第20話 神器の力

「やっと見つけたぜ」とボルドーは

その男の背後から言うと

背中に蹴りを入れる。


「お前、あれだろ?美香にコテンパンに

やられた・・・、名前は確か」


ポッキィー?いや、ピスコだ。

実はさ、俺も遠くから見てたんだよ。

あの戦いを。行ってない事には

なっていたが、観客席にはいたよ。


そりゃそうだろう、うちの国主が

二人しか連れないで国を出るわけないしな。


「で、お前は何でここで

 そんなことしているわけ?」と。

腹を踏みつけながらボルドーは言う。


「ふん。もう遅せえよ。その箱だけと思うなよ。

 もう何千匹も放ってやった。この辺り一帯にな」


ボルドーはピスコの顎を蹴り飛ばし

後頭部にもケリを入れる。


ピスコが失神すると縄で縛り上げた。


「ジェニ!こっちだ!すぐに来てくれ!」

と大きな声で言う。


「演説は続けててください。テージョは

 ハジメ様を守ってて」とジェニは言うと

ボルドーの所へ走っていく。


「こいつ美香さんにやられまくって

 領地を奪われた族長のピスコじゃないですか」

ジェニはそう言うとその男の横の箱を見る。


「ブルダさん!来てください!」


ブルダが走って来るとジェニは

精霊をお願いします。とお願いする。


ボルドーって何系?とジェニは言うと

万能系?とボルドーは返す。


じゃあ魔法結界作れる?とジェニ。

もちのろん?とボルドー。


箱を中心にその周りに10匹ほどの

土と炎の精霊、そしてそれを

囲むように魔法防壁が展開される。


「ほかには?」とジェニは聞くと


どうやらもう、撒かれているみたいだ。

数千匹だ・・・。とボルドー。


取りあえずこいつを飲み屋の方に

持って行ってくる。

あそこの方がいいだろう。なにせ

赤の方だしな。とボルドー。


箱はこのままでいいと思う。

中から出てくることはないだろう。


ブルダさんは監視しててください。

ハジメ様に伝えてきます。


そう言うと走ってハジメの元に

ジェニは行くと、小声で言う。


「魔獣が放たれています。 

 数千匹です。多分、平民、いや

 この辺りの住人を狙ったと思います」


ハジメは演説をいったん止める。

聞いていた民衆は「どうした?」と

いう感じで見ている。


「落ち着いて聞いてくれ。

 今、この首都に魔獣が入り込んでいる」

とハジメは言うと続ける。


平民派議員が変死したのはその魔獣が

原因だ。その魔獣は人間の体に入り

神経を通じて脳、いわゆる考える力を

阻害する。


「魔獣だとっ!?」と騒めき騒ぎ出す民衆。

「落ち着け!」とハジメは強い口調で言う。


マルチネは張っていた広大な魔方陣に

冷静になる魔法を唱える。

「1日くらいは持つわ」とも言った。


「そ、そんなに持つんですか?」と

ジェニは言うと

「以前、向こうの世界で私も掛けられました」

と少し何かを思い出したように笑った。


いいか!まず周りの者達と連携をして

変な動きをしている者が居ないか確認しろ。

いたら、轡をして手を縛り

ここに連れてこい。


そしてなんともない奴はすぐに住んでいる所

に帰り、家族の様子を見ろ!

しかし一人で行動するな!

必ず複数で動け。


魔獣は多分、へそを通じて体内に入る。

魔獣の大きさは親指の先位だ。

簡単につぶせるが数が多い。


そこまでハジメが言うと何か

ゴーレムの様なモノがものすごい速度で

近づいてきてジェニの肩に乗った。


「遅くなりました。現段階の

 分析結果です」とユキツーはジェニの

耳元でささやく。

その話を聞いたジェニは叫ぶ。


「その魔獣を見つけて核を回収してください!

 その核を紫の国で買い取ります!

 1つ銀貨2枚で!」と言った。


ハジメは驚きながらジェニを見る。

「これの方が真剣度が増すでしょ?」と

ジェニは言うと

「数千匹だぞ!いくら金がかかると思うんだ」

とハジメは問いかける。


数千です。万ではありません。

であるならば銀貨2万枚で足ります。

と答える。


金貨換算で2千枚だぞ!と驚きながら

ハジメは言う。

「大丈夫です。元は取れますよ」と

ジェニの肩からユキツーが言う。


ベルジュラックとルナティアの

お墨付きです。それくらいの価値があります。


「金の匂いがするな、俺もかませろ」と

ハジメは言った。

「俺も保証する!だから徹底的に

 探せ!」と民衆に向かい叫んだ。


「大変だ!こいつおかしいぞ!」と

突然声がすると、その横の男は

フラフラと木に登ろうとする。


「押さえろ!そして轡をかませろ!」

とハジメは指示をする。

しかし、生きているのに解剖するわけにも

いかない。


「魔獣に対して強烈な何かがあれば

 驚いて出てくるかもしれないが」

とハジメは言うと


「もしかしたら神器ならば駆除は

 可能かもしれない。」

そう言うとジェニを見る。


「神器は人を傷つけることはできない。

 まぁ殴打にはなるが。

 その神器を元に力を増幅させれば

 体内から出てくるかもしれない」

そうハジメが言うとジェニは問い返す。


「増幅するにはどうすれば?」と。


わからん。とハジメは言う。


「とりあえずやってみましょう」と

ジェニは言うとアイテムボックスから


1本の刀を取り出す。

「神器 キリシマ」


マルチネは魔方陣を描く。

「とりあええず魔力増幅系の魔方陣を

 描くわ。でも私は扇だから初級よ?」


ハジメ様は何系?とジェニ。

俺はこう見えて斧系?と顔に手をやり

「すまぬ」と呟く。


その変な動きをする男を魔方陣の中に入れる。

ジェニはキリシマを鞘から抜く。


淡く桃色に輝く刀の先をその男の

へその辺りに突き刺す。

「出てこい、魔獣」


「おい!」と声をかけるハジメ。

「大丈夫です。どうせ傷はつきません。

 人間相手なので」とジェニ。


そう言うと刀を上から強く押す。

「ウゴガァガ」と轡をした男が叫ぶ。

ヘソとは違う腹の辺りがモゾモゾとし

血がにじみ出る。


その中から魔獣が現れた。

驚きながら見ていたハジメだが

我に戻りその魔獣を潰す。



「死ぬよりもいいんじゃないかな?」

とホッとしながらジェニは言う。























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