第22話 精霊女王

「だめだ、キリがない」とジェニ。


大変だ!と一人の精霊使いが慌てて

走って来る。

「精霊が来なくなっちまった!」と。


話を聞くと街の精霊使いが20人ほど

呼び出しているが2~3匹くらいしか

出てこなく、召喚すら出来ない者も

いるらしい。


「精霊も数に限りがあるのか?

 初めて知ったぞ」とハジメ。


「いや、無いはずだ。美香さんに

 聞いたことがある」とジェニ。


精霊召喚はまず、この辺りに居るモノに

声をかけて具現化さえる。基本的に

野良と言われる精霊だ。

下級の精霊は結構いるらしい。


もしも、対象が居なくても魔方陣で

どこからか召喚できるので

必ず呼び出せると。


「しかし・・・精霊も意思を持っている

 とも言っていた」とも言う。

「気が乗らないなら来ないかもしれない」

とも言っていた。美香さんは。


だから精霊使いは精霊に対して

対等の立場で接し、使役する者ではなく

自分と対等の仲間と思い接する。

そうしなければ精霊も言う事を

聞いてくれない・・・。と。


「じゃあ、精霊はこの状況をわかっているが

 気乗りがしないという事なのか!」

どういう事なんだ!とハジメは言う。


「人間に対していい思いを

 持ってないからですよ」とジェニは

寂しそうに言った。


じゃあ今いる精霊はこの近辺の精霊であって

それはすでにほぼ具現化できている。

しかしどこからか召喚する精霊は

呼びかけに答えず、出てきていないと。


ハジメは考えながら言う。

「もしかしたら」とジェニは言うと


「精霊にとって」

いい機会なのかもしれませんね。

今までの行いに対して・・・、

「人間の行い」に対しての意思表示として。


「そう言われれば、俺も何となくわかる」

もし俺が精霊だったら「ざまぁみろ」

と思うかもしれない。


そう言うとハジメはうつむき唇を

かみしめる。


「仕方ないですね、今回だけですよ」

とユキツー。


マルチネ、手伝ってもらえますか?

それとブルダ。タクトを貸してください。


そう言うとタクトを両手で持つ。

「これは良いタクトです。大切に

 使っている。そして魔力も良い」


精霊を大切にしている証拠だ。と

ユキツーは言う。


「マルチネ、空間魔法の魔方陣であれば

 なんでもいいです。展開してください。

 出来れば大きめのヤツを」


マルチネはほぼ広場が入るくらいの

魔方陣を展開する。

「今、別な魔方陣も展開しているので

 これが限界よ」と。


十分です。流石です。とユキツー。

ユキツーは聞いたことのない言語で

魔法を唱える。


百にも届きそうな数の中級の精霊が

召喚される。


その中に上級であるイフリートが現れる。

「フシャスラ様に声を掛けられたら

 断れねえじゃねえか」と言いながら。


もう辺り一面

サラマンダとグノームで埋め尽くされた。

「これは冷静になる魔法が展開

 されてなかったら大騒ぎだな」とジェニ。


広場に連れ込まれた人間は完全に

変な動きを止めている。


「まて、強い精霊がやってくる」

とフシャスラは突然言う。


空間が揺らぎその中から現れたのは

ドルイダスであった。


「まさか、精霊女王も来るのか」

とユキツー。

ジェニはその声を聴き驚く。


ジェニの母さん、ミネルヴァに

薬を渡した女王だ。

「ドルイダス・・・。」

そうジェニはつぶやくと

精霊女王はジェニを見る。


「あなた、ジェニエーベルね。

 昔の面影があるわ。大きくなったものね」

と微笑む。


ドルイダスはジェニを抱きしめる。

「久しぶりね?覚えてる?」と

言いながら。


「母を、ミネルヴァを助けてくれて

 ありがとうございました」と

涙を溜めてジェニは言う。


「私は助けていないわ。でも

 ミネルヴァは鬼人族を助けてくれた。

 鬼人族に代わって

 今回は手を貸してあげるわ」と笑う。


既に広場には500人以上の人間が

運び込まれている。

そして魔核も1000に達するほど

集められていた。


「なるほど、この魔獣ね。

 昔のから比べれば小さいわね。

 こんなもので人間は

 右往左往しているのね」と

ドルイダスは言う。


「ウォッカがいてくれたら楽

 だったんだけど」という。


「もし神器という事ならあります」

そう言うと神器キリシマを

ドルイダスに見せた。


ドルイダスはその神器を見て

「懐かしい気配。懐かしい魔力。」

ほんのひと時で、ほんの一回話した

だけだけどわかるわ。


あの優しくも強い女性。ミネルヴァなのね。

神器が淡く桃色に輝く。


多分、魔獣を体内から出しているのは

属性ではなくてこの神器の力。

この神器だけの特別のモノ。


「守ると言う単純にそれだけの力。

 ジェニエーベルが守りたいモノを

 守る力」


「俺は人間を守りたいとは思いません。

 ただ、死なせたくないだけです」と

寂しそうに言う。


全員がその言葉を聞き沈黙する。


「今から展開する魔法陣の中央に立って

 その神器をかざすのです。そして

 願いなさい。ミネルヴァに願うのです」


そうドルイダスが言うと魔方陣を描き

ジェニは魔方陣の中央で祈る。


「母さん、頼む。力を貸してくれ。

 ここの魔獣を一掃する」と。


「魔獣よ!体から出てこい!」


そしてジェニは神器キリシマを

天にかざす。

天から光が伸びてきて刀に集約する。

そしてジェニは空間を切る様に

体を回しながら振りぬく。


方々でうめき声が聞こえる。

そして魔獣が湧き出る。

その湧き出た魔獣を動けるものが

全員で潰していく。


一時してうめき声がなくなると

「回復だ!回復魔法で傷の手当てを」

ハジメはそう言うと

広場に居たものが歓声を上げる。


「魔方陣を教えておくわ」と

ジェニに向かいドルイダスは言うが


「おれは魔法は使えませんよ。

 弓とこのキリシマだけです。」と

ジェニが言うと


「大丈夫よ、ミネルヴァがやってくれるわ。

 あなたが思えば勝手にね」と笑う。


いや本当に魔法は使えないんですって。

とあせるジェニ。

ドルイダスはその刀に手を振れる。

刀が幾度か光を放ち光は消える。


大丈夫だって、じゃああの箱に向かって

やってごらんなさい。



ジェニは言われるまま半信半疑で

魔方陣の展開を願う。



















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