いいんだ。
俺は「王」じゃなく総統となった。
何故ならば俺は万能だからだ。
実際俺の言ったとおりになったしな。
俺には資格がある。
貴族にさえ好かれれば
その下は関係ないってことだ。
そう言う仕組みにしたしな。
「大変です!総統!パップの街で
平民による内乱が起きました!」
兵士の一人が報告に来た。
そんなもの潰せ。逆に見せしめに
する為に内乱に参加した者を
全員殺せ。
我ら貴族に歯向かう愚かさを
わからせるんだ。
ちょうどいい機会だ。
アレを使え。思ったんだよ、
魔獣は何のためにいるのか、と。
それはな・・・
こういう時に使うためだ!
場所はブルダの宿
「大変だ、パップの街で内乱だ」
飲み屋の使いがやってきて言う。
ハジメは驚きながら席を立つ。
「だめだ!やってはいけない!」
「ジェニ!俺はパップに行く。
民衆を止める!」
慌てながら部屋を出て行こうとする
ハジメをジェニは止める。
「あなたが行けば、理由はどうであれ
あなたが扇動したと思われる」
「それのほうがいい!俺に唆された
事にしないと全員が殺される!」
とハジメは言う。
「行こうが行くまいがハジメさんの
せいにはなるな」とテージョ。
ボルドーもうなずく。
「じゃあ私達も行きます。
ボルドー、テージョも来てくれ」
とジェニ。
マルチネ様はだめですよ?青の国に
問題が飛び火してしまう。
4人は急ぎバイクに乗りパップの街に
向かう。
「もう止まらない・・・。」とハジメは
後部座席で沈痛な顔をする。
勝っても負けても・・・。
勝った場合は呼応するように各街で。
負けた場合は復讐と言って各街で。
という事ですね?と運転をしながら
ジェニは言う。
「そうだ、しかしパップからとは。」
とハジメは言う。
思いもよらなかった?とジェニは聞く。
「そりゃそうだ、あそこは昔から
貴族派が強い街だ。それにこの国で
一番小規模の街だ。」
小規模で貴族派が強い。あぁなるほど。
とジェニは何かを考え付いた。
「そう言う事だ、あそこの貴族派は
無能だ。」とハジメは言う。
俺達が考えた発展計画も無視し
独自で全てを行っていた。
平民が苦しまないように免税とかも
行っていたが・・・。
実際は回収されて懐入りだ。
多分、さらに取り立てたのだろう・・・。
パップの街につくと思った以上の
争いであった。
もう内乱と言うよりも戦地であった。
身近で戦闘していた者達が
ハジメの存在に気づく。
「ハジメ様だ!ハジメ様が参戦だ!」
そう声を上げる。
「やめろ!争いを止めるんだ!」
ハジメは言うが士気が高揚してしまう。
「いったん引け!いったん引けと
伝えろ!」とハジメは意を決して言う。
一時して戦闘が小康状態となる。
「主導した者を呼べ!」とハジメ。
「俺だ、俺が主導した。」
群衆の中から一人の男が前に進む。
「何故だ・・・何故」とハジメ。
「あんたが動かないからだ。俺達は
もう追い詰められていた。今回の
選挙の結果でさらに金をとられる。
明日はいい。明後日が食えないんだ。」
ハジメは黙って聞いている。
「いつまでたってもあんたが
鬨の声を上げない。俺達はずっと
待ってたんだ!」
俺は力で結果を覆すつもりはない!
とハジメは言うが
「じゃあ不正を許せと言うのか!
この街はまだいい!昔から
貴族派が強かった。しかし、
他の街はどうだ!」
「俺達が先陣を切って動けば
他の街も動くはずだ!」
待て・・・。他の街でも起こるのか?
とハジメは聞く。
「俺達が蜂起したら動くはずだ」
誰が決めた!とハジメ。
「総意だ!」と前に出た男は言う。
「民衆の総意で決まっている!」
全員ではないだろう!それは・・・
総意とは言わない!
何処と繋がっている!どの街だ!
ハジメはその男に言うと。
「この街が蜂起したという情報で
サボルチが次に動くはずだ。あそこは
平民派が強い。そこで勝って次に
近隣が動く」
首都を除くとこの国で最大の街だぞ!
どれだけの者が死ぬと思うんだ!
何故動く前に言わないんだ!
「末端の者がどうやって声を届けられる
と思うんだ!しかし!俺達は信じていた!
あんたが動くことを!」
「なんで動いてくれなかったんだよ・・・」
と男は涙をぬぐいながら言う。
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