第27話 勇者誕生

どうすればいいの?勇者になるには。

と美香は聞く。


「あら、嫌がってたくせに」と

意地わるく聞くエアスト。


あなた煽るのうまいわね、と美香。

母様とかジェニとかの強さを

引き合いに出してさ。


やる気になっちゃうじゃない。


「単純に私の加護を受けいれればいい」

とエアスト。


わかりやすく言うと生きている神器。

ウォッカはわかりやすく言うと

生きている魔剣。


生物に対して私やエンドの魔力を

統合させるの。


残念ながらそれに対してどういった

変化が起こるかわからないわ。

ウォッカは歳をとるのが凄く遅く

なっている。それも副作用ね。


もしかしたら未来永劫、死ぬ事を

許されずに、ずっと魔族として

エンドの傍に立つのが宿命と

なったのかもしれない。

眷属を「裁く者」として。


ウォッカに聞けばよかったのに。

魔族になって問題ある?って。


しかしウォッカには神器を持って

欲しくなかったわ。持ってるって聞いて

驚いたし。とエアスト。


何故に?と聞く美香。


あの女は良い事と悪い事の区別が

自己で完結しているからよ。

そのうちにわかるわ。その意味が。


話は戻すけど

私とエンドが同一的なモノならば

貴方もそうなるわ。


「私は問題ないわ」とルナティアは言う。

もしも美香がなってくれるなら

一人ではない。

甘言を言うようだけどジヴァニアの

母もそうならば、ジェニエーベルも

そうならば、

私達は顔も知っている仲同士。


未来永劫、うまくやっていけるわ。

と笑う。


「父様、バーボンは?」と聞く美香。


彼は無理なのよ。私とかエンドの

力が届かないの。


そもそもバーボンとアスティは

向う側の人間よ?

何気にあの二人も歳を取るのが遅い。


魔族、勇者、うんぬんじゃなく

その他の「こっちの世界の人間」とは

違う何かなのかもしれない。


私とかエンドと同じ正体不明の

ナニカよ、あのふたりは。と笑う。


因みに唯・・・いや、ベルジュラックは

どれくらい強いの?と美香。


「あんたそればっかりね。もう

 戦闘狂じゃない」と笑うエアスト。


「全盛期で比べれば」と前置きをし

ジェニエーベルよりも強く

ルナティアよりも弱い。


それが私の見解。とエアスト。

でも、今はもう・・・。


「おばあちゃんならその話を

 受けたかな・・・」と美香。


「聞けばいいじゃない、本人に」

とエアストは言った。


「結論は早い方がいいわ!」と美香は

宝物庫を出てベルの部屋に向かう。


そしてベルジュラックに問う。


「美香?いや、ジヴァニア。あなたが

 遣りたいようにやればいいのよ」

とベルジュラックは言うと


ウォッカが魔族になったのは多分

私の性格を引いたからだろうね。

ただそれが、エアストではなく

エンドの申し出だっただけで。


もしも、この世界が平和になるのに

誰かの犠牲が必要ならば

ジヴァニア?貴方ならどうするね。


もし、私がウォッカが背負うモノを

替われるならば替わってやりたいよ。

そう言うと涙を流すベル。


そういえば、私はジェニエーベルを

ずっと後ろで見守ってやると

ミネルヴァに約束したのに

この体たらくだ。ミネルヴァにも

申し訳ない。


「何言ってるのよ、早く元気になって

 この大陸を二人で旅しようよ」

と笑いながらベルに言う美香。


「そうだねぇ、美香のバイクの後ろに

 乗っけてもらって旅するのもいいね」

と微笑みながら美香を見る。


「約束よ!」と美香。

「あぁ、約束だ」とベルジュラック。


おばあちゃんの代わりに今、私が

皇女の傍使いをしているから

安心して養生してね。と美香。


でも、ここに居る間だけ

だから早く元気になってよね、

じゃないと帰れないよ。と笑う美香。


眼を閉じながら美香の手を左手で握り

右手でポンポンと叩く。

「早く行かないと皇女はふらふらと

 どっか行っちまうよ。探すのに

 一苦労する。」と言いながら。


そして部屋を出る美香。

そこにはルナティアが居る。


「なるわ」とエアストに向かって言う美香。

でも私はあなたのいう事を何でも聞く

事はないわ。あなたがこの世界の

邪魔となったら私はあなたを撃つ。


「そのための魔剣でもあるのよ?」

とエアストは言う。それでいいわ。


宝物庫に向かう二人。

そして加護を受けるジヴァニア。


一瞬、瞳が青く光るがすぐに消える。


「あれ。なんも変わらないじゃない。」

と美香。


なんかさ、俺ってツエェェとか

体に力がみなぎるぜぇ!とか

そう言う感じと思ったけど。


「なんもないじゃないの!」と

エアストに何故か怒る美香。


「しらないわよ!そんな事!」と

エアストは困りながら言うが

その後にすぐに笑う。

多分笑ったのはルナティアだろう。



じゃあこの魔剣は私が貰うわ。

因みにこの魔剣の名前は?と聞く。

それに答えるエアスト。


「魔剣 レーヴァテイン」


あれ?レーバテインって向こうの世界では

魔法使いの杖とかで出てくるわ。と美香。


「しらなわいわよ、そんな事」とエアスト。

あぁ、でもね、と言うと


その魔剣の特性として武器には珍しく

魔力が満ちているの。炎属性のね。

精霊使いの貴女にとってはうってつけの武器よ。


あぁ、確かに・・・。と美香は言うと

剣を両手でしっかりと持ち構えると、

「フェニックス!」といきなり叫ぶ。


剣が炎に包まれ揺らぐ。

剣を後ろに引き前に斬り込むと

炎を纏ったフェニックスに似た残像が

目の前の壁に向かって・・・。

壁を破壊した。部屋も燃える。


「あんたバカじゃないの!?」と

ルナティアは慌てて消火をする。


宝物庫の外から声がする。

「何事ですか!皇女は無事なのか!」と

兵士たちの声。


「だ、大丈夫!ちょっと壁が破壊して

 部屋が燃えただけよ!」

とルナティア。


そして慌てて外に出て兵士たちに

「ちょっと魔力が暴走しただけよ」

と説明する。


兵士たちは何故か安心して

「なんだ、いつもの事ですね!」

そう一人が言うと全員が

「なんだ、いつものアレか」と。


そう言いながら帰っていった。


「あんたも大概なのね」と美香。

「あんたに言われたたくないわ」

とルナティア。


そして二人は言う。

「裁く」というより「破壊」ね、これ。



ちょっと危険な勇者が誕生した瞬間。



































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