第23話 アクイの廃墟

「あれ、ちょっと待って」と

ジェニは言うと


魔方陣を使ってさっきと

同じことをしちゃうと、

箱から出て来ちゃいますよね。


「それだめなやつじゃないですか」

と。そもそも・・・

あの箱の何を俺は守れば・・・。


とりあえず止めることにして。


解った事は魔方陣を展開して

キリシマをかざすとその魔法陣

全体に対して「守る」という事が

出来るという事か。


「じゃあ私は帰るわね。またどこかで

 会えればいいね」といいながら

ドルイダスは勝手に門を作り帰っていった。


その後もおかしい人間達が運び込まれる。

ジェニは魔方陣展開を考えると

足元から魔方陣が展開される。


ドルイダスが作ったモノよりも範囲は

狭いが問題はなさそうだったので

ジェニはキリシマを振りぬく。


「・・・・。あれ?」

魔獣は出てこなかった。


再度振りぬく。

「頼むから!出てこい!」と。


今度は体内から出てくる。

そしてジェニはもう一度体を

回転させながらキリシマを振りぬくと

なんとその範囲の魔獣は煙となり

魔獣の核となった。


「思ったんです。魔方陣で神器の

 力が増大されているならば

 これくらいの魔獣なら威圧だけで

 倒せるのではないか?と」

とジェニはハジメに言った。


「しかし、1回目は何故失敗したんだろう。

 初めてだったからかな・・」と

少し不思議に思った。


「演説どころじゃなくなりましたね」

とハジメに向かって言う。

「それよりもこっちの方が大事だ。」

とハジメは言う。


幾度か魔方陣を描き魔獣を体内から

出して殲滅していく。


告知が上手くいったのか住人達は

上半身は炎、下半身は土属性の

服を着ている。


突然、鐘が鳴り響く。

「終わったな、投票の開始だ」

とハジメ。


「もう大丈夫でしょう。」

とユキツーは召喚された精霊を

帰していく。


「ねぇ、魔獣を体内から出す

 薬を作ればどうかしら。」

とマルチネは言うと


「実はな、それ作ろうとしている。

 そして入らないようにする薬もな」

とハジメ。

「専門分野だもんね」とマルチネ。


「もう少し時間があればぁ・・・」と

ハジメは空を見上げて言った。

動きがおかしいものが居たら

ブルダの宿に来てくれ。


住民にそう言うとハジメと

ジェニ達は移動した。

勿論、魔獣が入った箱を抱えて。


一方 コニャックの屋敷では


「どうやら魔獣をばら撒いても

 効果があまりなかったようですね」

と一人の男が言うと


「問題ないよ。アレは只だのトドメだ。

 あのチンピラの様な男も捕まったのだ、

 逆に良かったな」とコニャックは言う。


これで明日には、この国は私達貴族のモノだ。

とコニャック。


「またまた、貴方の国でしょ?」と

男は笑いながら酒を注ぐ。

「魔獣をばら撒いたとして、私達には

 襲ってこないでしょうね?」とも。


「体に入らければさほど問題ではないよ。

 私もいろいろと調べたしな。

 体に入ってこないようにする薬も

 出来た。お前も飲んでおけ」と

コニャックは言う。



そしてブルダの宿。


「今後の予定は?」とテージョ。


まずは薬を作る。ほぼ構想はあるので

それを作って確かめるだけだ。

そうハジメは言うと


「基本的に」と話を始める。


魔獣を体内に入らないようにするのは

魔法の付与された液剤を使う。

魔獣を寄せ付けない魔法を使う。

体力向上のポーションと同じ概念だ。


体内から出す薬はそれを基本として

魔獣が嫌う何かを混ぜて作る。

箱いっぱいいるんだ、徹底的に

調べる。


「そんな事よりも選挙どうするのよ」

とマルチネ。


多分、落選だろう。とハジメ。

「でもあれだけの民衆が・・・」

とジェニ。


「どんなに票を取ろうが落選するよ」


あの時に邪魔も入らなかったしな。

相手は余裕なのだろう。

多分、選挙管理の方も買収されている。

もしくは脅しだろうな。魔獣を使って。


「マルチネさん、手伝ってくれ。

 魔法の系統は多分、貴方が得意とする

 ものだ。」とハジメは頭を下げる。


「もちろんよ」とマルチネは笑う。


「お揃いだな、遅くなった」とボルドー。

魔獣の出どころがわかったぞ。と。


サボルチと首都の間にある、今じゃ

誰も立ち寄らない場所。

昔アクイと言う街があった場所だ。


「そ、そこ流行り病で住民が

 全員死んだ街じゃないの」とマルチネ。


「あぁ、流行り病の発生源だった街だ。

 今も皆怖くて誰も立ち寄らない。

 街道すら封鎖されている」


「魔獣がその街の、その病気を

 持ち込むってあるんですか?」と

ジェニは聞く。


「聞いたことはないな」とハジメ。

流行り病と聞くが、人間が作ったモノ

とも言われている。


バーボンの義母に当たる人は

人間が作ったモノと断定はしていた。


実際そこに行ったとして掛かるものなんですか?

と何かを心配しながらジェニは言う。

「ピスコか」とボルドー。


「いや、もう大丈夫だろう。結構な

 年月が経っている。それに薬剤も

 撒いている。」とハジメは言うと


実際、俺も何度かは行っているが

この通り元気だ。しかし、

薬剤のせいだろうな、

珍しい生き物や植物がそれはわんさかだ。

もしかしたらそれは魔獣だったかも

しれないな・・・。


だからなおさら気味が悪く誰も

近づかない。


「なんでそんなところに行ったんです?」と

ジェニは聞く。


「そりゃぁソコも、この国だ。

 祈りに行くに決まってるだろう」と。

まぁ観察もかねてだがな。


そう言った所の方が魔獣は出現しやすい。

何かの感情が生まれる所だ。


悲しみや欲望と言ったな。

鉱山や洞窟、森林だってそうだ。


「あぁそうか」とハジメは言うと

一つの仮説を立てる。


洞窟も鉱山も魔獣が住み着く、いわゆる

冒険者にとっての冒険の場所。

最奥にボス級魔獣が居る。


もしかしたら、そこはそういう風に

なったかもしれない。

新しく出来た場所。

「アクイの廃墟」とでも言うのかな。


そう言うと寂しげにハジメは下を向いた。












 













 

 















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